「感謝をこめて、ここから」涼夏ロングインタビュー


_1110501のコピー
涼夏(りょうか)――岐阜在住で、東海地方を中心に活躍するマルチタレント。

彼女との出会いは【第3回 知多半島映画祭】だった。MCとしてコンペティションに参加したショートムービー6作品の監督・出演者たちを舞台に迎え、軽快かつ絶妙なトークで撮影の裏話を引き出していた。
印象的だったのは、話術だけではない。メゾソプラノのクリアな声色、そのハスキーでもなければ鼻に掛かる訳でもない綺麗な中音域ボイスに、心を奪われた。
幕間に挨拶させていただくと、その美声に合点が行った。彼女は歌手として、栄ミナミ音楽祭などのステージで唄っているのだという。
「涼しい夏と書いて、涼夏と申します」
スピーカーを通さない彼女の声は、正に“福音”だった。

興味を持った記者は、彼女がメインパーソナリティを務めるラジオ番組を調べてみた。『ららサタデー』という毎週土曜9:00~11:00の生放送で、美濃加茂・可児・御嵩エリアで聴くことが出来るコミュニティFM局【FMらら】(FM 76.8MHz)でオンエアされている。【FMらら】はスマートフォンの公式アプリで全国どこでも聴取できるので、早速ダウンロードして聴いてみることにした。そして、再び驚かされた。
面白いのだ。
相棒のウメちゃん・ジュニアとの掛け合いも楽しく、コミュニティFMならではの地域に根ざした情報も織り交ぜつつ番組は進行し、毎週2時間があっという間に過ぎる。しかも、なんと彼女は時に一人きりで、ゲストを迎えつつ放送をこなしてしまうこともあるのだ。その声の魅力、話術の巧みさだけでなく、話題の引出が多彩で飽きさせない。
また、何より驚嘆したのは、映画や舞台に対する造詣の深さである。『ららサタデー』では9時台にムービー&エンターテイメントのコーナーがあるのだが、全国ネットにも負けないほどの情報量・洞察力で繰り出される作品レビュー、取材レポートが毎週放送されているのだ。

彼女とは取材現場で顔を合わせることも多く、話をする機会も度々訪れる。聞いてみると、映画に詳しいのは当然であった。彼女は、俳優業も務めているのだ。

司会
歌手
ラジオパーソナリティ
映画コメンテーター
俳優

……その多才すぎて掴み切れない魅力に迫るべく、インタビューを敢行した。2016年6月某日のことである。

――涼夏さんって色んな肩書きをお持ちですが、何と紹介したら良いんでしょうか?

_1110492涼夏 これ、先日も「欲張りすぎ!」と言われました(笑)。色々やりたくて……“これもやってる”“あれもやってる”と色々言っとけば、皆どれかで声を掛けてくれないかな、ということですよ。

――プロフィールを拝見すると、軸足は歌手ですかね?

涼夏 そうですねぇ……多分、どれが得意か聞かれれば、歌なんだと思います。でも、どれも情けないかな、中途半端……もしくは、「もうちょっとなんだけどね」っていう感じなんですよ。高校の時はコーラス部だったんですけど、まぁ運動したくなかったからですよね(笑)。ちなみに、中学校の頃はソプラノだったんですけど、高校入って突然「お前はアルト行け」と言われました。

――音域が広いんですね!全国合唱コンクールで、金賞獲ってらっしゃいますもんね

涼夏 いやぁ~……元々、強い高校に入ったんです。もう何年も連続で全国大会優勝!みたいな所に……お菓子に釣られて(笑)。「新人歓迎会があるから、みんな見に来て~♪」って優しいお姉さんが、声を掛けに来る訳ですよ。「お菓子あるよ!」って(笑)。で、全国大会のビデオを見せられて、「あ、メッチャいいじゃん!感動するじゃん!」って思わず入っちゃったら……「あれ、盆暮れ正月以外休みが無い!」みたいな(大笑)。で、翌年、先生が「音楽の時間に校歌を唄わせてみたら上手かったのがおるで、お前ら声掛けて来やあ!」って。

――じゃあ、1年前の涼夏さんはスカウトされたってことですね、強豪校の合唱部に?

涼夏 いやいや、そんな大袈裟なものでは(笑)。

――ブタペスト合唱コンクール2位って、凄いですよ!

