石井岳龍監督、綾野剛の殺陣を絶賛!『パンク侍、斬られて候』Q&A
『第31回東京国際映画祭』の「JAPAN NOW」部門にて綾野剛が主演した『パンク侍、斬られて候』が上映され、監督を務めた石井岳龍、同部門のプログラミング・アドバイザーである安藤紘平がQ&Aに登壇した。(2018年10月30日 TOHOシネマズ六本木)
芥川賞作家・町田康が2004年に発表した同名時代小説を宮藤官九郎の脚本、石井監督のメガホンで映画化。“超人的剣客”を自称する浪人の掛十之進(綾野剛)が、自ら招いた大惨事に七転八倒するさまを描く。次々とあらわれるクセもの12人。そして、人間VS人間VS猿の前代未聞のハッタリ合戦が始まる。
石井監督作品と言えば、爆音上映が定番。この日も爆音上映+英語字幕というスペシャルな上映で日本の観客のみならず、海外の観客を沸かせた。大きな拍手で迎えられた石井監督は始めに「まず、この映画をよく作らせたなというのは思いますね。大変感謝しています」と笑顔で語り、「14年かかってるんですよね。2004年に原作が出た当時から映画化したくて原作者とは話がついていたんですけども、当時は制作費の問題…世界観を理解してもらえなかったのもありダメになってしまったんです。今回、数年前から動き出して時代が追いついたのか映画表現的にもVFXの発達もあって実現できました。ただの悪ふざけと思われるかもしれないですけど、スタッフ・キャスト、真剣万件の100%200%でやってます」と実現までの歳月と成果について続けた。
また、時代劇が題材ということで映画における時代劇について石井監督は「原作を読んで感じたのは一種の神話だなと。時代劇というのも日本の映画の伝統芸としては非常に素晴らしいアートであり娯楽だと思うんですけども、時代劇の持ってる神話性のようなものというのはなかなか最近見られないですが、芸としての時代劇、それから大衆芸能としての時代劇、非常に美しい日本ならではのアートとしての時代劇…どれも全部好きで欲張って取り入れてなおかつ、+神話的要素を加えられないか…というのは私の大きな希望でした」と本作に盛り込んだ強いこだわりを明かした。
イベントの後半ではQ&Aを展開。観客からは熱い質問が投げかけられた。
Q.パンク侍の主役に綾野剛さんを起用したポイントや理由がありましたら、教えてください。
石井監督「一つはその綾野くんの持つ身体能力、あるいは演技力の幅ですよね。これは全て出さないとこなせない役だと思うんですよ。全面展開して欲しいというのもありましたし、もちろんキャラクターがね、すごく私には(綾野くんに)あっていると思って。身体能力に関して言えば、“超人的剣客”という設定なので綾野くんの殺陣を何本か映画で観させてもらってスピード、切れ味、それから殺陣の美しさ…そういうの全て兼ね揃えてると思ったのでぜひこの役をと思いました。これで三本目なんですが、一本目二本目とまだ全面的に綾野くんとまだきちっと俳優と監督として出来てないなと言いますか、もっともっとやりたいという気持ちがあって『トドメ刺したい!』というのがあったので、これは何としても綾野くんにやって欲しいという強い希望でオファーしました」
Q.ディスクの発売が未定になっているみたいですけれども、ディスク化の予定はありますか。
石井監督「つい最近ちらっとですね、なんとなく噂は聞いてますが。いろんな企画は動いてまして、まもなくまとめて私のところに来るんだと思います。たくさん声が届けば、可能性はあると思います」
Q.配役についてどのようにキャスティングしたのか教えてください。
石井監督「ほとんどの俳優さんが知り合いで仕事したことがあるからですね。何人か初めて仕事する方はいますけども、ほとんどこちらの思い通りのキャスティングで今回できています。(北川景子さん演じる)ろんさんという女性だけ難しくて女性一人なのでこういう激しい役ですから、これはなかなか簡単には決まらなかったです」
Q.宮藤官九郎さんとはどのように協業を、作業を進めていったのか、あるいは監督に対する指示等あったのか教えてください。
石井監督「宮藤官九郎さんとはかなり昔からの知り合いで彼が私の映画を好きだったこともあって、お互いに絶対好きな題材だと思ったので、非常にスムーズに有意義に話し合いを進めながらやっています。私も彼の力を全面的に信頼してましたし、彼もこの世界観のこと、私の映画のことを非常に理解者であったのでとてもいい仕事ができました」
ラストシーンについての質問もあり、観客からは「石井岳龍ここにありき」という名言も飛び出し、これには石井監督も笑顔を見せていた。イベントは大盛況の中終了。ディスク化を心待ちにして欲しい。
取材 本郷美亜
『第31回東京国際映画祭』
2018年10月25日~11月3日