石川浩司、今井次郎さんを見るために紅白歌合戦を抜け出しました『芸術家・今井次郎』初日舞台挨拶



2012年11月、悪性リンパ腫によりこの世を去った今井次郎というユニークなミュージシャン・パフォーマー・造形作家の生涯を、過去の映像や関係者の証言などによって構成されたドキュメンタリー映画『芸術家・今井次郎』。

公開初日の30日に渋谷・ユーロスペースで舞台挨拶が行われ、青野慎悟監督、大久保英樹監督、今井と『でぶでぶ』というユニットを組んでいた元「たま」の石川浩司が登壇した。

石川と今井の初遭遇は、「たまというバンドをやっていた頃」という。
「30年以上前になぜかNHKの紅白歌合戦に出場したことがあったんです。僕らの出番は最初の方だったので、エンディングまで楽屋で待機してくださいと言われていたのですが、退屈じゃないですか。番組が終わるまで4時間ぐらいあるんですから。それで会場のNHKホールから近いところにあるシアターコクーンで、今井次郎さんが出演していた『時々自動』の公演を見に行ったんです。紅白の楽屋を抜け出して」

その後、石川が出演した映画『たまの映画』の撮影がきっかけで交流が生まれた。
「この映画は、たまが解散して7~8年後のメンバーそれぞれが活動している様子を追ったもので、半年ぐらい僕らのライブを撮影してたんです。あるとき高円寺の円盤という店で、次郎さんのバンドとセッションする撮影があって、それから親しくなりました。ユニットやろうぜという話になって、ふたり共、太っていたので『でぶでぶ』という名前にしようと次郎さんが言って。でも、ライブをやったのは5~6回かな。それから次郎さんが入院して、お見舞いに行ったら、次郎さん、痩せてきちゃって、これじゃ『やせでぶ』だよという感じになっちゃって。次郎さんが組んだ最後のユニットだったかも」

大久保監督から「先日、『でぶでぶ』のライブを見たことがあるという石川さんの大ファンの女性から、今井さんの迫力に石川さんが驚いていたと聞いたのですが、そういう感じはあったんですか?」と振られると、「それはありましたね」と即答。

「僕が好きだった『突然ダンボール』というバンドの蔦木栄一さんに次郎さんは似ていて、全身アートみたいなオーラを感じました。キャベツを本気で殴る人を見たのは、次郎さんが初めてでした。しかも、めちゃくちゃに床に散らばったキャベツを僕が捨てようとしたら、『何するんだ、今日の晩飯なんだから!!』と叱られて。床にぐちゃぐちゃになったキャベツ、喰うんだぁと驚きました。ガチなんです、目が笑っていませんでした」

大久保監督から「舞台挨拶は20分がタイムリミット」と告げられていたので、石川は話し終えるとすぐさまギターを手にした。シアトリカルなナンバー『夏のお皿はよく割れる』を披露。ステージ上を動き回るパフォーマンスゆえ、ギターのチューニングが狂ったようだが、「次郎さんファンなら、そんなに音にうるさい人いないから」と次の曲へ。今井と観客、そして世の中の人々に向けて『ラザニア』を歌い上げた。

取材・撮影 シン上田

『芸術家・今井次郎』
©2021「芸術家・今井次郎」製作委員会
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