統合失調症の姉と家族の20年ドキュメンタリー『どうすればよかったか?』レビュー



本作を最初に鑑賞したのは、『第15回 座・高円寺ドキュメンタリーフェスティバル』開催初日の今年2月8日。統合失調症の症状が現れた姉、対応に翻弄される父母、カメラを向け続ける弟である藤野知明監督。家族4人が抱え込んだ、20年に渡る苦悩の記録といえる内容に興味を持ったからだ。

上映開始早々から、スクリーンから漂う重苦しい空気感。出口のない迷路に放り込まれた気分のままエンディングを迎えた。

2回目の鑑賞は今回の全国公開を前に行われた試写会。音の調整や手直しが行われたようで、観やすくなった感がある。新たな発見(藤野家におけるカメラの存在)と理解度の高まりによって、2月に受けた衝撃はさらに深みを増した。

姉が両親によって自宅に閉じ込められた生活を余儀なくされる場面が心苦しい。カメラで見つめる藤野監督の苦悩も手に取るようによくわかる。だからといって症状が改善している様子はない。姉は攻撃性を増し、家の中は暗い雰囲気に。

観ていて辛い映像が長く続く。高部知子が不良少女を演じて話題だった昭和のテレビドラマ『積み木くずし』と空気感が似ていると、2回目の鑑賞時に思った。このドラマは非行に走った娘と、更生させるために奮闘する両親の物語。治すという共通項があったからだろうか。

意見は異なるかもしれないが、終盤以降に少しだけ救われた。「我が家の25年は統合失調症の対応の失敗例です」と語る藤野監督にとっては『どうすればよかったか?』であるが。

文・シン上田

『どうすればよかったか?』
(C)2024動画工房ぞうしま
配給:東風
2024年12月7日(土) ポレポレ東中野ほか全国順次公開

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