飾らない。ブレない。そして、諦めない――永遠のアイドル・沙倉ゆうのインタビュー


映画『侍タイムスリッパー』でヒロインを務め、7月16日からBS-TBSで放送がスタートする『心配無用ノ介 天下御免』でもメインキャストである沙倉ゆうの。「女優になりたい」思いを胸に、安田淳一監督と歩んできた20年は「継続は力なり」を信じて一歩ずつ進み続けてきた時間だった。ヒット後も変わらない自然体と、笑顔の裏にある強さについてうかがった。

■「女優」以外、考えたことがなかった

――女優を目指したきっかけは?
幼稚園の頃はアイドルになりたくて。人形遊びやおままごとにはまったく興味がなく、とにかくアイドルごっこばかりしていました。小学校高学年くらいになると、アイドルではなく女優になりたいと思うようになったんです。何か明確なきっかけがあったわけではないんですけど、それ以来ずっと「女優になりたい」と。ほかの道は考えたことがなかったですね。

バレエは3歳から高校生まで続けていました。でも、プロのバレリーナになりたいとは思わなかったんです。バレエもお芝居も好きなんですけど、やっている最中はそこまで楽しいわけではなくて(笑)。上手くできて褒められるのが嬉しくて、それがやりがいになっていました。

20代前半の頃、オーディション雑誌を見ていくつか受けたんですけど、全然ダメで。そんな中、浴衣のコンテストで賞をいただいて、主催していた事務所に入ることになりました。その後は週刊誌のグラビアのお仕事も少ししていたんですけど、トゥシューズを履いたバレリーナ風の写真を撮ってもらって、それが事務所のプロフィールに載っていたんです。

安田淳一監督がイベントのオープニングムービー用にOL役の女の子を探していた時に、そのプロフィール写真を見て、「OLじゃなくて、バレリーナを目指す女の子の話にしよう」となったそうなんです。写真だけで決めてくださったんですよ。ただ、私は演技経験がまったくなかったので、撮影で私の芝居を見たスタッフ全員が凍りついていましたね(笑)。

■3分の映像から始まった、安田監督との20年

そのオープニングムービーは3分ほどの短い作品でしたが、そこから話が膨らんで、安田監督が「自分の映画を作りたい」と思うようになって、短編映画『SECRET PLAN』(2007年)を撮ることになりました。「横浜映像天国」でいくつか賞もいただいたんですけど、その後も追加撮影があって、完成までに3年かかりました。さらにその後、『拳銃と目玉焼』(2014年)を撮り終えたあとに、未来映画社へ所属することになりました。ちなみに、安田監督が私の年齢を知ったのはその時でした(笑)。

――まさかのタイミングですね(笑)。そこから『ごはん』につながるんですね。

未来映画社は芸能事務所ではないので、外から仕事を取ってくることができないんですよ。だから「長編映画を3本、一緒に作ろう」という話をしていました。あと、1冊目の写真集も作りましたね。『拳銃と目玉焼』はミニシアターからはじまり、東映系列で5都市ほどで公開されました。『ごはん』(2017年)は最初から東映系列で公開し、その後ミニシアターでも上映されました。さらに自主上映会の依頼が多くて、3年間ずっと日本のどこかで毎月上映されていたんです。

■東映京都への移籍、そして『侍タイムスリッパー』

――未来映画社から東映京都に移籍した理由は?

きっかけは、福本清三さんが亡くなられたことです。お墓参りに行った帰りに東映京都撮影所へご挨拶に寄ったら、関係者の方から「仕事が全部コロナで止まっているでしょ。何でもいいからカメラの前に立っておかないと、前に出る顔じゃなくなるから。うちでよかったらおいで」と声をかけていただいて。

本当は養成所に行かないと入れないんですけど、私は以前、殺陣専門コースに通っていたこともあって、つながりがあり、入ることができました。すでに『侍タイムスリッパー』(2024年)については、いずれ制作されること自体は決まっていました。

――『侍タイムスリッパー』では、キャストでありながら助監督も担っていました。公開後も、劇場との対応や舞台挨拶でのキャストのスケジュール調整までされていましたよね。

そうですね。単純にやる人がいなかったからです(笑)。撮影の時も、俳優さんや事務所への連絡をしていたのは私だったので、その延長で公開後もそのまま私がやっていたという感じです。『心配無用ノ介 天下御免』では、やっと女優だけに専念できるようになりましたね(笑)。

■ヒットしても変わらない

――『侍タイムスリッパー』がヒットして、何か変わったことはありますか?

