『侍タイ』安田淳一57歳、遅咲き新人監督賞!「新藤兼人賞」授賞式レポート!
日本映画の独立プロによって組織される日本映画製作者協会に所属する現役プロデューサーが、その年度で最も優れた新人監督を選び、完成度や将来性のみならず、「この監督と組んで仕事をしてみたい」、「今後この監督に映画を作らせてみたい」というプロデューサーの観点を含む日本で唯一の新人監督賞である「新藤兼人賞」の第29回授賞式が行われた。(2024年12月5日 如水会館)
今年の日本映画で大きなブームを起こした『侍タイムスリッパー』の安田淳一監督は銀賞を受賞。少し緊張の面持ちだったが、マイクの前に立つと「本日はこのような賞をいただきまして、本当に嬉しく思っています。お立ちになっているみなさん、立ちくらみだけには気をつけてお聞きください」とまずは和ませて挨拶。
「東映京都撮影所のみなさん、それから初めてこの映画をかけてあげると言ってくれたミニシアターのみなさん、大きく取り上げてくださったシネコンのみなさん、(配給の)ギャガのみなさん、そして何よりもお客様。そういった映画に関わるみなさんの心意気と助けによってここまで来れたと思っております」と関係各所への御礼を述べた。
今回は215作品が選考対象となっており、銀賞については選考委員で議論に議論を重ねたそうで、理由について「『カメラを止めるな!』の再来と言われ、新藤兼人賞に話題賞があったら間違いなく安田監督だという意見もあった」ということも明らかになり、最終的には「時代劇への愛情と熱量、エンターテインメントに仕上げた安田監督の力」が高く評価されたことが決め手になったとのこと。
そのような理由について安田監督は「監督が11役以上を兼ねている自主映画丸出しの作品を銀賞に選んでいただいたことに感謝しつつ、結構リスクのある危ない橋を渡られたなと思っております」と笑いを交えて感謝。
さらには「僕は57歳ですけれども、まだまだ前途のある映像作家のみなさんとこの場におられることを本当に幸せに思っております。僕は大人から子供まで、具体的にいうと小学校5年生以上90歳ぐらいまでのみなさんが映画館に行って笑って楽しんで、「さあ、明日も頑張っていこう」と思えるような映画を、費用対効果をきちっと配布しながら作っていきたいと思ってます」と最後まで安田監督らしいスピーチで締めくくった。
29年目を迎える本賞は「新人監督たちを発掘、評価し、今後の日本映画界を背負ってゆく人材を育てたい」というプロデューサー達の思いから1996年に「最優秀新人監督賞」として始まり、2000年より“日本のインディペンデント映画の先駆者”である新藤兼人監督の名を戴いた名称となった。なお、金賞には『ナミビアの砂漠』の山中瑶子監督、プロデューサー賞には関友彦が選ばれた。
取材・撮影 南野こずえ