山口馬木也&冨家ノリマサ、侍タイ3兄弟が夢の共演!『心配無用ノ介 天下御免』公開撮影レポート


3月28日のクランクインから約1か月後。5月の京都・太秦映画村では、『侍タイムスリッパー』のスピンオフドラマ『心配無用ノ介 天下御免』の公開撮影がたびたび行われ、多くのファンが撮影現場を見守った。(※クランクイン時のレポートはこちら

さっそく登場したのは、映画『侍タイムスリッパー(略して侍タイ)』の撮影当時、キャスト陣の中で「自分だけ唯一台本をもらえなかった」というエピソードを自虐ネタとして舞台挨拶で披露し、会場を沸かせてきた心配無用ノ介こと、錦京太郎役の田村ツトム。「第48回日本アカデミー賞」最優秀作品賞受賞後の2025年3月20日のMOVIX京都での舞台挨拶中に、サプライズでようやく受け取ったエピソードがあるが、今回は事前に渡されたことをファンの前で報告する、台本必要ノ介。
そして、全6話で構成される本ドラマのうち、1話のみ監督を白石和彌が務め、本来の監督である安田淳一がカメラマンに徹するという、映画ファンにはたまらない夢のコラボレーション。故・若松孝二監督に師事し、『凶悪』『孤狼の血』『碁盤斬り』などで知られる白石監督とは、2024年11月に開催された『十一人の賊軍』×『侍タイムスリッパー』のトークイベントで意気投合。安田監督からのラブコールによって実現した時代劇愛溢れる最強タッグに、詰めかけた観客からも熱い視線が注がれていた。

Rene演じるおうめが働く小料理屋を舞台に、日本でいちばんお団子が似合う俳優・高寺裕司が、今度は“おむすび枠”も狙うかのように登場。米農家でもある安田監督が育てる「安田米」のイメージキャラクター就任の日もそう遠くないだろう。最大のライバルは塩むすびを磐梯山の雪に例える名言を残した、ご同輩の高坂新左衛門。

タブレットを片手に軽快に演出をつける白石監督。その傍らで紙の台本を手に見守る安田監督。歩んできた道も対照的だ。数々の商業作品で経験を積み重ねてきた白石監督と、独学で映画制作の道を切り開いてきた安田監督。しかし、時代劇への情熱という一点で、ふたりは強く共鳴。とりわけ印象的だったのは、白石監督の演出を間近で見つめながら「楽しいわー!」と何度もつぶやく安田監督、いや、安田少年の姿。新しい技術を吸収しようとする眼差しからは、作品づくりへの尽きない探究心が伝わってきた。

室内撮影が続く間、観客たちは屋外モニターに映し出されるリアルタイム映像を見守った。その合間にはキャストたちも気さくにファンの前へ姿を見せる。ミスターお団子こと高寺、支度着姿のおゆう役・沙倉ゆうの、おうめ役のReneらが談笑しながら交流する様子もまた、公開収録ならではの魅力だった。ちなみに、『侍タイ』の舞台挨拶で高寺がたびたび持っていた“作り物のお団子”は、実は某通販サイトで購入した私物。小さな裏話である。

白石監督パートの撮影を終えると、いよいよ冨家ノリマサが登場した。

当初予定されていた衣装姿を見た安田監督が、「画面の中で少し地味に映るかもしれない」と判断。その場で衣装部へ相談し、より華やかなものへ変更。幻の衣装となった。

その場に立つだけで空気を引き締める品格と佇まい。『侍タイ』では大御所俳優・風見恭一郎を演じ、ファンから「風見先生」の愛称で親しまれてきた。落ち着いたダンディな魅力で支持を集める一方、普段見せる屈託のない笑顔やお茶目な一面とのギャップもまた、多くのファンを惹きつける理由のひとつだ。

江戸の街並みに咲く藤の花のように、オープンセットに彩りを添える冨家の存在感。
『おしん』での俳優デビュー以来、長年にわたり数々の作品を支えてきた実力派俳優は、『侍タイ』でも主人公・高坂新左衛門の良きライバルを演じ、強い印象を残した。

撮影の合間には、ファンから飛ぶ「風見先生〜!」の声に笑顔で応えながら、スタッフや共演者と談笑。自身の役について安田監督へ積極的に意見を伝える姿も見られ、現場は終始和やかな空気に包まれていた。

厳かな雰囲気のなか、積み上げてきたキャリアがにじみ出る、鎮座する冨家の画力の強さ。

セッティングまでのわずかな待ち時間には、キャピキャピな井之上チャル、永遠のアイドル沙倉、そしてどこにでも現れるミスターお団子こと高寺らが快く写真撮影に応じ、足を運んでくれたファンをおもてなし。

なにやら怪しい宗教団体の集会シーンでは、ひときわ目立つベテラン俳優・本田博太郎が君臨。
事前募集で集まったエキストラも参加し、安田監督は「できるだけ全員の顔が映るようにしたい」と細かな配置や動きを確認しながら撮影を進める。何度もテイクを重ねながら、「白石映画学校を卒業したから!」と冗談交じりに語る安田監督。その表情には、新たな刺激を得た充実感がにじんでいた。

「今日がその日ではない!」
田村が心配無用ノ介ではない!
この珍しい出で立ちで、どのような役柄とストーリーが展開されていくのか!?

