史上最恐の放送事故!あなたは目撃したいですか?『悪魔と夜ふかし』レビュー
最近、目につく映画のジャンル「ファウンド・フッテージ」という言葉。モキュメンタリーの一種で撮影者とは無関係な者の手に渡り、そのまま公開されることになったという設定。つまりうっかりとんでもないものを見てしまった映像なのだ。これは怖い。見たことを後悔するのではないだろうか。見る前の自分に戻れるだろうか?そんな不安を胸に本作を鑑賞。
舞台は1977年、アメリカ。いつものようにポップなオープニングから始まる深夜のトークショー番組「ナイト・オウルズ」司会者ジャック・デルロイ(デヴィッド・ダストマルチャン)は、軽妙なトークで全米の視聴者から人気を集めていた。しかし、最愛の妻マデリン(ジョージナ・ヘイグ)が肺がんを患い死去して以来、自身のモチベーションと共に視聴率も低迷。そんな中、視聴率調査期間にかかる10月31日ハロウィンの夜、生放送回となる「ナイト・オウルズ」ではオカルトショーを開催される。ゲストには、霊能力者、ベストセラー「悪魔との対話」の筆者でもある超心理学者と本のモデルとなった13歳の女の子3人が登場する。怪しげな怪奇現象とともに視聴率はうなぎのぼり。そのままクライマックスを迎えるつもりだったが、思いもよらぬ惨劇が巻き起こる。
冒頭に当時の世相を表す映像が流れ、見る者はまるでその時代へとタイムスリップしたかのように思えてくる。いや、紛れも無く1977年のアメリカにいて家のソファで見ているような感覚になっていったのだ。深夜のトークショー番組「ナイト・オウルズ」。今回はオカルトショーの回だけあって、ゲストの一人霊能力者が霊聴で他界した者と交流を図ると、会場のお客さんが驚きで湧き出す。そこに超常現象懐疑者が、イカサマだと声高に反論していく様子に「やらせでしょ」と思いながらも画面に釘付けになる。とにかくこの生放送のテレビ番組が面白い。だけど、番組が段々と不穏な空気になっていくのを、このまま見ていいのかという気持ちにさせられていく。そして、とうとう見たこともないような放送事故を目の当たりにする。もし仮に家のテレビで見ていたら、怖かったらテレビを消せばいいこと。だけれども、それが出来ない。この惨劇の続きが見たくなってくるのだ。人の見たいという欲を上手くついていると感じた。
監督は、『モーガン・ブラザーズ』でシッチェス・カタロニア国際映画祭ミッドナイト・エクストリーム賞に輝いた鬼才、コリン&キャメロン・ケアンズ兄弟。主演は、『ザ・スーサイド・スク ワッド“極”悪党、集結』『ブギーマン』のデヴィッド・ダストマルチャンが独特の存在感を見事に演じた。
文 内野ともこ
『悪魔と夜ふかし』PG-12
配給:ギャガ
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10月4日(金)よりTOHOシネマズ日比谷ほかにて公開