趣里、私は共感できた『生きてるだけで、愛。』公開記念舞台挨拶
本谷有希子の芥川賞・三島賞候補作を映画化した『生きてるだけで、愛。』の公開記念舞台挨拶が行われ、趣里、菅田将暉、仲里依紗、西田尚美、関根光才監督が登壇した。(2018年11月10日 新宿ピカデリー)
鬱を抱えている寧子(趣里)は過眠症で引きこもった生活をしており、常に不安定で自分をコントロールできないもどかしさを抱えて生きている。一緒に暮らす津奈木(菅田将暉)は、出版社でゴシップ記事を書きながら、寧子に振り回され、どこか無気力な日々を送っている――。他人との繋がりや葛藤を描いた本作は16mmフィルムを使用しており、フィルムならではのざらつきが心情をより深く映し出している。
感情をさらけ出すことで自分を守っている寧子というキャラクターについて、演じた趣里は「表現が激しかったりするんですけれど、本当はみんな心に何かを持っているのではないかなと思うので、私は共感できました。津奈木が受け止めてくれているようで」 と言うと、菅田が「お互いにそんな感じだもんね。知らず知らずのうちに受け止め合ってて、知らず知らずのうちに拒否するみたいな」と付け加え、関係性を説明した。
本作が初めての共演となる趣里について「楽しかったですし、(寧子が)走って揺れる青いスカートが美しかったというシーンでは、本当にきれいだなと思った」と菅田は思い返し、菅田の印象については「本当にこのままでいてくださったので、こちらもそのままでいることができた」と趣里が当時の心境を語った。
津奈木の元カノである安堂を演じた仲は自身の役柄について「台本を読んだ時、驚きました。不思議な感じのマインドを持っている方なので、掴みずらい部分もありましたけど。逆にわかりやすいより楽しいかなと思ってやりました」と述べた。強引でありながら面倒見がいいという独特のキャラクターだが、役作りについて聞かれると「なんだろう……。私はあまり考えてやらないから(笑)そんなもんですよね?」と慌てた様子で苦笑い。すかさず菅田が「そんなもんです。全部が描かれている訳じゃないですからね」とフォローを入れた。
菅田が「マジで気まずかった」と吐露した屋上シーンの話題になり、趣里は「すごい状況でした。元カノと今の彼女(に挟まれる)」と言うと、菅田が「(趣里が)裸だし、寒いし」と続けて、笑いを誘った。
寧子が働くカフェバーの店主の妻・真紀を演じている西田は「寧子も安堂も優しく受け止めるカフェで。真紀さんも主人(田中哲司)も優しいんですよね」と振り返りつつも、「自由奔放な寧子と安堂を見ていて、自分を出せるのはいいなと。演技をしている最中も、アドレナリンの放出がすごくて。うらやましかったです」と絶賛。
本作のタイトルにかけて「〇〇だけで、愛。」だと思うことの発表が行われ、関根監督は「ひととちがうだけで、愛。」と作品への想いを表現し、麺類が好きな西田は「すするだけで、愛。」、仲は「健康だけで、愛。」の理由を「健康ってお金で買えないし、無駄な時間を過ごさないことが愛だなと思って」と家族への思いをコメント。
菅田は「焼売には辛子だけで、愛。」と書き、場内に笑いが起きた。「マネージャーは塩がいいとか、醤油の人とかラー油の人とか。俺は辛子だけなんで!」とキッパリ。趣里と西田が辛子酢醤油派であることを告げると「え?そんなジャンルあるの!」と驚きながらも、「焼売は人それぞれなんですよ」と上手くまとめた。
「おひとり様だけで、愛。」と書いた趣里は「食事やカラオケや旅行など、なんでも一人で行くのが好きで。いろんなことを考えられるし、今隣にいない人のことを考えられる時間が好き」とおひとり様を満喫していることを明かした。
最後の挨拶になり、趣里が「人生は楽しいことだけじゃなくて、自分で変えたくても変えられないことや、どうしようもないこと、辛いことや苦しいことがあると思います。誰かと繋がっているなと感じる時間が少しでもあるから、明日に向かって行けるのかなと私は感じました。受け取りかたは人それぞれなので、自由に楽しんでもらえていたらいいなと思っています」と感慨深く語り、締めくくった。
取材・撮影 南野こずえ
『生きてるだけで、愛。』
©2018『生きてるだけで、愛。』製作委員会
配給クロックワークス
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