演劇×映画=無限大!?『第10回下北沢映画祭』松居大悟監督トークショー



今年10回目を迎えた『下北沢映画祭』。「演劇×映画の可能性」と題したプログラムで、新進気鋭のクリエイター・松居大悟監督がトークショーのゲストとして登壇した。(2018年10月28日、下北沢タウンホール)

音楽、ファッション、グルメなど、街全体に様々なカルチャーがあふれる下北沢。そんなクリエイティブな街を活かし、独自の視点で作品が楽しめるイベントとして、『下北沢映画祭』は年々人気を集めている。今年のテーマは「To be continued」。開催から10年という節目だが、「お楽しみはまだまだ続く」という意味が込められている。

今回登壇した松居監督は、劇団ゴジゲンを主宰し、映画『ワンダフルワンダーエンド』『私たちのハァハァ』などの話題作を発表している新進気鋭のクリエイターだ。トークショーでは、聞き手を映画評論家の森直人が務めた。

「演劇×映画の可能性」プログラムでは、『君が君で君だ』(松居監督)、『ファーストキス』(エリザベス宮地監督)の2作品を上映。
『君が君で君だ』は、愛する女性が憧れる人物(尾崎豊、ブラッド・ピット、坂本龍馬)になりきった3人の男たちを描いた松居監督のオリジナル脚本・監督作品。
『ファーストキス』は、『アイスと雨音』に並走して、メイキング撮影を担当したエリザベス宮地監督によるドキュメンタリー。『ファーストキス』の“本編”と言える『アイスと雨音』は、公演を予定していた演劇が突如中止となり、夢が失われた若者たちの“その後”を全編ワンカットで描いた作品だ。

『君が君で君だ』は、2011年に劇団ゴジゲンが上演した「極めてやわらかい道」が原作。演劇を映画化したきっかけについて松居監督は、「ドラマや映画が思いを伝えることが前提、ハッピーエンドになる作品が多いことに疑問に感じていた」という。「誰かを好きになる、誰かを想うだけで価値があるということを映画にしたかった」と語る。

また、演劇と映画の関係性について、松居監督は「演劇を映画化した作品はグッとこないものがあった」と感想を漏らした。演劇と映画の“どちらか”ではなく、“どちらも”同じ温度で魂を込めて制作することを大切にしていると話した。

松居監督は、作品を制作する上で、「時間と空間」をキーワードにしていると話す。演劇も映画も、場面という「空間」を操ることで、自由自在に「時間」を行き来できる。この「時間と空間」を羽ばたくことができるのが演劇であり、映画。それを「どのようにアウトプットとして表現するか」を考えているという。

『君が君で君だ』、今回上映された『ファーストキス』のベースとなる『アイスと雨音』の両作品とも、「面白い映画や演劇がたくさんある中で、自分がやるべきことはなんだろう」と悩んでいたと話し、「総合芸術として、新しいもの、自分にしかできないものをやらねばと」と思ったという。

また松居監督は、自身が手がける作品の観客への想いとして、「見た人が自分事にしてほしい」と話す。作品を見てそれで終わりではなく、「それでも人生は続く。この演劇、映画を見たから、親に電話してみようとか行動を起こすきっかけに繋がってほしい」と、演出家・松居大悟としての気持ちを吐露した。

会場では、松居監督作品『アイスと雨音』のブルーレイ、DVDの発売や、トークショー終了後には、松居監督が観客に快くサインに応じる場面も。来年2月には、下北沢・本多劇場で作・演出を手がける舞台『J-WAVE 開局30周年×ゴジゲン10周年記念公演』が控えるなど、松居監督のこれからの活躍に目が離せない。

取材 吉田遊介

『第10回下北沢映画祭』2018年10月26日~28日

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