『シケモクとクズと花火と』キャスト・監督インタビュー
年齢も境遇も価値観も違う三人が出会ったことで、それぞれの人生が変わっていく青春を描いた『シケモクとクズと花火と』が、1月31日(土)より公開を迎える。本作に出演した遠藤祐美(杉山末子役)、仲野温(山根朔人役)、森美雨(アコ役)、山岸謙太郎監督にお話をうかがった。
――広島が舞台ですが、広島での思い出や印象を教えてください。
仲野 まめすけ(ロケで使ったお店)じゃないですか?
遠藤 クランクイン直後の2日間でまめすけでのシーンを撮りきる必要があって。緊張もしているなか、まめすけさんがご厚意でご飯を出してくれて。それをみんなで食べてたんですけど、 その一瞬にホッとしました。呉の海もきれいでしたね。
仲野 ホテルの近くで、オフの日に訪れた原爆ドームや平和記念公園は忘れられないですね。
森 私も原爆ドームをはじめて見て印象に残っています。
――撮影期間はどのくらいでしたか?
山岸監督 約8日間ですね。そのうちの2日間がまめすけでの撮影でした。
――演じた末子はサバサバしている反面、煮え切らない自分自身への葛藤を抱えていますが、ご自身と似ている部分はありましたか?
遠藤 私も煮え切らない部分を抱えてきたっていうのもありますが、末子というキャラクターはちょっと癖が強く、本人なりの正義感を持ちつつも、煮え切らない自分を棚にあげているところなどをどう演じたらいいんだろうって最初は思ったんです。でも、基本的には真面目で人から信頼されている部分は私にもあるなと感じたので、徐々に役をつかんでいこうと思いました。
――広島弁にとても迫力があって違和感が無かったのですが。
遠藤 全編を方言でお芝居することが初めてだったのですが、楽しく挑戦させていただきましたね。
――仲野さんは元々YouTuberとして活動し、俳優業に専念するために引退されましたが、どのような思いで俳優の道を選択されたのでしょうか。
仲野 コロナ禍の時にYouTuberとして活動していましたが、僕はやりがいを感じなくて楽しくなかったんです。その前からモデルや役者をやっていて、エキストラとして100現場くらい行ったんですけど、名前で呼んでもらえないし本当に悔しくて。その反骨心で、家でできる仕事としてYouTubeをはじめて、正直とても稼げましたが、やりがいは感じませんでした。役者をやりたいって気持ちがあったので両立も考えましたが、そんなに甘い世界じゃないので覚悟を決めて役者に専念しようと。だから、僕は売れるので。それは本心から思っていることですし、じゃないと選んでないので。だからこそ、もっと勉強しないといけない。どの現場も学ぶことがたくさんあって、正解がないからこそ楽しいです。
――アコはちょっと影のあるキャラクターでその理由も後々判明しますが、役に共感できる部分はありますか?
森 確かに影があるんですけど、急に思いもよらない行動や発言をするところは似ているなと思って演じやすかったです。でも、私自身はアコほどの行動力はないですね。
――仲野さんが演じた朔人はコミュニケーション力が高くてハイスペック男子ですが、ずばりタイプでしょうか?
遠藤 仲野さんの演じた朔人が実はすごく真面目な人ではあるので、タイプというか・・・いいですよね(笑)男性として魅力はあると思います。
仲野 上手く逃げましたね。ふわっと(笑)
森 表面だけだったらナシですね、遊び回ってるじゃないですか。でもちゃんと一緒に過ごすと魅力的すぎるので、どんどん沼っていきそうですね。
山岸監督 ああ、危ない(笑)
――朔人と仲野さんは似ている部分はありましたか?
遠藤 コミュニケーション能力が高いですね。周りを見ていて気を遣える方でした。スタッフさんとも仲良く話している姿を目にしてきたので、役柄と共通していてやっぱり合ってるなと思っていました。
仲野 太字で強調して書いておいてください(笑)
――とても魅力的なキャストが揃っていますが、キャスティングでこだわった点や悩んだことは?
