廣木監督、生まれ変わりを信じる『月の満ち欠け』Q&Aレポート(第35回東京国際映画祭)
「第35回東京国際映画祭」にて、ガラ・セレクション部門の『月の満ち欠け』の上映後にQ&Aが行われ、廣木隆一監督が登壇した。(2022年10月29日 よみうりホール)
今回がワールドプレミア上映となるため、上映後の拍手を舞台袖で聞いていた廣木監督はホッとしたようすで登場。本映画祭では『母性』『あちらにいる鬼』とメガホンを握った3作品が出品され、まさに“廣木国際映画祭”とも言われている。直木賞作家・佐藤正午の同名ベストセラーを映画化した本作の内容は、交通事故で大切な妻(柴咲コウ)と娘を亡くした主人公(大泉洋)が、娘と同じ名前の存在との不思議な縁により、過去と現在が交錯しながら繋がっていく姿が描かれたファンタジーとなっている。
複雑な構成である原作を映像にした気持ちを「話が入りくんでいるので映画化するのは大変な気はしたが、挑戦したいと。ファンタジーとして成立すればいいなと」との思いを吐露しながらも「僕は生まれ変わりをどこかで信用しているんです。ファンタジーというより割とリアルに考えて作りました」と、現実的な部分にもこだわりをみせた。
主人公を演じた大泉の役作りについて「大泉さんの役は、観客と同じように生まれ変わりをそんなに信じているわけじゃない普通のお父さんなんですね。みなさんの目線をリアルに演じてくれたから映画のベースになった」と本作のネックとなる部分を明かし、起用した子役たちについて「3人ともオーディションで選んだ子たち。台本もなくセリフも覚えてもらわず、撮影現場で指示しただけ。天才ですよね」と憑依的な演技を見せる子役たちも注目ポイントとなっている。
原作から設定を変えた点について「(原作者の)佐藤さんは原作と映画は違うものだと考えてくれたみたいで。映画のための組み立てとして変えていった」と述べた。
「(Snow Manの)目黒蓮くんが出ているから来たって人は?」と客席に向けて投げかけると大勢の手が挙がり「蓮は自分のキャラクターを守るように、人ともあまり口を利かないで役に没頭していて。たたずまいのいい役者さんでした」と絶賛。加えて、大泉との2人だけのシーンについて「すごい緊張もあっていい経験になったと思う。蓮くんのいいところが出ていいた」と当時を振り返った。
さらには劇中での有村架純と目黒蓮の恋模様のエピソードを聞かれると「蓮くんが有村を(カメラで)撮るシーンがあって、それが2人の関係性が近くなっていくのをいい感じに出していて。自然にわかりやすく芝居をしていたのが良かった。素直に役に溶け込んでいた彼は印象的ですね」と話した。また、有村と目黒のパートは1980年代の高田馬場を舞台に描かれているが、当時の風景の再現について「高田馬場のシーンは全CGなんです。歩いている人と車は本物であとの風景はCG」と明かし、違った形での見どころにもなっている。
取材 南野こずえ
『第35回東京国際映画祭』
2022年10月24日~11月2日
『月の満ち欠け』
©2022「月の満ち欠け」製作委員会
2022年12月2日公開