この頃から、田村の表情にどこか変化を感じたのは、のちに登場するあの人の存在が彼の意識に少なからず影響を与えていたのかもしれない。自身による弁当やスタッフTシャツの差し入れなど、支えてくれるスタッフへの気遣いも見え、ひたむきに脇を支えてきた俳優が、物語の中心に立つ責任と重みを実感し始めたかのように。

少なくとも、初登場となった2024年9月15日のなんばパークスシネマ舞台挨拶時に、口上をど忘れして滝汗かいた過去の田村はもういない。

「な、なにがあったん!?」
撮影現場が最も大きな歓声に包まれたのは、追加キャストとして発表されていた山口馬木也と竹中直人が姿を現した瞬間だった。撮影日の情報は事前に公開されておらず、完全なサプライズ登場に観客からは驚きの声が上がった。

『侍タイ』で深い絆を結んだ冨家ノリマサ、山口馬木也、田村ツトム。いわば“侍タイ三兄弟”とも呼ぶべき顔ぶれが揃った。

山口が演じた高坂新左衛門は、本物の侍が現代に現れたかのような圧巻の存在感で多くの観客を魅了した。「第67回ブルーリボン賞 主演男優賞」や「第48回日本アカデミー賞 優秀主演男優賞」など数々の賞を受賞した山口だが、かつて「僕の賞は冨家さんとの合わせ技」と語っており、冨家あっての受賞であることを誰よりも強く感じている。一躍スターダムへと駆け上がっても、あの頃とまったく変わらない謙虚な姿勢でファンのもとへ歩み寄り、気さくに交流する山口。しかし、カメラが回りはじめると一瞬で空気を変え、見る者を引き込む鬼気迫る演技を披露。今回は“斬られ役”として登場している。


また、冨家は山口のことを“ソウルメイト”と話しており、これまでも見せてきた仲睦まじさは今回も健在。あえて田村を仲間外れにするような素振りを見せ、見事に切り返すミニコントのような一幕も、築きあげてきた信頼関係があってこそ。偉大な兄たちの背中を追い、ついに本作で念願の主演の座を射止めた田村の晴れ舞台に華を添え、力強く後押しするかのように駆けつけたふたり。深い感慨を抱き、胸を熱くさせていたのは他でもない田村本人であったに違いない。

“50歳を過ぎてからの初主演”。山口が歩んだ道を、今度は田村がその岐路に立たされた。『侍タイ』が生んだ第二のシンデレラボーイ、田村ツトム。

2024年8月17日の映画公開から約2年。『侍タイ』が産声をあげた太秦の地で、そして彼らを支え続けてきた多くのファンに囲まれる中で、ふたたび3人が顔をそろえる日を誰が想像できただろうか。その光景はキャストやスタッフ、そしてファンにとって忘れられない瞬間となった。


時は変わって。こちらでは永遠のアイドル・沙倉の付人4人衆もとい、斬られ役4人(?)衆のきらく尚賢、田村ツトム、安藤彰則、ムラサトシ。おなじみの面々。

さらに、佐渡山順久、五馬さとし、楠瀬アキ、岸原柊、泉原豊、谷垣宏尚といった『侍タイ』現代パートまでもが集結。実際の撮影スタッフであり、スタッフ役の泉原と岸原もここでは役者として参加。おなじみであり懐かしい顔ぶればかり。

カメラが回った瞬間に“所長”へと変貌する井上肇には圧巻の一言。井上所長が現れる所には、やはりお約束のトラブルあり!?そんなことを想像しながら多くのファンが思ったはずだ。――もうこれは『侍タイムスリッパー』なんじゃないか、と。

スタッフ陣のリアルな技術、俳優たちが魂を削る迫真の演技、それを指示する監督の情熱。……普段は見ることのできない、クローズされた舞台裏を間近で観覧できる機会は、観客にとっても至高の体験。ファンに見守られ、期待を感じることで、俳優たちの芝居にもさらなる熱が宿る。観客と作り手が一体となる“『侍タイ』らしい『心配無用ノ介 天下御免』”の制作現場が生まれていた。

公言どおり『侍タイ』の世界線を崩さないオールスターが続々登場し、古い・難しいといったイメージを一新した新時代の時代劇はどのように仕上がるのか。はたして高寺は何本のお団子を食べるのか。内容も心配御無用な連続時代劇『心配無用ノ介 天下御免』(全6話)は、BS-TBSにて、7月16日(木)より毎週木曜よる11:00~11:30放送。(再放送 毎週土曜日よる5:00~5:30)

預金残高わずか7千円。自身のすべてを賭けて「どうしてもこの映画を作りたい」という衝動でメガホンを握った未来映画社・安田淳一監督。彼が世に送り出した『侍タイムスリッパー』は、多くの人々を巻き込みながら夢のような軌跡を描き、今なお未来へと続いている。

「スポットライトは俳優さんに当たってほしい」。2024年8月17日、『侍タイムスリッパー』初日上映前に安田監督が語ったその一言が私の中に深く刻み込まれ、突き動かされてきた。宣伝担当としても、ひとりの記者としてもその言葉が支えであり、私のすべてである。

取材・撮影 南野こずえ

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