何も変わってないですよ(笑)。街で声をかけられることも、気づかれることもないですし。周りの反応という意味でも、自分の気持ちという意味でも、まったく変わっていないですね。

私は、お芝居そのものが好きでたまらないタイプではないんです。もちろん好きなんですけど、やっている最中に「楽しい!」と思うことはあまりなくて。バレエの時もそうでした。練習中は楽しくないけど、発表会で少し上手くなった姿を見てもらって、褒めてもらえるのが嬉しかったんです。

それと同じ感覚なんですよね。だから撮影中は、正直めちゃくちゃ苦しいです(笑)。でも、完成した作品を観て、みんなが「面白かった」と言ってくれることや、今回の『心配無用ノ介 天下御免』のように、みなさんが楽しみに待っていてくれることが嬉しい。私はそれが楽しくてやっています。

■嬉しかったのは、受賞よりも“みんなの喜び”

――では、いちばん嬉しかったことは?

拡大公開が決まった時の報告ですね。
2024年9月14日の舞台挨拶に安田監督が来られなかったので、私が報告したんですけど、会場のみなさんが自分のことのように喜んでくれました。SNSでも、「よかったね!」というより、「自分のことみたいに嬉しい」という感じで喜んでくれていて。あれが一番嬉しかったですね。

完成した作品について、私は脚本も読んでいるし出演もしているので、客観的に見て本当に面白いと思ってもらえるのか正直わからなかったんです。「日本アカデミー賞」での受賞ももちろん嬉しかったのですが、私にとっては、作品を応援してくれる人たちが本気で喜んでくれた瞬間のほうがずっと大きかったです。

■欲がないのではなく、自分に正直なだけ

――目指している最終地点はどこですか?

あまり考えたことはないですね。困りました(笑)。
でも、日本アカデミー賞じゃなくてもいいので、映画賞の個人賞は欲しいです。そのためにはお芝居を頑張らないといけないんですけど(笑)。ただ、「こういう役をやりたい」というのはあまりなくて、自分に合う役をやりたいです。無理してかっこいい役をやりたい、という気持ちはないですね。

――欲深くないのに、うまく回っている印象があります。

それは周りの方に恵まれているからですね。周りにいてくれる人たちが「何とかしてやらないと」と引っ張り上げてくれているんだと思います。

――そう思ってもらえる理由は何だと思いますか?

愛嬌ですかね(笑)。
私ってムラがないんですよ。嫌なものは嫌だし、それを無理して、いい顔をしてやることもしない。やりたくないことは、やりたくないって言います。無理して我慢していると、あとでしんどくなるじゃないですか。そういうことがないから、いつでも普通に人と楽しく話せるのかもしれないですね。

■「親戚のおじさん」みたいな安田監督

――安田監督はどんな存在ですか?

