山口馬木也、冨家ノリマサ、沙倉ゆうの『侍タイムスリッパー』インタビュー



幕末の武士が雷に打たれ、現代の時代劇撮影所にタイムスリップしてしまうコメディ映画『侍タイムスリッパー』。登場するキャラクターに愛すべき魅力があるところも本作の特徴となっている。主人公でありタイムスリップをする侍・⾼坂新左衛⾨役の山口馬木也、時代劇の大スター・風見恭一郎役を演じた冨家ノリマサ、劇中で映画を撮っている助監督・山本優子役の沙倉ゆうのにインタビュー。

――演じた役柄をご自身のイメージでご紹介ください。

山口馬木也 ⾼坂新左衛⾨はタイムスリップする侍なんですけど、誰もが武士とはこうあってほしいという姿の会津藩士の武士なのですが、キュートなんです。そして一途な男ですね。

冨家ノリマサ 風見恭一郎という役ですが、高坂新左衛⾨のライバル的な役になります。ひょうひょうとした人物だと思います。でも心に深い傷を負っているんです。

沙倉ゆうの 山本優子という役は劇中で映画を撮っている助監督で、真面目に一生懸命頑張る女の子をイメージしていて。ピリピリした現場を和らげる癒し系ですね。

――山口さんは舞台や時代劇が多い印象ですが。

山口 そうですね、映画の主演は初めてで新境地となりますね。でもこの現場において、主演だからとかそういう気負いするようなことは一切なく、周りに助けられることが多かったです。主演の方って大きな責任が伴って、本当に大変だなって感じる現場を散々見てきたんですけど、そういった意味では今回はプレッシャーもなく、みんなが主役という横並びで作品を作っていたという印象がとても大きいんです。

――男同士の熱い友情と戦いが描かれていますが、ライバル役の冨家さんにとって山口さんの魅力とは?

冨家 過去にすれ違いでの共演はありましたがほぼ初めましてで。最初の数日で僕は山口馬木也という俳優に惚れました。俳優としての資質やこの役を作るにおいても、現場での見方とか役の掘り下げ方が本当に素晴らしくて。僕は演技をする時に、相手が作ってきた形に合わせようと思うのですが、山口さんはそのまま佇んでいるんですよ。そのままを心にとらえればいいだけで、山口さんを見ていれば自然と反応が出てくるので、僕の芝居は助けられました。本当に男として惚れています。

――山口さんから見て、冨家さんの存在とは?

山口 なくてはならない方ですね。冨家さんがいなかったらどうなっていたんだろうという恩人的なところはありますね。ちゃんとした共演ははじめましてですし大先輩ですが、会ってすぐにこの方でよかったなって思いました。一緒にお芝居をしているのか、一緒に遊んでるのかわからないような感覚に途中でなりまして。行き帰りも一緒で、カツラをつけてからも一緒、芝居をしてからも一緒。演技以上のそういう関係性は映像にも生きたんだろうなと。冨家さんの年齢でまだ役者を続けられている方って、たぶん生き様そのものだと思うんです。そんな等身大の冨家さんが大好きで。だからもうイチャついてる感覚なんですよ(笑)

冨家 そうそう。めちゃくちゃ楽しかったんですよ。イチャイチャしてね(笑)

山口 でも、その関係性のタイミングがいつ訪れたかも覚えてないんですよ。最初からという印象で。

冨家 そう、最初からなんですよね。前世で知ってたんじゃないのかなと思うぐらい。この物語には台本には書かれておらず、セリフにも書かれてないけれど、背負ってきたものがお互いにあるんです。それを出すのって本当に難しいのですが、でも山口さんの芝居を見ているとにじみ出てくるから、こっちも勝手ににじみ出てくる。そんな化学反応があったような気がします。

――助監督・山本優子役でありヒロインの沙倉さんは、おふたりに挟まれていますが撮影現場ではどんな存在でしたか。

冨家 (沙倉)ゆうのちゃんは僕と山口さんのマドンナなんです。撮影現場でも送り迎えとかもしてくれたりお弁当を渡しにきてくれたりして、すごく癒されました。劇中では高坂と優子は本当に切っても切れない関係で、タイムスリップして優子という存在にものすごく救われていると思うんです。この人がいるから現代でも生きていられるっていう。映画の中でもまさしくエンジェルなんですよ。エンジェルゆうの!(笑)

沙倉 そのうち背中から羽根が生えてくるよって、おふたりから言われていました(笑)

――米農家でもあり、本作を手掛けた安田監督はどんな印象?

山口 無邪気な大人子供(笑)その感覚のまま映画やモノ作りをされているのかなと感じます。無邪気というか少年ですね。撮影が終わった後も夜中なのに「しんどい、しんどい」と言いながらも、夢中で編集をして僕らに映像を見せてくるんです。それを自分に置き換えてみると、小さい頃に道でまっすぐな棒を見つけただけで喜んでいた感覚に近いんだろうなという気がしています。

冨家 愛すべき超頑固者ですね。でも、こんなに嘘がない人はいないです。監督自身は僕らが頑固だと思っているはずで。撮影現場でも30分ぐらい安田監督と山口さんと3人で話をしたりとかあったんですけど、僕も譲らない、山口さんも譲らない、安田監督も譲らないんですよ。でもやっぱり安田監督の頑固さが最終的には勝つというか。もちろん監督だから当たり前なんですけれど、でも僕らに嫌な思いは絶対させないんですよ。それは人柄だと思うんですけれども、最終的にはしょうがない、監督だもんなー、安田さんだもんなーっていう。本当に愛すべきところがありますね。

沙倉 真っ先に出てくるのはせっかちです。映像のセンスを信用しているのでアドバイスを求めることが多く、映像の中での答えをちゃんと出してくれます。例えば写真を撮る時に、背景に合う服の色を決めてもらったりしています。私は19年前からの長い付き合いで過去の作品にも関わっていますが、映画を撮っても自分が思い描いているものが完璧になるまで、何年かかってでもやり続けるんです。そのようなこだわりの強さもありますが、作って満足してしまうところがありますね(笑)

――撮影現場の雰囲気について。

冨家 撮影現場は殺伐感がなかったんですよ。とにかく一番はみんなでいい映画にしようっていう。少人数でありながらいいものを作ろうっていうチームの熱気がすごかったんですよ。たぶん、最高の映画になることがみんなわかっていたんです。手応えがワンシーンごとにあったし、毎日のように撮ったシーンを安田監督が僕らに送ってくれるんですけど、見るたびに確信に変わっていきました。

――これからご覧になるみなさまにメッセージをお願いします。

山口 本当に肩の力を抜いて観ていただきたいです。さまざまな見方もできて、いろんな人にも当てはまって身近に感じることができると思います。登場人物たちと一緒に時間を共有してもらえたらありがたいなって思います。唯一言えることは、面白い映画です。その一言に尽きます。

取材・撮影 南野こずえ

『侍タイムスリッパー』
©2024未来映画社
池袋シネマ・ロサ、川崎チネチッタにて公開中。9/13より順次、全国拡大公開。

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