不妊治療に揺れる女性心理をリアルに描写『藍反射』レビュー
野本梢監督作『藍反射』の企画・プロデュースを手掛けたのは、気象キャスターである千草ゆり子氏。自身が26歳のときに、難治性不妊症と診断を下された体験が元となっている。

主人公は深山はるか(道田里羽)。仕事と空手インストラクターのボランティアに励んでいる、ごく普通の25歳。恋愛も順調で、遠くない将来の結婚を思い描いていた。あるとき、旧友のアドバイスをきっかけに、婦人科で検査を受けることに。診断結果は、排卵障害。予期せぬ現実に戸惑うはるか。不安な日々を過ごすなか、薬局で万引きの疑いをかけられている女子中学生の牧優佳里(滝澤エリカ)と遭遇する。複雑な問題を抱える優佳里との出会い、さまざまな関係性の変化などを経て、病気を受け入れようとするが……。
表面上は明るさを振りまきながらも、周囲の人たちに打ち明けられず孤独を募らせている女性を道田里羽がナチュラルに演じた。突然、診断された排卵障害に対する戸惑いに揺れ、将来への不安に押し潰されそうになりながらも 前を向こうとする佇まいが胸を打つ。大人びた風貌だが心身は未成熟な中学生役の滝澤エリカも魅力的。家庭や学校で心を閉ざし、悩みを抱える少女を巧みに表していた。
不妊治療という重たいテーマを扱っているが、暗さは感じられない。ストーリーと俳優陣の力量によって、上質なヒューマンドラマに仕上がっている。第38回東京国際映画祭『ウィメンズ・エンパワーメント部門』に選出された評価も高い作品である。
文 シン上田
『藍反射』
監督・脚本・編集 野本梢
企画・プロデュース 千種ゆり子
エグゼクティブプロデューサー 稲村久美子
配給 キノパトス
制作 エイジアムービー
©2025 RANHANSHA
2026年3月6日(金)〜12日(木) ヒューマントラストシネマ渋谷
2026年3月13日(金)~26日(木) キネカ大森