山岸監督 特に末子と朔人に関しては、僕の中でイメージがありましたが、オーディションではそのイメージと二人は正直かけ離れていました。僕が探していたタイプの人ではなかったんです。例えば、末子はもっとだらしなさのある感じだったり、朔人も中性的な感じがより強い男性を実は探していました。オーディションの中にはそういう雰囲気を持った方もいらっしゃって候補には入れていましたが、忘れられないのが二人でした。
二人に当てはめてもう一度脚本を読んでみたら、なんか面白そうだなと。特に朔人に関してはわかりやすいキャラクターなので、そのままだとつまらない役になるのをずっと恐れていました。だったらこれは仲野さんに委ねてみるのも面白いかなと感じて。自分にとって印象に残った人であり、まだ掴みきれていない二人をあえて使った方が、現場で見たことのない方向にきっと跳ねてくれると思って選びました。森さんに関しては、最初から天然の不思議な子に見えたんです。表現が難しいのですが、場違い感が欲しくて。彼女が出てきた瞬間から「この映画おかしいぞ」とお客さんに思わせるインパクトを持っていました。
――作品を観た率直な感想を教えてください。
遠藤 ひとことで言うと、不思議な作品だなあと思って。終わり方がハッピーエンドでもないし、あまりわからない感じで終わるところが私はいいなと思いました。こんなふうになったんだと驚きました。
仲野 観てもらわないとわからない映画ですね。最初はミスリードで進んでいく中で、その先って結構ぶっ飛んでる内容ですけど、嫌じゃないミスリードだったんですよ。本当に不思議な映画だなと思っていて。はちゃめちゃな部分があったり、絶対交わらない三人が交わったり、見終わった後のその先をお客さんに委ねてくれるというか。解釈は人それぞれだと思いますが、見終わっても残る作品ではあるのかなと。すごく人間味が溢れているかもしれないですね。
森 テンポ感が良くてとても見入ってしまうのと、三人のこの先はどうなったんだろうって考えちゃう作品だなって思います。
――東ちづるさんとの思い出やご共演はいかがでしたか?
遠藤 本当にテレビの中の女優さんとして見てきたので、初日にお会いしたときに「あっ、東ちづるさんだ!」ってなったんですけど、そういう余計な緊張を取り払ってくださって。いい女優さんってこんなにお芝居がしやすいんだなってびっくりしました。出来上がった作品を観たときに、東さんが映っている時の安心感がすごいなと思いました。
――本作は偶然のきっかけから自分自身の殻を破る印象ですが、新年ということもありますので、変わりたいことや挑戦したいことを教えてください。
山岸監督 僕も40代後半で、50歳を目前にしておりまして。今更大きく人生を変えようとは思っておらず、むしろ自分自身を見つめ直して焦点を絞っていきたいなと思っています。YouTubeや映画、ドラマなど色々やっていますが、そろそろ残りの人生でこれを撮りたいという思えるものを見出したいですね。本当にやりたいことを形に残すことを真面目に考えて生きていきたいと思います。
森 両立がすごく苦手なんです。芸能、学業、バイトとかを同じ量でこなせないんです。ちょっと熱が偏ってしまうという事があるので。上手くバランスを取っていけるように今年は頑張ろうと思います。
仲野 お金の使い方ですね。バイクや車など、好きなものに対して注ぎ込んでしまうので変えたいですね。仕事面では、やんちゃな役や愛人役など自分のイメージに合った役しか来ないことがコンプレックスでした。でも、求めてもらえるし、役を頂けることはありがたいことだし、そのキャラクターを自分が定着させているのは実力でもあるので、コンプレックスから自信に変わりました。今回は演じたことのない役でしたが、自分のなかでもフィットしたので今後もいろんな役に挑戦したいですし、自分にしかない唯一無二の部分もしっかり伸ばす年にしたいですね。

遠藤 挑戦したいことは、山岸監督がバンジージャンプに挑戦したという話をさっき聞いたのでやってみたいですね(笑)人に思われるイメージを壊していきたいなと思っています。こういう感じですよねって言われると、それを演じなきゃいけないのかなと思ってしまうところがどうしてもあって。せっかく表現のお仕事をしているので、自分のいろんな面をもっと出していった方が生きていても楽しいと思うようになりましたし、その方が人も面白がってくれるので、そんな挑戦をしたいなと思ってます。
――ご自身が演じた役以外で、本作で演じてみたい役はありますか?
