山口馬木也、出演は時代劇への「恩返し」『侍タイムスリッパー』記者会見・Q&A
日本外国特派員協会にて『侍タイムスリッパー』の記者会見・Q&Aが行われ、主演の山口馬木也、安田淳一監督が登壇した。(2025年4月15日)
池袋シネマ・ロサ1館ではじまった本作が、数々の映画賞、そして第48回日本アカデミー賞にて最優秀作品賞と最優秀編集賞を受賞。とてつもなく目まぐるしい日々を過ごしてきたが、まずは現在の心境を聞かれ、安田監督は「驚く日々が続いている感じで、毎日夢を見ているようです。とても幸せな気持ちでおります」と話し、山口は「ずっと夢の中にいるような感じがしています。この映画で本当に大勢の方とこうやって繋がることができて、毎日本当に夢のように思ってます」と語った。
Q.農業と映画作りの両立、そしてアイデアはそのお米を植えてる時に湧いてくるとかはあるのでしょうか?
安田監督 農業と両立という話がありましたが、基本的には米を作ってるんですけども、日本のお米は今、厳しい状況で、1袋を作るたびに赤字で。決して両立できないんですよね。映画がヒットしなかったら、農業もやめるというピンチだったんですけども、おかげ様でなんとか映画もヒットして。これから何年か安心してお米を作っていけるなと思っています。
作る時に思うことは、丁寧に作るということです。映画も農家の方も、丁寧に真心を込めて手を抜かずじっくりといいものを作っていくというところは似ているような気がします。
Q.時代劇を映画の主題として選んだ理由は?
安田監督 時代劇を選んだ理由は、インディーズ映画で取り組むにはかなりハードルの高い題材であります。ただ、自分が今まで映画を作ってきた経験から、簡単に作った映画ではお客さんが喜んでくれないという思いがありまして。作る時にハードルが高いものをやりきった方がお客さんの喜びにつながるというところで、あえて時代劇を選択しました。
Q.時代劇に対しての思いについて。演じるにあたってどういう思いを持たれたか?
山口 俳優として何をどうすべきかということが分からなかった時に、時代劇というものに出会って、所作であったり、立ち回りであったりということを覚えれば俳優にちょっとでも近づけるっていうのがありまして。僕の中で時代劇というのはすごく恩人のような存在なんですよ。僕は京都の撮影所でそれを学んだんですけど、この映画はそういう方たちの話で。だから僕の中では恩返しのようなことができればいいなという思いのもと、この映画に参加していました。
Q.本来だったらとてもストイックな侍が、すぐに泣いてしまうというキャラクターですが、山口さんが新左衛門の感情に近いのか、それとも新左衛門を演じることによって、より山口さんも感情的になったのでしょうか?
山口 自分でもよくわからないです。ただ、僕はすごく感動しいです。悲しいことで泣くことはあまりないのですが、感動で泣くことは日常多いような気がします。まあ、新左門に近づいたのか、僕に近づいたのか分からないですけど、なんかやってる時はなんか新左衛門と同化しているような気がしてました。結果、僕が泣き虫なんだと思います。
Q.キャラクターを演じる上で、インスピレーションとなったキャラクターまたは歴史的人物などいましたでしょうか?
山口 いろんな方に聞かれるんですけど、まったくなく。このお侍さんはこういう人だなというのが思い浮かんで。それをそのまま監督に相談したら、「それが僕は思う高坂新左衛門です」という了解を得たので、誰かをモデルにしたとかは全くなく初見でああいう風になりました。方言というものがあって、会津の言葉というのがあるんですけど、それをどういう風にするかっていうのも色々監督でご相談させてもらって、「僕はこういう風な温度がある喋り方でいきたいんですけど」っていうことを監督とも相談の中で決めて。誰かこうモデルにしたとかいうことはなかったです。付け加えていいですか?撮影がはじまってから故・福本清三さんっていう殺陣師の方から色々とヒントをいただきました。
安田監督 付け加えると、この映画は故・福本清三さんへのオマージュがいっぱい込められています。
Q.素晴らしいキャスティングですが、低予算のなかでどのように決めたのでしょうか?
安田監督 映像にした時に存在感を放っている人を選ぶようにしております。メインキャラクターは描く時間がありますが、サブキャラクターの人たちは、一目見たらこの人はこういう人であるという風な方を選ぶようにしてます。関西には、まだ世に出てない素晴らしい俳優さんたちがいっぱいいて。この映画で山口さんはじめ、実力のある俳優さんに光が当たったことをとても嬉しく感じております。
Q.この映画がヒットした秘訣は?
安田監督 まず僕にはお手本がありました。これは「カメラを止めるな!」ですけれども、ものすごいヒットするのを見て、インディーズ映画もここまで大きくなれるんだってことにとても感動しました。その時に自分の過去の作品にはここまでお客さんを楽しませる力が足りなかったんだということを素直に反省して、作品そのものを研究して、作品をどうやってプロモーションしていったかを研究しました。秘訣というと、要はインディーズは撮る時にやっぱり情熱があるのは当たり前のことなんで、論理的思考とそれから戦略を立てて物事を進めていく。僕はそういった方法論で「カメラを止めるな!」ムーブメントの再現性を証明したかったんです。当時「カメラを止めるな!」のヒットは1回切りの奇跡という人が多かったんですけども、僕は1回できたことは再現できるのではないかと思ってこの映画をはじめました。
山口 秘訣はまったくわからなくて。それが正直なところです。僕はわからないのでお客さんによく聞くんです。「なんでこんなに映画館に足を運んでくださるんですか?」と。多くの方は「キャラクターに会いに行きたくなる。その一心なんです」って言ってくださるんです。それがどういうことか、僕にはちょっとわからないんです。監督はヒットの再現ということを狙ったんでしょうけど、僕は映画館にきて、楽しく笑って泣いてみたいなことが起きればいいなと。小さい宝物をポツポツ拾うのが楽しい映画になればいいなと思っていただけなので、僕にはわからないです。
取材・撮影 南野こずえ
『侍タイムスリッパー』
©2024 未来映画社
配給:ギャガ 未来映画社
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