いちばんは、「すべてにおいて信頼できる人」です。
親戚のおじさんみたいな感覚なので、できていない時は「できていない」と言うし、できていたら褒めてくれる。私に対して変な気遣いがないんです。普通だったら、「これ以上言っても無理だな」と思ったら言わなくなるじゃないですか。でも私は、何度指摘されても、怒られてもオッケーが出るまで諦めない。だから安田監督も最後まで付き合ってくれるんです。そこは本当に信頼しています。

――お互いに絶対的な信頼があって、ソウルメイトのように見えます。

そうなんですかね(笑)。
安田監督は、お客さんのことを常に考えている人なんです。作品をどうしたらもっと面白くできるか、もっと伝わりやすくできるかを、公開後もずっと考えている。場合によっては追加で撮り直したりもするし、そこまで作品を大事にする人って、なかなかいないので。本当にすごいなと思っています。

ただ、優しすぎて、よく人に騙されたり使われたりしているんですよね(笑)。そこはもう少し気をつけてほしいです。でも、いちばん使っているのは私かもしれませんね(笑)。

――わかります。義理人情に厚い方ですしね。

■強みは「途中でやめないこと」

――ご自身の強みは何だと思いますか?スーパーポジティブですよね。

そうそう(笑)。あとは、途中でやめないこと、諦めないところですね。
特別に何かを必死に努力するタイプではないんですけど、「継続は力なり」って本気で思っているんです。みんなが1歩進むところを、自分は半歩かもしれないし、10分の1かもしれない。でも、続けていれば途中でやめた人を追い越していけるじゃないですか。だから、とにかく続けることがいちばん大事だと思っています。

――うさぎより亀タイプですね。では、弱みは?

自分では思いつかないんですよね。でも、私は人の評価をあまり気にしないんです。SNSでマイナスなことを書かれていても、そこまで気にならない。100人いたら100人に好かれるわけじゃないし、私だって誰でも好きなわけじゃないですから。それは趣味や好みの問題だと思っているんです。エゴサーチもあまりしないですし、いいことを言われたらめちゃくちゃ喜ぶけど、悪い評価は引きずらない。だから女優も続けられるんだと思います。

■ちゃんと叶えた「夢」

――女優をやめたいと思ったことはありますか?

ないですね。たぶん、壁にぶち当たった感覚があまりないからだと思います。その都度、なんとなく導かれるようにここまで来てしまった感じなんです。子どもの頃から、本当にタレントや女優になることしか考えていなかったので、就職活動もしたことがないんです。「就活って何?」って本気で聞いたくらいで(笑)。だから、ちゃんと夢は叶えているんですよね。諦めないしつこさがあるので。

――究極のマイペース、マイウェイですね。

■10年後も、きっと「なるようになる」

――10年後、どうなっていたいですか?

自分でも想像がつかないです。でも、一度は結婚したいかなとは思います(笑)。
というのも、年齢的にお母さん役が増えていくじゃないですか。その設定をちゃんと演じられなかったら、仕事の選択肢が減るんですよね。自分の感覚がずっと20代後半くらいで止まっているんですよ(笑)。結婚もしていないし、子どももいないから、自分の中では大人になりきれていない感覚がある。だから自分革命が起きるのは、結婚みたいな大きな出来事によって変わるのかな、とは思ったりします。

基本的には「なるようになる」で生きているので、先のことを深く考えているわけではないです。

■「安田城の姫」から城主への思い

――身近だからこその、安田監督へのメッセージをお願いします。

「私を捨てるなよ」ですね(笑)。
本当に感謝しています。何でもしてくれるし、仕事がない時は仕事を作ってくれましたし。とにかく誰に対しても優しいし、作品や舞台挨拶など、常にお客さんのことを誰よりも考えている。ひとつひとつを大事にしていて、強いこだわりも持っています。その姿勢は本当に尊敬しています。
だからこそ、これからも元気でいてほしいし、変な人に利用されないでほしいです(笑)。


これまでを振り返っても、沙倉ゆうのはどこか肩の力が抜けているように思う。夢を追う人には珍しいほど気負いがない。しかし、派手さはなくても歩みを止めない強さこそが、彼女をここまで連れてきたのだろう。表面的な愛想ではなく、自分自身が楽しいからいつも笑顔でいられる。トレードマークである彼女の笑顔に救われてきた方は多いはずだ。何を隠そう、私自身もそのひとりである。

取材・撮影 南野こずえ

記事が気に入ったらいいね !
最新情報をお届け!

最新情報をTwitter で