安田監督、京都で凱旋上映「戦略がまんまと当たった!」『侍タイムスリッパー』関西・名古屋舞台挨拶レポート


2024年9月14日、『侍タイムスリッパー』舞台挨拶ツアー1日目。夕方に池袋シネマ・ロサで舞台挨拶、そして夜に新宿ピカデリーで大々的に行った全国拡大公開記念舞台挨拶の直後、安田監督が車のハンドルを握り、夜通しで東京から関西方面を目指した舞台挨拶ツアーをレポート!

~京都編~
2日目となる15日の朝。無事に『MOVIX京都』に到着し、関西組キャスト陣とも合流。関東での舞台挨拶では実現できなかった面々が揃い、久々の再会で話に花を咲かせながら、満を持して舞台挨拶が行われるスクリーンへと向かった。登壇者は、山口馬木也、沙倉ゆうの、峰蘭太郎、安藤彰則、田村ツトム、高寺裕司、安田淳一監督。

京都で生まれた映画であり、安田監督の本拠地であることも相まって喜びは大きく、主演の山口は「ここで上映されることをスタッフ・キャスト一同が心待ちにしておりました」と挨拶し、安田監督は「京都生まれの映画なのになぜ東京で上映するのか、なんで京都で上映しないのかと言われますが、東京で話題になって、大きくなって帰ってくるための戦略で。まんまと当たりました!」と胸を張った念願の凱旋上映を早々に沸かせた。

また、長年斬られ役として活躍し、本作の出演が叶わなかった故・福本清三への敬意をエンドロールに残したかった安田監督。しかし謙虚な福本はそのようなことをきっと嫌うため「英語だったら福本さん読まれへんから」との理由で英語にしたというエピソードも披露。

劇中劇で登場する“心配無用ノ介”こと錦京太郎役の田村がお決まりの口上を披露し、場内の盛り上がりは最高潮に。さらには、撮影に関わった方々やご家族・友人など、支えてくれた多くの人たちも来場しており、客席からも掛け声があがるなど作品とキャストへの愛が深い。さすが生まれ故郷。


~大阪編~
人数も増え、3台の車で京都から大阪・なんばへと移動し『なんばパークスシネマ』に到着。京都の舞台挨拶メンバーに加え、住職役の福田善晴が新たに参加。ここでも心配無用ノ介の口上を披露しようとした田村。しかし緊張のあまり途中でセリフをド忘れするというアクシデントが発生。山口が思わず「心配無用ノ助殿!お助けいたしましょうか!」と劇中さながらの助太刀に会場は爆笑。

東京でも頻繁に舞台挨拶に立つことが多い安藤。1か月前の池袋シネマ・ロサでの公開初日を振り返り「舞台挨拶で“この後飲みに行きます!”と呼びかけて。40人くらいのお客さまとキャストで飲みに行ったんです。それがはじまりで、気がついたら120館になっていて」との思い出を感慨深く語った。

わずか10名のスタッフで構成された安田組ゆえに沙倉の母親までもが手伝っていたことや、毎日のように撮影所の方々から愛情深く怒られていたこと、福田が演じたシーンがカットされたなど、当時を振り返るトークが行われ、その後、兵庫・尼崎の「MOVIXあまがさき」でも舞台挨拶を行い、2日目を終えた。


~名古屋編~
3日目となる16日の朝。兵庫から目指すは愛知・名古屋へ。名古屋での舞台挨拶は安田監督と沙倉のみ登壇であるが、本作の大ファンを公言している映画パーソナリティの松岡ひとみがMCとして駆けつけるという嬉しいサプライズ助っ人が登場。

まず到着したのは『センチュリーシネマ』。スクリーンの裏側はゲストたちによるサインで埋め尽くされており、『侍タイムスリッパー』参上の証を残すべく、壁にサインをする沙倉。

全国公開が決まってから毎日館数が増えていき、「驚きしかなかった」と語る沙倉。安田監督は「幕末の侍が現代の撮影所にタイムスリップして斬られ役として生きていくって、おもろいと思ったんです。誰かが撮る前に撮らないとという精神状態で慌てて撮った」と語り、さらには「自分のなかのテーマとして、立ち回りを日本の時代劇で最も真剣でやっている風に見せたかった」とのこだわりも披露。

合間にインタビュー取材を多数受けつつ、最後を締めくくるのは、名古屋駅前にある『ミッドランドスクエアシネマ』。ちょうど1か月前に池袋シネマ・ロサの1館だけでの公開がはじまり、今の状況について「ちょっとポカーンとしている感じで。“ホップ、ステップ、宇宙!”という状況。一人歩きというよりジェット噴射でバーンと飛んで行った」と、安田監督の名言がまた生まれた。

舞台挨拶とお見送りをすべての劇場で行い、分刻みのスケジュールをこなした「チーム侍タイ」。お客さまを楽しませようと舞台挨拶で軽妙なトークを繰り広げる一方、渋滞にハマって何度もヒヤヒヤしながらキャストと関係者を愛車に乗せ、3日間ハンドルを握り続けた安田監督は「インディーズバンドの全国ツアーみたいで、おもろいな!」とつぶやき、稲刈りのため京都へ車を走らせた。
次はあなたの街の映画館に「チーム侍タイ」が来るかもしれない。

~本作が愛される理由~
誰よりも近くで追っている記者として言えること。それは、どの劇場においても共通している監督・キャストを温かく迎えてくれるお客様たちの存在。作品の内容の面白さは大前提ではあるが、たくさんの方々に勇気と感動を与えつつも、お礼を言いたい、応援したいと思える要素を持っていることが、本作が愛されている大きな理由なのではないだろうか。ある意味、自然なギブアンドテイクである。

大衆に愛されつづける映画といえば、名作『男はつらいよ』シリーズを生み出してきた山田洋次監督。彼の後継者的な監督は現在の日本映画界には皆無だが、その存在となる可能性が十分にあり得る。米農家兼映画監督・安田淳一に、映画の古きよき在りかたと未来を担いたくなる。

取材・撮影 南野こずえ

『侍タイムスリッパ―』
©2024 未来映画社
配給:ギャガ 未来映画社
絶賛公開中

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