恋も庭作りもーー調和がすべて!『フラワーショウ!』レビュー


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チェルシー・フラワーショーとは、エリザベス女王が総裁を務める英国王立園芸協会(RHS)が主催し、毎年5月にロンドン・チェルシー地区で開催される世界最古のガーデニング&フラワーショーだ。
毎年15万人以上が訪れ、著名人やロイヤル・ファミリーも来場する、イギリスが誇る世界的イベントなのだ。名だたる園芸家がガーデン・デザインを出展するショーに、一人の無名な女性が挑んだ。
彼女の名はメアリー・レイノルズ。
武器は野草とサンザシの木、そしてガーデン・デザインへの熱い情熱だけ!
これは実在のガーデン・デザイナー、メアリー・レイノルズの体験に基づいた物語。

メアリー(エマ・グリーンウェル)はアイルランドの田舎育ち。
幼い頃から野草を愛するメアリーには、自分のデザインした庭で世界を変えたいという夢があった。
有名なガーデン・デザイナーのシャーロット(クリスティン・マルツァーノ)のスタッフに採用され、意気込むメアリーは、いくつもデザイン画を書き上げるのだが、シャーロットはそれらを自分の作品と偽り、顧客のセレブたちのデザインに使用していた。

フラワーショーに視察に出掛けたシャーロットに同行するも、シャーロットは誰にも紹介してくれず、一人ぼっちになるメアリー。
会場を見ていると「人もデザインも横柄だ」と言う声に驚くと、いつかシャーロットの自宅で出くわした植物学者の青年、クリスティ(トム・ヒューズ)だった。
アフリカの砂漠緑化に取り組むクリスティには、ガーデン・デザインは無意味に思えるらしい。

その後も必死に働くメアリーに非情な宣告がーー。シャーロットにクビを言い渡され、書きためたデザインノートを盗まれてしまう。
落ち込むメアリーに、ある考えが浮かぶーー、チェルシー・フラワーショーに出展して金メダルを獲得しよう!
2000人の応募者の中から見事8枠に合格するが、実績もコネもないメアリーには問題が山積み。
職人や野草の手配、輸送の問題、資金調達……果敢に取り組むメアリーだが、庭の施工にはクリスティの力が必要だった。
しかし、クリスティは砂漠緑化の方が大切だと取り合わずエチオピアへと旅立ってしまう。
メアリーはフラワーショーに出展出来るのか?
そしてクリスティへの密かな恋の行方はーー?

自然と調和したデザインを広め、人々の自然への意識を変えたいと願うメアリーはどんな困難にもひるまず、諦めない。
ショーの願書を入手するため事務局に電話をかけ続け、協力を求めて自然保護団体’フューチャー・フォレスト’まで車を四時間飛ばしたり、果てにはショーの手伝いを説得するため、エチオピアまでクリスティを追いかけていく。
信念を曲げない、エネルギッシュな彼女に周囲は魅了され、手助けせずにいられなくなる。
庭に無関心のつれない青年、クリスティの心すら次第にほだしていくのだ。

また本作ではメアリーが育ったアイルランドの野草の美、フラワーショーの芸術的な美、エチオピアの広大な自然美と、様々な美を楽しむことが出来る。
中でも、フラワーショーにはガーデニングにかける人々の熱い想いが溢れていて、(ライバル出展者の中に、チャールズ皇太子の姿もある!)いかにイギリスにとって大切な祭典であるかが分かるのだ。

エネルギーに満ちたメアリーを演じたのは、話題作『高慢と偏見とゾンビ』にも出演する若手女優、エマ・グリーンウェル。
メアリーが思いを寄せるクールなクリスティには、次世代の英国俳優トム・ヒューズ。
伝説のロックバンド、ザ・クラッシュをモチーフにした「London Town」などの出演作が控えている。
監督は長年弁護士として活躍してきた、異色の経歴をもつヴィヴィアン・デ・コルシィ。メアリー・レイノルズがデザインした庭園で実際にメアリーと出会い、本作の脚本を執筆し始めたという。

夢に向かって全力で突き進むメアリーに、きっとパワーをもらえるはず。
何かを諦めたくないあなたに、観て欲しい!

文:小林サク

『フラワーショウ!』
出演:エマ・グリーンウェル、トム・ヒューズ、クリスティン・マルツァーノ、監督・脚本:ヴィヴィアン・デ・コルシィ
©2014 Crow’s Nest Productions
7月2日ヒューマントラストシネマ有楽町、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国ロードショー

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