『ブラックホールに願いを!』米澤成美・吉見茉莉奈・渡邉聡監督インタビュー
12月6日より池袋シネマ・ロサにて公開となる本作は、壮大なSFのなかに人間の葛藤が繊細に描かれた新時代の特撮映画。ダブル主演を務めた、人との距離がある伊勢田役の米澤成美と、誰からも憧れられる吉住先生役の吉見茉莉奈、今後の特撮業界を担う渡邉聡監督にお話をうかがった。※米澤さんと吉見さんは劇中の衣装で登場!
――初めて会った時のお互いの印象は?
米澤 衣装買い&読み合わせのときに初めて会ったんですけど「なんか綺麗な人が来たな。おお!綺麗な人だ!」って。そんな感じでしたね(笑)
吉見 米澤さんの出演作は拝見していたので存在はもちろん知ってたんですけど、話してみたら引き出しが多くて、底が見えない面白い方だなと思いました。
――演じた役についての印象と似ている部分は?
米澤 基本的には似ているんですけど、演じた伊勢田は私よりも前向きで明るいですね。私だったらずっと喋れなかったら早々に諦めてしまって、闇の方に行ってしまう(笑)諦めずに芯が強くてうらやましいですね。
吉見 オーディションで最初に演じたときからイメージはできていたので、キャラクターは理解できました。似てるところももちろんあると思うんですけど、ただこれほどにも人に対して平等に接することができる人にはなかなかなれないので、どっちかというと憧れですね。

――吉見さんはSF作品の出演が多い印象ですが。
吉見 選んだわけではないんですけど、 SF作品への出演が立て続いてますね。「SFによく出ていますね」と言われることも多いので、それはありがたいですし、個人的なSF作品最終章だと思っているのが本作で良かったと思っています。これからは他のイメージも広げて行きたいです。
――軍艦島での撮影はいかがでしたか?
米澤 軍艦島は壮大でしたね。
吉見 一生に一度は行ってみたい場所だったので、撮影で行けたのはラッキーでした。もう 二度と行けない可能性があるので、これが最後だと思って写真をいっぱい撮ったのですが、1年後にまた撮影をすることになって(笑)
――その理由は?
渡邉監督 1度目に軍艦島に行ったのが撮影初日だったんですけれども、脚本があまり固まっていない状態でした。その時はタイトルも違って「虹の彼方の物語」でクランクインしたのですが、見返した時にすごく違和感のあるやり取りになってしまったなと思って脚本を書き直し、再度1年後に撮り直すことになりました。おふたりの演技には問題はなかったのですが、結果的には冒頭の2、3 カットとポスター写真だけが1度目のロケのもので、ほかはボツになりました。
――タイトルが生まれた経緯は?
渡邉監督 なぜこの『ブラックホールに願いを!』というタイトルが出たのか、全く覚えてないんです(笑)
吉見 ある日、新しい脚本が送られてきて、表紙に『ブラックホールに願いを!』と書いてあって。何これ?!となりました(笑)
――役作りで意識したことや監督からの指示は?
吉見 最初から参考にしてほしいキャラクターとして『インターステラー』のアン・ハサウェイさんが演じたアメリア博士と言われまして。意識してやってたんですけど、脚本を読んでいくうちに、演じた吉住先生はいろんな人から好かれて憧れられる存在なので、平等に接することができ、万人に好かれる人ってどういう人だろうとすごく考えました。女性的すぎないし男性的すぎない、ちょっと中性的なラインを狙ってフラットに演じました。
米澤 演じた伊勢田は、意外と喜怒哀楽もあって、ちょっと小ずるいところもある人間的な人を意識したのと、監督からは“緊張したら笑う”というアドバイスを受けたので、それは意識しました。
渡邉監督 伊勢田というキャラクターは、脚本を書いた時は全然イメージが湧いてなくて。読み合わせを何回か繰り返していくうちに、コミュニケーションが苦手な人を試行錯誤しながら手探りで作り上げた実感があるので、米澤さんと一緒に探して出来上がったという部分が大きいです。

――演じた役以外で演じてみたい役はありますか?
米澤 鳥居さんの演じた悪魔博士は、目をギョロっとさせた瞬間とかかっこいいですよね。悪魔博士・・・やってみたいです!メイクをガッチリしたら怖く見えますかね(笑)
吉見 やりたいというよりは、濱津さんの演じた星先生は撮影現場でも本当に最高に素敵なキャラクターでした。やっぱり濱津さんはすごいなと思って非常に勉強になりました。
――撮影現場での思い出は?
吉見 サービス精神旺盛な方が揃っていて、斎藤陸さん、ねりお弘晃さん、キャッチャー中澤さんなどが現場を明るくしてくださって、とても雰囲気が良くていい関係性でした。鳥居さんもエンターテイナーのイメージを崩さずに、面白いことを言ってくださってすごく楽しかったです。
渡邉監督 鳥居さんのファンとして幸せでした(笑)
――友達になりたいという強い思いがポイントですが、友達とは。
米澤 基本的には深く少ないタイプと思っていて、子供の頃はあまり人と喋れず 1人 2人いればいいなくらいで。大人になってからはいろんな人と喋れるようになったかなぁと。友達とは、一緒にいてぼーっとできる存在ですね。
吉見 私も友達と呼べる方は本当に長い付き合いで、学生時代からの方がほとんどで。狭く深く付き合いたいタイプなので、簡単に友達って呼ぶのにもちょっと抵抗があるんです。友達の判断基準って人によって全然違うじゃないですか。愛知出身なので地元の友達にはなかなか会えないんですけど、ふと思い出して連絡を取ろうと思うのが友達っていう感覚です。ゆっくり近寄っていきたいタイプですね。

