すっきり晴れやかな気持ちで『結婚の報告』阪本武仁監督インタビュー
5月31日より池袋シネマ・ロサで公開となる『結婚の報告』。親友に結婚の報告をしたいが、肝心の結婚相手は……親友の母!結婚相手の息子でもある彼にどう告げるか、さらにはその場に偶然居合わせた人たちとの意外な関係性がワン・シチュエーションでテンポよく展開する傑作。本作を手掛けた阪本武仁監督にお話をうかがった。
―― 本作の見どころについて。
お客さんに楽しんでいただきたくて制作したので、会話劇のシナリオの面白さと4人の素晴らしい演技が見どころだと思っています。
―― 人気舞台を映画化。
京都の中野劇団さんの30分の戯曲でして。「一緒に何かやりましょう!」ということをずっと話していて今回実現しました。何回も再演をされている30分の人気の戯曲でタイトルも同じなのですが、実はもともとは「ペタジーニ」というタイトルだったんです。元野球選手のペタジーニ選手が友人の母親と結婚しましたが、そこから着想を得てブラッシュアップした戯曲になります。4人の関係性の部分は原作から変えていますね。
―― オーディションに約1000人!こだわりのキャスト。
本気でやる気のある方をオーディションで探したくて半年くらいかけて募集したところ、書類や動画などの審査に約1000人の方々からご応募いただきました。中野劇団の主宰・中野守さんとプロデューサーと僕が満場一致の方にすると約束していました。僕の友人もたくさん応募してくれましたが、誰も入っていないという結果になりましたが(笑)
―― ワンシチュエーションを2日半で撮影。
銀座にある「スリーハンドレッドバー」という老舗のスタンディングバーにご協力をいただきました。2日で本編部分を撮影し、エンディングカットだけ別日に外で撮りましたので2日半くらいです。
―― 30分の短編の予定だった。まさかの劇場公開。
予算が110万円だったので、はじめは30分の短編で作るつもりでした。ですが、もう少し長い尺になれば劇場で上映できるチャンスが生まれるんじゃないかと思って、当初の予定よりもセリフを長めに変えて68分になりました。『第25回TAMA NEW WAVE』で上映していただき、「池袋シネマ・ロサさんで上映するのがいいんじゃないか」という声もいただいたので、ご相談させていただき、上映できることになったという流れです。
―― 前売り券を手売りで500枚!
普段はYoutube動画やDVDの編集などの仕事をしています。映像制作の仕事をしながらインディーズ映画を作っていますね。今回、僕とキャストなどで前売り券を500枚くらい手売りしました。事務所の方が買ってくださったりなどもありますが、居酒屋に行ってその場のノリで買ってくださることが多いですね。ロサさんで毎日のようにチラシ配りをすることや、SNSで情報発信をするなど、出来るかぎりのことはしています。
―― 映画監督を目指したきっかけ。
高校生の頃から自主映画を作りはじめ、たまたま井筒和幸監督の講演会に行ったときに「映画の仕事がしたい」と井筒監督に話したことがきっかけで、その後『パッチギ』(2004年)のボランティアスタッフとして参加しました。
―― 名だたる監督たちの撮影現場経験と複雑な思い。
助監督として様々な方の撮影に参加してきました。堤幸彦監督はアイデアが溢れ出ていましたし、井筒監督は芝居を突き詰める姿勢など勉強になることが多かったです。中島哲也監督の『告白』(2010年)にも助監督で入っていたのですが、ある日『告白』の撮影現場から帰る時に、別の準備があったのでいつも乗る車ではない車に乗ったんです。ですが、そのいつも乗る車が事故を起こしてしまって、運転していた制作スタッフが亡くなったんです。本来なら僕も乗っていたはずですし、お互いに眠くならないよう彼と話しながらいつも帰っていたので、とても複雑な気持ちで。スタッフが亡くなっているのに撮影の中断期間も短く、思うところが色々とありました。それがきっかけで商業映画からは距離を置こうと。ずっと自主映画は作り続けていたので、その路線だけに以降は絞りました。
―― 今後の活動について。
新作のオーディションをずっと募集していまして、シナリオを今作っています。テイストやテンポは『結婚の報告』に似ているので、ぜひご期待ください。あと、7月からフィンランドに行くのですが、アキ・カウリスマキ監督がオーナーを務める映画館キノ・ライカが僕の前作『レンタル×ファミリー』(2023年)を気に入ってくださり上映していただいたのですが、アキ監督と一緒にその映画館を経営している作家のミカ・ラッティさんから「一緒に映画を作らない?」とお誘いをいただき、シナリオを一緒に作ろうというお話になっています。
―― 最後にこれからご覧になる方へのメッセージ。
友達のお母さんと結婚する男性の話なので、そういった多様性も受け入れてほしいというか、アリなんじゃないと思っていただけることを伝えたいですし、普段の生活のなかで、嫌なことや大変なことがいっぱいあると思いますが、68分間は笑って、すっきり晴れやかな気持ちで劇場を後にしていただきたいですね。
取材・撮影 南野こずえ
『結婚の報告』(68分)
高橋里央 岡本智礼 市原朋彦 今村美乃 山田かな 古賀勇希 石井建太郎 井星景 七海遼平 久保健太 たけいまい 神吉春果
原作・脚本:中野守(中野劇団)、監督:阪本武仁
© 映画『結婚の報告』製作委員会
5月31日 (土) より池袋シネマ・ロサにて公開