遠藤 東さんが演じた女将さん!誰かの背中を押す役をあまりやったことがないので興味があります。
仲野 僕もまめすけの大将を演じたGINさんをやりたいですね。見るだけで伝わる温もりや安心感。僕は見るだけで安心されないタイプなので(笑)役の幅としてあの温もりを作れる役者になりたいですよね。
森 性別は全然違うのですが、朔人!オドオドもしていますが、結構頼りがいがあるところがいいなと思って。こういう役も演じてみたいですね。
――タイトル『シケモクとクズと花火と』の意味は?
山岸監督 元々はタイトルが違ったんですよ。「なんとなく“シケモク”って言葉がいいよね、末子というキャラクターを表していて」って脚本家の弥重さんが言っていて。「じゃあ朔人ってなんだろう。あ、クズか」っていうシンプルな悪口ですけど(笑)花火は象徴的なシーンでもありますし、アコって花火のように二人に火をつけたという意味や、パッとした明るさを持っているけどすぐに暗くなってしまうというか。アコのイメージと物語全体としての雰囲気と、この三人を表している感じでいいですねという話になりました。まだまだ続いていくという意味で最後に「と」もう1個つけて、終わらない感じの言葉にしました。
――役作りで意識したことや、監督から指示がありましたか?
遠藤 私はカッコ良くならないでくださいって言われて。それは意識しました。
山岸監督 遠藤さんは放っておくとカッコ良く映ってしまうんです。しかもタバコをくわえているので、どんどん女刑事のように見えてくるので。主人公なので観ている人達が自分と少し重ねられるように、カッコ良くならないようにという意識をしてもらいました。

仲野 山岸監督が役者の考えをちゃんと理解してくれました。僕もこういう役が初めてだったのですが、わりと委ねてくださった気がします。ワークショップに来たような感覚で役の幅を広げてくれて、考え方も変わりました。役者として成長させていただきましたね。
森 私はそのままでいいよって言ってくださったんです。 初めての映画撮影で、演技の仕方もわからなくなるくらい緊張したんですけど、本当にのびのびとやっていいよって声をかけてくださったんです。
――本作で伝えたいことやどんな思いを込めたのでしょうか。
山岸監督 正解がないんですよね。 観る人によってどう感じ取ってもらえるかが映画だとは思うので。正直、末子も朔人も褒められるような人間ではないんですよね、社会や世間的に。でも、カッコいい人ってカッコいいよねということを僕はこの作品に向けていて。見た目的な良さとは別のカッコ良さがあって、朔人も駄目なやつだけど、カッコいいなって思えるものを感じてもらえたらいいですね。
――これから見る方々へ、最後にメッセージ。
山岸監督 脚本とキャストが素晴らしいと僕は思っています。予算的な部分で長回しを多用していますが、カット割りで説明することは極力避けて、ちゃんとお芝居で表現してることをすくっていただきたい。親切ではないかもしれないですが、逆に自分がどこをどう見るかを決められる作品だと思うので、じっくりお芝居を味わって欲しい作品ですね。
森 非現実的じゃなくて、現実にありそうでないことを描いているので、観たあとに不思議な感覚が残る映画体験をぜひしてもらいたいです。
仲野 みんな生きてるだけで偉くて。僕が役者で売れるという野望があるのは、それは生き甲斐なだけであって。生きてるだけで偉いよって教えてくれる映画だなと思いました。いい意味で頑張らなくていい、気張るなよっていう。楽しく生きろよと背中を押してくれる映画だと僕は感じました。たくさんの人に観ていただいて、受け取り方はみなさん次第でいいと思っています。
遠藤 この映画で三人はひとときの濃い時間を過ごしていますが、それくらいで良かったじゃんという人間関係を映し出しているところが私は好きです。人間関係を決めつけないで、1つ1つの出会いには何かしらの化学反応があるという部分に注目して観ていただきたいですね。
取材・撮影 南野こずえ
『シケモクとクズと花火と』(97分)
出演:遠藤祐美 仲野温 森美雨 塚本恋乃葉 GIN / 東ちづる
監督:山岸謙太郎 脚本:弥重早希子
製作・配給:えびふらいレコーズ ©えびふらいレコーズ
2026年1月31日(土)より池袋シネマ・ロサほか全国順次公開
公式HP:https://shikekuzu-movie.com