裏切りの競演!最後に勝つのは誰だ『どうしようもない10人』レビュー
アメリカ・中国・ロシアにより日本が3つに分断された未来。国⺠が政治家を皆殺しにした結果、荒廃した日本ーーその名も“ワイルドタウン”。奇跡の球根「マンズのモト」を手に入れた弥平(福澤重文)は、一⽇一粒で満腹になるマンズを売りさばき莫大な富を築くが、ある日天狗の面を被った男にその金を盗まれてしまう。弥平の元に集う10人の殺し屋の中でドラゴン(伊森大祐)が天狗だと察した弥平は、殺し屋の一人アゲハ(高坂美羽)にドラゴンの抹殺と金を取り戻すよう依頼するのだがーー。

全てが失われた世界でなお繰り広げられる欲望の物語。自称・将軍様(!)、弥平がマンズの取引で得た巨額の金はダブルミリオンダラーにも達すると言われている。大切な金が奪われ、半狂乱となった弥平に命じられたアゲハは苦闘の末にドラゴンを討つのだが、あろうことか勝利したアゲハは連絡を絶ちダブルミリオンダラーを我が物にしてしまう。そこから始まるのはジェットコースターのような息もつかせぬ展開。今度はアゲハに怒り狂った弥平は、裏切り者の悪名高い猿田彦(松山傑)に仕事を任せるが、猿田彦は自分より強い弁慶(塚田隼輔)を騙しアゲハと戦わせる。弁慶はアゲハを倒し、ダブルミリオンダラーを奪い取るが猿田彦は当然の如く弁慶を裏切るのだ…。
そこから殺し屋たちの裏切りのバトルがリレー形式で鮮やかに繋がってゆき、「次は誰が誰を、どうやって裏切るの?」とワクワクが止まらない。それぞれの殺し屋たちのキャラクターが濃く、力ずくで奪う者、セコい騙しをする者、味方のふりしてブスリと刺す者などそれぞれの戦いに個性が炸裂しているのも楽しい。終始一貫、欲望と裏切りにまみれたストーリーが清々しくそれぞれに「どうしようもない」10人だけれど、「どうしようもなくない」瞬間も数多く散りばめられている。ニルヴァーナ(茎田俊幸)とドラゴンの友情、ビッグモーター(池村匡紀)の嫌味キャラにそぐわぬエリザベス(谷村桃佳)への感情、ヤミー(美崎忠司)とリン(織野友貴)の名刀正宗を巡る想い、アゲハの行動の真意など、殺し屋たちの人間としての弱さや善の部分も描かれているのだ。

殺し屋たちの奪い合いの末、ダブルミリオンダラーの行方が分からなくなってしまう。だが弥平にある招待状が届き、向かった場所にはダブルミリオンダラーが置かれており、その前に殺し屋たちが立ちはだかる。10人は皆2丁拳銃を取り出し、最後の戦いの火蓋を切る。
主演の弥平には『王様戦隊キングオージャー』(23)、NHK大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』(25)、『君のクイズ』(26)など数々のテレビドラマや映画で活躍する福澤重文。『踊る大捜査線』映画シリーズや、『ウルヴァリン:SAMURAI』(13)などでチーフ助監督を務め、本作が初監督作となる北川博康がメガホンを取った。
弥平と殺し屋たちの関係や、本当は皆仲が良いんじゃないの?などまだまだ知りたいことがあるけれど、細かいことはぶっ飛ばすぐらいこの世界観とストーリーに引き込まれ、楽しませてくれる作品だ。どうしようもない10人だけど、出来たら皆生きていて欲しい。
文 小林サク
『どうしようもない10人』
監督: 北川博康
キャスト: 福澤重⽂/池村匡紀/谷村桃佳/伊森大祐/高坂美羽/織野友貴/茎田俊幸/美崎忠司/塚田隼輔/松山傑/成瀬優和
配給:アークエンタテインメント/©STUDIO EVALACRES
大阪 シアターセブンにて2026年5月30日(土)より上映