家族の愛が夢を叶えた…系ムービー!『劇場版 米寿の伝言』レビュー
西本匡克、85歳。彼には若かりし頃に抱いた夢があった。それは上京して役者の道に進むこと。しかしやむを得ない事情で断念し、匡克は地元で教師となった。現在の匡克は穏やかな余生を送っているはず…だったが予期せぬ奇跡が起こる。彼がかつて諦めた夢を叶えたいと家族が一念発起、俳優となった二人の孫と共演し85歳にして映画初主演を果たしたのだ!そんな異例の“じいじ”主人公が繰り広げるのは、家族の愛がこれでもか!とつまりまくったコメディだ。
発明家である“じいじ”・米蔵(西本匡克)が米寿の誕生日の直前に亡くなった。孫のキョウヘイ(西本健太朗)と弟のキッペイ(西本銀二郎)が米蔵の遺した品を整理していると発明品の「人格転移装置」が誤作動し米蔵(棺桶の中!)とキッペイの中身が入れ替わってしまう。米蔵が蘇ったことに喜ぶ一同だったが発明品は故障しており、二人を元に戻すことが出来なくなる。このままではキッペイが米蔵として火葬されてしまう…。タイムリミットは翌朝10時、キョウヘイと米蔵はそれまでに発明品を修理しキッペイを救うことが出来るのだろうか?
いつでも会えると思っていた大事な人との突然の別れ。「もっと話したかった、一緒に時間を過ごしたかった」多くの人がそんな気持ちを抱くことだろう。米蔵の急死にキョウヘイも強い後悔を抱いていた。弟のキッペイは米蔵を慕い共に発明に勤しんでいたが、キョウヘイは変わり者の祖父に反発したまま実家を離れ疎遠になっていたのだ。
だが、米蔵とキッペイの入れ替わりによりキョウヘイは祖父と過ごす“奇跡のロスタイム”を手に入れる。米蔵のかつての弟子、南原(市原欣希)の大学の研究室に助けを求め発明品を修理しようと奔走するキョウヘイだが修理はすなわち、米蔵との本当の別れを意味する。祖父と弟の狭間で複雑な気持ちを抱くキョウヘイに米蔵は優しく語りかけるのだった。
亡くなった祖父と孫の人格が入れ替わるという奇想天外な展開だが、テンポが良くストーリーが馴染みやすい。随所に織り込まれたユーモアにクスッとさせられて、最後は家族の絆にホロッとさせられる。脇を固める俳優陣に至るまでキャストが皆楽しそうに演じており、観客も心地よい気分のまま61分の上映時間があっという間に過ぎて行く。
主演の“じいじ”・米蔵役にはもちろん西本匡克。孫のキョウヘイ役を実の孫で俳優の西本健太朗、弟のキッペイ役を同じく孫で俳優の西本銀二郎が演じている。ほか、長谷川かすみ、山田姫奈、中川パラダイス、浜野謙太らバラエティー豊かなキャストが勢揃いした。父親の夢を叶えた西本匡克の実娘・西本浩子がプロデューサーを務め、脚本家・ガクカワサキが長編初監督を務めた。
本当の家族が織り成す家族の物語は普段忘れがちな、大切な人と過ごす時間の大切さ、限り有る時の愛おしさを思い出させてくれる。“じいじ”とその家族に会いに是非劇場に足を運んで欲しい。
文 小林サク
『劇場版 米寿の伝言』
キャスト: 西本匡克/西本健太朗/西本銀二郎/長谷川かすみ/山田姫奈/舟木幸/荒川大三朗/山本紗々萊/仲野温/山﨑翠佳/市川欣希/中島来弥 中川パラダイス/浜野謙太
監督・脚本:ガクカワサキ プロデューサー: 西本浩子
上映時間:61分
(C)米寿の伝言
2025年5月10日(土)より池袋シネマ・ロサほか全国順次公開