架空の小説を題材にした『架空書影。』キャスト・監督インタビュー
7月26日から池袋シネマ・ロサで公開を迎える『架空書影。』。
架空の小説を題材に、第一話「書架の物語」は未来からきたとうそぶく少女ツムギの出会いと別れを、第二話「埋めてくる」では有名作家のゴーストライター、マリが直面する危機をシニカルに描く二話構成のオリジナルドラマ。インタビュー中もずっと和気あいあいだった、本作に出演した主演の峰平朔良、すみぽん(高倉 菫)、髙橋雄祐、桜望華奈、笹生翔也、長谷川朋史監督にお話をうかがった。
―― 「本がない世界」が第一話のテーマですが「〇〇がない世界は嫌だ!」と思うものは?
すみぽん:「猫」!あのフォルムはSSの素材を織り交ぜて作った癒しの生き物です。あ、SSはスーパースーパーレアという意味です(笑)
峰平:私の老後の夢が、お布団でごろごろしながら猫と暮らすことなので、その時に猫がいてくれないと困るので「猫」です!
桜望:「旅」です。旅行が大好きで、生まれた土地以外のところに行けないというルールがもしあったら嫌ですね。
笹生:「枕」がないと寝れないタチで。オーダーメイドの枕を使っていて、睡眠の質も変わるんですよ。
髙橋:僕は「お風呂」ですね。お風呂が大好きで、湯船に浸かりたいです。
長谷川監督:「思い出」。感動したことって思い出だから、それがなくなるのは嫌かな。
―― 本作について、製作経緯を教えてください。
長谷川監督: 2つのお話は別の制作プロダクトによって出来上がっている作品です。第一話の「書架の物語」は 2年前に撮影をしたのですが、「短編を作りませんか?」というお話をいただき僕がご一緒したことがないキャストで新しい挑戦をしたいなと思って作りました。
第二話の「埋めてくる」については、「書架の物語」に参加してしていただいたプロデューサーの笹生さんが日芸の卒業生なのですが「演劇を勉強していたのにコロナの影響でオンライン授業で大学を卒業して仲間も作れなかった。この先どう展開していいか分からない」という相談を受けたので、「じゃあ映画を作りましょう」と僕から持ち掛けて作りました。両方とも昔から温めていたお話ではあり、いい具合に繋がればいいなというイメージは漠然とありました。
―― 峰平さんは二話とも主演ですが、オファーを受けた際の印象は?
峰平:率直に「峰平さんでお願いしたい」と頂いたので、それがすごく嬉しくて。必要としてもらえることがありがたくてお受けしたのを覚えています。
―― 峰平さんを起用したポイントを教えてください。
長谷川監督:僕が俳優として20年振りくらいに出演した映画がありまして、その時に峰平さんも出演していたんです。共演シーンはなかったんですけど、当時準備していた本作のキャストとしていいんじゃないかなと思ってオファーしました。
―― 二話とも「本」がキーワードの作品ですが「本といえば」で連想することは?
長谷川監督:古本屋です。
桜望:図書館!
すみぽん:想像力!
峰平:入り込むまでに時間がかかる。
笹生:静寂ですかね。本を読んでいる時に周りの音が消えるんです。
髙橋:物語です(笑)
―― 撮影中に驚いたことや印象に残っているエピソードはありますか?
