イタくてイタくて、愛おしい『スウィート17モンスター』レビュー
あの頃、クラスの隅っこにいたーー。どうにかこうにか大人になりながらも、未だに「隅っこにいた自分」が疼く仲間たち、そして今まさに隅っこにいる若者たちよ!我らの青春とも呼べぬ青春を再現した映画『スウィート17モンスター』が4月22日より公開される。
17歳のネイディーン(ヘイリー・スタインフェルド)は根っからのこじらせ女子。不器用な性格で幼い頃から人付き合いが大の苦手、彼氏はもちろん、いない。イケメンで人気者の兄ダリアン(ブレイク・ジェナー)の存在がネイディーンのコンプレックスをさらに刺激する。数年前に父が他界して以来、母モナ(キーラ・セジウィック)は情緒不安定で兄に頼りきりだ。そんやイケてない人生の唯一の救いは、小さい頃からの大親友クリスタ(ヘイリー・ルー・リチャードソン)だ。クリスタといると毎日が楽しくハッピーで、彼女はネイディーンにとって天使のような存在だ。
しかし、ある日天地をひっくり返す出来事が起きるーー、なんと兄ダリアンとクリスタが恋に落ちてしまった!親友を大切に思うあまり、現実を受け止められないネイディーンはクリスタに絶交宣言してしまう。なぜか馬が合う教師ミスター・ブルーナー(ウディ・ハレルソン)に「ワタシ、もう死ぬ!」と告げても相手にされず、家族、友達、全てが空回りしている気がするーー。孤独と苛立ちが渦巻く中、ネイディーンは初めて現実=大嫌いな自分に立ち向かわざるを得なくなる。
ヒロインを演じるヘイリー・スタインフェルドは『トゥルー・グリット』で14歳にしてアカデミー賞助演女優賞候補になった若き演技派で、歌手としても才能を発揮しているスター女優だ。しかし、そんなヘイリーが本作では完璧に!!こじらせ女子ネイディーンを演じている。こじらせ経験のある人には赤面する場面が目白押しなので覚悟してね。
エキセントリックな柄のジャンパーに身を包み、テンパって余計な発言で周りを凍りつかせ、親友と喧嘩してしたらランチ友達すらいない。クリスタとダリアンのおまけでパーティーに付き合っても、惨めな気分が増すばかり。憧れのイケメンにはもちろん全く相手にされない…。
誰からも愛されず、必要とされない自分ーー。「はあ…。何で私ばっかり不幸なの!?」大人になったあなたは分かるはず。そう、これぞこじらせの真髄。すべて自分でこじらせていて、勝手に空回っているだけなのだ。顔を上げて周りを見渡せば全く違う景色が広がっていることに、だけど「あの頃」はどうしても気付けなかったんだ。「自分だけが不幸だと思っているのかーー?」人気者の兄、自分勝手な母、自分を裏切った親友、理解してくれない周囲の人たちーー見たいものしか見ず、思い込みの中で生きてきたネイディーンに、兄の言葉が突き刺さる。思い込みのフィルターを外した時、ネイディーンの前に広がる世界とはーー?
キュートで痛すぎるヒロイン、ネイディーンを優しく取り巻くキャストには、優しい親友クリスタをヘイリー・ルー・リチャードソン、完璧なイケメン兄、ダリアンをブレイク・ジェナー、情緒不安定な母をキーラ・セジウィック、ネイディーンをそっと見守る教師ブルーナーにウディ・ハレルソンと、どのキャストも実に居心地よくぴったりとはまっている。
カッコ悪くてみっともない、そんな自分を受け入れることはとてもとても、難しいけれど、誰がなんと言おうと自分は自分を愛する!そう決めた時、周りには、たくさんの愛が溢れていることにーーやっと気づくのだ。春の始まりにキュンとイタイ青春物語、ぜひ劇場で赤面悶絶して!
文:小林サク
『スウィート17モンスター』 原題:The Edge Of Seventeen
© MMXVI STX Productions, LLC. All Rights Reserved.
公式サイト:www.sweet17monster.com
提供:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント 配給・宣伝:カルチャヴィル×GEM Partners 協力:ユニバーサル インターナショナル
4/22(土)より、HTC渋谷、新宿シネマカリテほか公開