バスケも人生も勝負はこれからだ!『アンクル・ドリュー』レビュー
2012年、ネット上で話題を呼んだCM動画がある。ストリートバスケに興じる若者に勝負を挑んだ一人のお爺さん。「爺ちゃん無理すんなよ…」という空気の中、老人は目を見張るスーパープレイを連発し、観客は度肝を抜かれる。
それもそのはず、お爺さんの正体はNBA現役スタープレイヤー、ボストン・セルティックスのカイリー・アービングが扮していたのだ。
アメリカのペプシが製作したこのCMは大反響を呼びYouTubeの再生回数が累計一億回を越えた。
お爺ちゃんが若者を蹴散らし大活躍するという痛快な物語が、なんとそのまま映画になった。
主人公の“アンクル・ドリュー”(ドリューおじさん)を演じるのはペプシのCMと同じく、カイリー・アービング!
マイケル・ジョーダンに憧れてバスケットボールを始めた青年ダックス(リルレル・ハウリー)は、今は選手を諦め、ストリートバスケチームのコーチをしている。大会での優勝を目指す中、エース選手がライバルチームに引き抜かれてしまう。恋人にも見放され、落ち込むダックスが出会ったのは、かつてストリートバスケ界で名を馳せた伝説の選手“アンクル・ドリュー”(カイリー・アービング)だった。
ドリューのかつてのチームメイトを集め、ニューヨーク、ストリートバスケの聖地“ラッカー・パーク”で行われる大会に出場すべく奮闘するダックスとアンクル・ドリュー。二人の夢は果たして叶うのかーー!?
一瞬で空気が変わる。冷笑する若いプレイヤーをドリブルで、スティール、フェイクで出し抜き次々と鮮やかに決まるシュート。観衆は熱狂に包まれ歓声は成り止まない。その中心にいるプレイヤーは70オーバーのお爺ちゃんだ。
老人が若者をやっつけるという爽快な筋書きは、遅れてきたアメリカン・ドリームの体現のようで、観る者をワクワクさせて止まらない。
同時に、これは自らを乗り越える戦いの物語でもある。主人公のダックスは、トラウマを抱えて選手の夢を諦めてしまった。アンクル・ドリューは、チームメイトへの裏切りを後悔しながら年月を過ごしてきた。伝説のチームの復活は、傷ついた二人の人生への再チャレンジでもあるのだ。
アンクル・ドリューを演じるNBAのスタープレイヤー、カイリー・アービングは、お爺ちゃんでも文句無しにカッコいい!自分の道を貫く男、ドリューをクールに熱く演じている。
かつてのチームメイトを演じるのは、シャキール・オニール、レジー・ミラーなどNBA歴代のスター選手たちばかりで、バスケファンには垂涎ものの豪華キャスティングだ。足腰弱る、トイレ問題など“お爺ちゃんネタ”が随所に盛り込まれているのが楽しい。うだつの上がらないいい奴、ダックスをリルレル・ファウリー、ダックスの打算的な恋人にティファニー・ハディッシュと、アメリカコメディ界のスター二人が脇を固めている。
人生は何度だって、何歳からだってチャレンジできるんだ。諦めたら試合終了だぜ!アンクル・ドリューの教えを胸に刻め、若者たち。
文 小林サク
『アンクル・ドリュー』
監督:チャールズ・ストーン三世
出演:カイリー・アービング、シャキール・オニール、レジー・ミラー、 リルレル・ハウリー、ティファニー・ハディッシュ他
配給・宣伝:REGENTS
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11月9日(金) 全国ロードショー.