涼夏 ああ……何か良く分からなかったですけど、行きましたよ。そんな合唱部に3年間いて、大学時代もOGとしてズルズル付き合いつつ……何だかんだと、地元にいます。

――映画好きになったのは、いつ頃からなんですか?

涼夏 あ、いや……私は、そもそもテレビを観るのが好きだったんです。

_1110496――ブログを読ませてもらったんですが、最初の記事が上川隆也さんでしたもんね

涼夏 大好きなんです!今でも、舞台は絶対観に行きます。【新感線】の舞台を5回観にいったこともある(笑)。今となっては自分でも伝説ですよ……上川さんと堺(雅人)さんが、主役だった(『蛮幽鬼』)。私、堺さんも大好きなんです。後日談ですが、去年その作品に出演されていた千葉(哲也)さんにラジオのゲストで来ていただけて。その話がバレました(笑)。まぁ、そんな感じで……元来テレビっ子だったんですが、芝居を見に行くのもハマってしまって大学時代、学科が生涯教育で結構好きなことをやらせてもらってたこともあり、芝居の論文書いて、卒業しました。そして、就職に失敗し……

――教職に就く気はなかったんですか?

涼夏 端から、なる気がありませんでした。ダメなんですよね……成績付けるのが、苦手なんです。子供たちが、全員良く見えちゃうんですよね。で、そのままフリーターをしつつ、舞台を観ていたら、芝居をやってみたいと思い始めて。事務所に入っていた時期もあるんですけど、やりたいことが出来なかったのでフリーになりまして……舞台をやりたいと思ったんですけど、経験も無いしやっぱり初めからは動けないんですね。で、歌もやろうと『歌スタ!!』(日本テレビ系列)に出てみたり。ただ、選曲を間違えました。『歌スタ!!』に出るのに、陰陽座を唄ったんですよ。

――ヘビーメタルを!?

涼夏 はい(笑)。そうしたら、【メガデス(Megadeth)】ギタリストのマーティ(フリードマン)先生が、「ヘビメタは、バンドで唄わなきゃダメだよね」って……

――尤もな意見ですよね(笑)

涼夏 そうなんです(笑)。まぁ、本選までは行けたけど、通らなかったです。でも、その後ちゃんとやろうと思って、サポートギターを出来る人と一緒にしばらくやっていましたが……

――栄ミナミ音楽祭で一緒にやってた方ですね?

涼夏 そうです。でも、彼が引退しちゃったんです。そんなこんなで、歌を唄いつつ、働きつつしていた時に、映画の現場に出会ったんです。映画館でエキストラ募集していたんですよ。岐阜大学で、『ジェネラル・ルージュの凱旋』(監督:中村義洋/2009年/123分)の撮影があったんですね。私エキストラで行っただけなんですけど、凄い大きく写る役をもらえて。現場でのあの体験で、やっぱり私、芝居が好きだなと思ったんです。その後、しばらく色んな現場に行きまくりました……エキストラさんの中には、現場が好きで現場に行く人と、写りたくて現場に行く人がいます。私は、前者。

――沖田修一監督の現場も、何度か行ってらっしゃいますよね?

涼夏 ……。お前、どんだけ堺さんが好きやねん?って(笑)。

――『南極料理人』(2009年/125分)ですね?

涼夏 『ジェネラル~』の現場に行って、「堺さんって、やっぱり面白い方だな」と思いまして。堺さんの新作でエキストラ募集してたので、行きたいと思ったんですね。それが、『南極料理人』でした。その現場で起きてたことが、『キツツキと雨』(2011年/129分)で思い出さずにはいられない場面があったりするんですね。現場で沖田監督が大好きになってしまった。色々な現場に行っている内に、松岡ひとみさんに出会って舞台挨拶を勉強させて頂いて、今に至ります。松岡さんのように“映画コメンテーター”を名乗るほどではないけれど、映画をもっと紹介していきたい。そう思っていた時にちょうどその頃、【FMらら】の開局があったんです。

――改めて聞くと、濃い道程ですね

_1110494涼夏 “自分は何者か?”って最初の話に戻っちゃうんですけど……欲張ってるのは何故かって言ったら、自分にどれがぴったりなのかわからない。出来ることとやりたいことは違うっていう現状もあるんですよね。出来ることは何か?って聞かれたら、やっぱり歌だと思うんです。劇団四季の書類審査をパスして面接まで行ったレベルですが。

――ミュージカルも、お好きですもんね

涼夏 好きですが、踊れません。だから、いかんのですよ(笑)。運動神経が無いから、動く方は全くダメなんです。芝居は結局、動く勘が要る訳で、自分にはそれがない。芝居やりたいと思ってるんですけど、自分がやったら下手だろうなっていう妙な確信があったりするんです。そんな訳で、やりたいこととやれることは違うってことは、遅まきながらここ数年分かっては来ていて……じゃあ、自分にやれることは何かって言われたら、“喋ること”になっちゃいますね。

――『ららサタデー』のパーソナリティは、どのくらい続けてらっしゃるんですか?

