『神奈川芸術大学映像学科研究室』初日舞台挨拶&インタビュー
“組織の理不尽”を描いた問題作!『神奈川芸術大学映像学科研究室』初日舞台挨拶
『神奈川芸術大学映像学科研究室』の初日舞台挨拶が新宿武蔵野館で行なわれ、主演の飯田芳、笠原千尋、前野朋哉、嶺豪一、細井学、坂下雄一郎監督が登壇した。(2014年1月25日)
架空の芸術大学を舞台に、社会人ならば誰もが思い当たる“組織の理不尽”を描いた本作。東京藝術大学大学院映像研究科第7期修了制作として制作された学生映画だが、「SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2013」で審査員特別賞を受賞するなど、高い評価を得ている。坂下雄一郎監督は、大阪芸術大学で大森一樹監督に、東京藝術大学では黒沢清監督に師事した経験を持つ、新鋭の映画監督。
多くの人で埋まった観客席を前に、坂下監督は「最初は舞台挨拶で登壇している人数よりも、お客さんが少なかったらどうしようと思ったが、ほっとしました」と心境を吐露。教授陣と学生との板挟みで苦悩する奥田を演じた飯田は、「監督が明確な演出の考えを持っている方だったので演じやすかったです」とコメントしたが、物静かで一人でいる坂下監督に「一緒にお弁当食べませんか?と声をかけてやんわり断られました(笑)」と、撮影時のエピソードも披露。
仕事熱心な奥田の同僚を演じた笠原も、「監督とほとんど会話したことがなく、演出もシンプルでした」と、撮影当時を振り返った。同じく奥田との同僚を演じた前野は、大阪芸大時代、坂下監督の1つ上の先輩で、学生時代は前野が監督、坂下監督が助監督を務めたこともある先輩と後輩の関係。坂下監督と脚本の読み合わせをするとき、先輩と後輩という関係もあって「あ、前野さん、いつもの感じで大丈夫です(笑)」とお互いに気まずい雰囲気になったことを明かし、笑いを誘った。
大学院修了制作の作品が注目されていることについて坂下監督は、「有り難いですね。大学院に入ってくる人は皆、最終的に劇場公開したいと思いますが、誰もができるわけではないです。そのなかで、映画祭に出品したら賞を受賞し劇場公開までできたので、上手く行き過ぎているかな、と感じます」と現在の胸の内を語った。
また、「この舞台挨拶の不思議な空気感で不安になられたかもしれませんが(笑)、作品はちゃんとした内容なので楽しんで頂けたらと思います」と、観客に向けてメッセージを投げかけた。今後の活躍が期待される、新進気鋭な監督の長編デビュー作は、一見の価値あり。
『神奈川芸術大学映像学科研究室』 坂下雄一郎監督インタビュー
「諸般の事情により、インペイする事を報告します」。神奈川芸術大学映像学科で働く助手の奥田は、事なかれ主義の教授たちと、問題を起こしてばかりの学生たちとの間で板挟み状態で日々を過ごしている。そんなある晩、奥田は大学の機材を盗み出そうとしている学生たちを発見してしまう。事件が表沙汰になることを恐れた教授陣は、“ウソの報告書”の作成を指示する。しかし、その報告書をきっかけに、事態は思わぬ方向へ―—。
架空の大学を舞台に、社会人ならば誰もが思い当たる“組織の理不尽”を描いた本作。“自主制作映画”の枠を大きく超え、長編映画監督デビューを果たした坂下雄一郎監督に、作品の魅力をうかがった。
——今回の作品をつくるきっかけを教えて下さい。
東京藝術大学大学院の修了制作として作りました。東京藝大では、作家性に基づいた作品を作ることが推奨されていました。でも、ある程度多くの人に受け入れられる人の作品を作った方がよいのでは思いました。黒沢清監督のゼミに所属し、指導を受けていました.
——“組織の理不尽さ”を描いた作品ですが、坂下監督も同じような経験をしたことがモチーフになっていますか?
大阪芸術大学映像学科を卒業して、同じ学科で2年くらい助手をしていました。ほぼこういうことが起きたら、映画のようなことが起こるだろうと、ある程度想像できました。その経験が映画作りにも役立ちました。
——近年、食品偽装問題など、隠蔽事件が話題となっています。最近の社会問題をどう見ていますか?
そういう問題は昔からあるんだろうな、と思います。ちょっとでも働いていると、隠しやすいというか 最近やっているというよりは、昔からやっていて、最近明るみに出てきて問題になっているんだろうと思います。
——今作を含めて、映画作りにおいて、気をつけていることはありますか?
自分のことを突き通すよりは、まわりの人の意見を聞きますね。自分の意見をまず言って、まわりの人の反応が悪ければやめますし、自分のことを突き通してまではやらないですね。他の人がまず面白いと思ってもらわないとダメだと思いますね。スタッフの人数があまり多くないのでずっと話し合いながら2週間くらいで撮りました。
——大学院修了制作として作られたという本作ですが、“学生映画”の枠を超えて注目されていますね。現在の心境はいかがなんでしょうか?
そんな自覚はないですね(笑)。やはり企画が注目されているんじゃないですかね。こういう話自体が珍しがられているんだと思います。
——出演者選びのポイントは?
個人的なつながりが大きかったですね。東京藝大の他の作品に出ていたのを見たり、共通の知り合いがいて、その知り合いに相談したところ、飯田さんを推薦してくれました。前野さんは大阪芸大の先輩で、もともと面識がありました。大学に入ったときから活躍をされていて、いまのタイミングに出てもらわなければと思い、出演を依頼しました。
——監督はもともと映画監督志望だったのですか?
大学でいろいろな経験や機械の実習などもしたのですが、自分がやるとしたら、監督かな、と感じました。
——映画監督の醍醐味はどんなところでしょうか?
映画を見るときって、監督の名前で語りますよね。映画作りでは他のスタッフの意見ももちろん取り入れて、自分の意見が100%反映されるわけではないのですが、最終的には自分の手柄になるので(笑)、そのあたりが醍醐味かもしれないですね。
——この作品をどんな人に特に見てほしいですか?
どこかで働いている20代後半くらいの方には見てほしいですね。この作品の境遇に置かれているような人にも見てもらいたいなと思います。
取材 舞台挨拶:吉田遊介/南野こずえ、インタビュー:吉田遊介
『神奈川芸術大学映像科研究室』
飯田芳 笠原千尋 前野朋哉 宮川不二夫 高須和彦 中村有 嶺豪一 中本章太 細井学
早乙女バッハ 生実慧 島野千尋 矢島康美 田口治 監督・脚本:坂下雄一郎
配給:デジタル SKIP ステーション 協力:コミュニティシネマセンター
©東京芸術大学大学院映像研究科
東京藝術大学大学院映像研究科映画専攻第7期修了作品
SKIPシティDシネマプロジェクト第4弾作品
公式サイト http://kanagei.com/
1月25日(土) 新宿武蔵野館ほか全国順次公開!