――特撮愛に溢れていますが、今までの集大成を表現したかったのですか?
渡邉監督 集大成という意識はなく、現状でできる範囲の自分の技術と予算と労力と、可能な限り実現できる範囲の人脈でやれることをやったという自覚しかなく、もちろんもうちょっと経済的な条件が違ったら全然やれることも違うし、やりたいこともいくらでもあるので、本当にできることをやったなという自覚があります。
どちらかというと、2012年に庵野秀明さんがはじめた「特撮博物館」だったり、特撮を文化事業として残すというような、特撮が日本から途絶えようとしているみたいな歴史的な文脈の中で、ゴジラやウルトラマンといったキャラクターに依存せずに成立する新しい特撮映画として、「特撮技術自体が面白い映画」という形で、次の世代に継続させていく方法論を自分たちの世代が提示する意味での新しい継承という意識を持って制作しました。特撮ファンの方はそこをものすごく感じ取ってくださっているから、支援してくださっていると感じています。
――地球滅亡の危機が描かれていますが、滅亡の瞬間にしたいことは?
米澤 何したいんでしょうね。滅亡2週間くらい前に分かっていたら落語でも一席(笑)滅亡落語を作りたいですね。そういう感じで何かをやって終わりたいですね。1人芝居でも落語でも、なにかしら創作して伝えて終わりたいですね。滅亡の瞬間はお酒飲んで、ぼーっとして終わりたいです。
吉見 地球が本当に滅亡するかどうかは滅亡した後じゃないと分からないし、生き残るかもしれない。ちゃんと最後の瞬間の反応とか、世の中がどうなるかを見て、もし滅亡しなかった時に、「地球滅亡映画を撮ります」となった時に演じられるように見ておく。最後の最後まで役者でいたいなって思いましたね。
渡邉監督 人類がどうやって滅ぶかを僕は知りたくて。だからすごく興味があるんです。仮にいろんなところでビルがバーンって爆発するのなら、ちょっと動画撮らせてもらいたくて。個人的に数分間をちょっと楽しませていただきたいです。知識として人類がどうやって滅ぶかをすごく知りたいなと。
――渡邉監督とは、どんな方ですか?
吉見 興味のある話になると早口で喋り出す。少年ですね。好きなことに正直で、映画にも好きなものが全部詰まってるっていう感じですね。
米澤 一言だと頑張り屋さんだなと。前段階から250個とかの企画を色々書いていて、そういう陰の部分でも頑張り屋さんですね。

――これから観る方へのメッセージ。
渡邉監督 僕は特撮映画がものすごく大好きなので、何より特撮映画としてちゃんと楽しい映画だというところに注目して観ていただきたいなと思っています。ミニチュアがどうとか、アナログ的なことがどうっていうことではなくて、映画を見ている間に「ありえないようなことが実際に起きている」と感じられるように作ることを目指したので、そこを楽しんでいただければいいなと思っています。
ただ、それだけだと今の社会情勢的に厳しいなと途中で感じたので、大きく軌道修正をしています。テーマとか思想的なところは作品を観て、それぞれが感じていただきたいなとは思っているんですけれども、とにかく見えない壁を乗り越えようっていうポジティブなメッセージを感じ取っていただけたら嬉しいです。
米澤 演じた伊勢田的に言うと、好きな気持ちが少しでもあるなら、諦めずに頑張り続けること。その結果がダメでも変わるから、頑張り続けることが大事なんだよと伝えたいですね。あと私はSF初心者なので、1回目を観終わった時に混乱したんです。でも、2回、3回観るとだんだん面白くなってきました。スルメみたいな映画で、観れば観るほど面白さがわかってくるんじゃないかなと思います。
吉見 SFで大きいスケールの地球滅亡を描いているのはもちろんですが、実は小さな人間関係の話で。片側からだと悪い人に見える人でも、話を聞いてみるとそれぞれの事情や考えがあったりして、優しい人が多い映画であることが私の好きな部分です。人に対してわかり合えないと思っても、話を聞いてみようかなとか、そういうことを思ってもらえたらすごく嬉しいなと思います。
取材・撮影 南野こずえ
『ブラックホールに願いを!』(上映時間:116分)
出演:⽶澤成美、吉⾒茉莉奈、斎藤陸、濱津隆之、キャッチャー中澤、ねりお弘晃、三輪江⼀、⼤沢真⼀郎、星能豊、⻑万部純、岡崎森⾺、浦⼭佳樹、⿃居みゆき、螢 雪次朗
監督・脚本・編集:渡邉聡 特技監督:⻘井泰輔 配給協力:Atemo 製作:STUDIO MOVES
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12月6日(土)より池袋シネマ・ロサほか全国順次公開
公式サイト:https://bh-movie.studio.site