涼夏 かれこれ、3年半くらいやっております。元々は『ワンダフルサタデー』という1時間番組を一人でやっていたんです。半年後、前の時間帯の番組とくっ付いて『ららサタデー』になったんです。映画紹介は『ワンダフルサタデー』の頃からやっています。地元の情報と、間に『Hora de Choro(オーラ・デ・ショーロ)』ってショーロというブラジルの音楽を紹介するコーナーが入って、後は自分の企画だったので。『Hora de Choro』は、今は独立した番組になってます。私まだその頃は取材とかご縁がなかったので単純に好きな映画を紹介してただけなんですが、『ららサタデー』が始まってから取材に行かせていただけるようになったんです。【FMらら】のエリアには映画館が無いんですよ。そんな所で、映画紹介をやっているという……敢えて、そういうところだからやりたくて行ったんですけどね。映画館のない場所で、頑張って映画紹介をやろう!と。映画好きは多い土地なんですよ、【アーラ映画祭】を開催してたんですから。

――涼夏さんは、洋画と邦画、どちらがお好みなんですか?

涼夏 どちらかというと、邦画ですかねぇ……取っつき易いからだと思います。洋画の中でも、西洋よりはアジアが好きなんです。中国語をちょっと齧ったのもあって。

――来月、『ららサタデー』でイベントをやるとか?

涼夏 そうなんです!『ららサタデー』も3年半を迎えまして、初めてのファン感謝イベントをやるんです。単に私が唄いたかったとも言いますが(笑)。「唄います」って言いつつ、いつも唄ってこなかったんですよね。“唄う唄う詐欺”的な(笑)。なので、「ファン感謝デー行ってあげる!」というリスナーの方がいらっしゃるなら、聴いていただきたいなと思いまして。

――いつやるんでしたっけ?

涼夏 7月9日です。FMららの隣にある【’50Since】(可児市広見7-90 ケーブルテレビ可児1F)で、14:00からの予定です。

――どんなイベントなんですか?

涼夏 『ららサタデー』のファン感謝祭なので、一緒にパーソナリティーをしているウメちゃんとジュニアももちろん来ます。『ららサタデー』の延長戦ダラダラトークを(笑)。いつもはウメちゃんかジュニアどちらかと2人で放送なので、3人揃うことはとっても貴重なんですよ。何かお題を決めて、3人で喋ろうと思ってます。あと、ウチは10時台に『発見!可児の魅力』という可児市提供のトークコーナーがありまして、そのゲストの方とイクメンパパという準レギュラーも何人か参加してくださいます。それで、いよいよ後半……出し物です!

――え、“出し物”(笑)!?

_1110504のコピー涼夏 “出し物”です(笑)。2~30分ほど、唄わせていただこうかと。ジュニアがギターを弾く予定なので、「これ練習しといて!」って、緩~く打ち合わせたような気がします(笑)。出演者側が多いので、このままでは“お客様を出演者が囲む”状態になるやも知れません(苦笑)。でも、どれだけ少ない人数しか参加者がいなくとも、歌を聴いていただきたい……。感謝をこめてここから始めてみようと思ってるんです。

涼夏はそう言うと、ブレンド珈琲を飲み干してニッコリと微笑んだ。
俳優、司会業、ラジオパーソナリティ、映画コメンテーター、そして、シンガー……「どれも、もうちょっとっていう感じ」と笑い飛ばす彼女だが、その偏らない振り幅の広さこそ、涼夏の魅力の根源なのだ。
そして、彼女の表現活動の集大成である【『ららサタデー』ファン感謝祭】で、涼夏はどんなパフォーマンスを見せてくれるのか――7月9日(土)【’50Since】のステージを、追ってみたいと思う。

取材 高橋アツシ 小林サク

ブログ『涼夏のまだまだやりたいこといっぱいある。』
http://s.ameblo.jp/ryounatu/
【FMらら】公式サイト
http://fm768.jp/

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