すみぽん:「書架の物語」には本を燃やすシーンがありますが、本を燃やすことってなかなか無いと思うんです。実際に目の当たりにすると本当に本のない世界に行ったような気持ちになりました。
髙橋:「埋めてくる」で共演した笹生くんは、制作周りの仕事もずっとしていたんですよね。さっきまでお弁当の準備をしていたのに、その直後に自分の出番という感じで切り替えがすごいなと。とても驚きました。
―― ご自身が演じたキャラクターと、どんな役作りをしたか教えてください。
峰平:「書架の物語」のツムギは、自分が抵抗できない大きなパワーによって、大切なものを抑えつけられている感覚が大事な役で。物語としてはわかるんですけど、ツムギが理解できなくて。頭の中にツムギを少し住まわせて、ツムギだったらどう考えるんだろう?と意識していました。
撮影前がちょうどコロナ明けで、地域のお祭りや人が集まるイベントが再開する時期だったので、お祭りで人々が活気づいたり、お囃を聞いた時にドッと涙が出たんですよ。その時に「あ、これだ!私も抑圧されていたんだ!」と。抑えつけから解放された世界ってきっとこう見えてるんだろうなと思いました。その経験から抑圧される感覚は丁寧に拾いました。
第二話「埋めてくる」のマリ役はとにかくわからなくて。台本に情報もなく、監督に探りを入れても教えてもらえなくて(笑)台本から読み取れるマリの雰囲気を大事にしつつ、「マリは何を葛藤してるんだろう」と思いながら演じていました。
すみぽん:「書架の物語」で演じた睦月は、パッと見や序盤だと不思議な子という感じだと思います。フラットな感情の持ち主だけど、実は本のことがとても好きで。だからこそ一言一言に“本が好き”という気持ちをちゃんと載せて言うようにしました。
桜望:「書架の物語」で私は先生役をやらせていただいたんです。生徒役のみなさんと違って、声のトーンや喋り方など、年齢的にも差をつけなきゃいけないと思いました。演じた早川は反するものを2つ持っている役だと感じていました。落ち着いた先生の反面、本が好きという目線がちょっと少女っぽいイメージで。もう1つは、悪であり正義でありという部分。早川の中では正義だと思っているので、私もそれを正義として演じてました。
笹生:「埋めてくる」の秀太はある意味で1番優しい人物なんじゃないかと思っていて。本当であればしたくないことなのにしてしまう優しさは出ていると思いますね。役作りは今回はしていなくて。監督と話して物語の先の展開がわからない作品にしたいという話が出てたのでそれを忠実に再現するために準備せずに何もしないことを心がけました。
髙橋:「埋めてくる」で演じた山田という人物は、監督には謎の男って最初に言われまして。謎なんですよね。あえて言うのなら峰平さんが演じるマリに合わせるために、マリがどう演じるのか?どういう風にセリフを吐くのか?と、じっくり観察していました。会話のリズムをずらしたりして、相手がそわそわした方が面白いなと思ってそういう風にしていました。
―― 作品の見どころや注目ポイントをぜひアピールしてください。
峰平:さっきの話を聞いてやっと答え合わせができたんですけど、すみぽんが言っていた「本が好き」が納得できました。すみぽんが演じる、少し含みのある余韻は好きなので観てほしいです。
桜望:私にとってツムギのイメージはちょっと弱々しいというか、怯えている感じだったんです。とある出来事のあとのツムギは、自分自身で強くなっていったのでその変化が見どころですね。
すみぽん:役やシーンではないんですけど、本というアイテムを中心に、こんなにもいろんな人が違う動きかたをするんだなということがすごく見どころだな思っています。
笹生:「埋めてくる」で夜の街を車の後部座席からワンカットで撮っているんシーンがあるんですけど、マリと秀太が見ている景色を映画を観ているお客さんも一緒に乗車しているような、大きなスクリーンではそれを感じられるのが見どころですね。
髙橋:長谷川さんの作品はワクワクするアイテムが多いんです。今回だとダーツや炎など、なんだろうと思わせるアイテムがいい所で出てくるので惹きつけられますね。
―― 最後にこれからご覧になるみなさまにメッセージをお願いいたします。
峰平:この作品は、観てくださった一人ひとりに、それぞれ違う“カルチャー”が伝わるような、そんな断片が散りばめられている映画だと思います。そして、カルチャーというものは、時に人伝いに広がっていくこともありますよね。『架空書影。』を観てくださった皆さんにも、この作品がこれからどんなふうに広がっていくのか、そのワクワクを一緒に感じてもらえたら嬉しいです。
取材・撮影 南野こずえ
【あらすじ】
第一話「書架の物語」:本に興味のない生徒会長の健一郎(井上 遥)は、「本が禁止された未来の世界から来た」というツムギ(峰平朔良)と図書室で出会い惹かれる。彼女の言葉を妄想と聞き捨てていた健一郎だが、生徒会書記の睦月(すみぽん)からツムギが学校の生徒ではないと聞かされ、さらに学校司書の早川(桜望華奈)と共謀して学校の蔵書を盗み出そうとしていることを知り…
第二話「埋めてくる」:人気小説家、鬼山(竹田百花)が死んだ。アトリエに駆けつけた担当編集者の秀太(笹生翔也)はそこに監禁されていたマリ(峰平朔良)を偶然見つけて救出する。作家の死を公にしたくないマリは、遊助(髙橋雄祐)から聞いた「絶対に見つからない場所」に死体を埋めることにしたが…
『架空書影。』
キャスト: 峰平朔良,井上 遥,すみぽん(高倉 菫),髙橋雄祐,笹生翔也,森田雅之,桜望華奈,新門岳大,前塚彩結
監督・脚本:長谷川朋史
配給/ MomentumLabo. 長谷川朋史
©︎ソフィアコレクション・ルーツシネマ・長谷川朋史
2025年7月26日(土)〜8月8日(金) 池袋シネマ・ロサにてレイトショー公開