中国武術アクションの最高傑作が再び『少林寺4Kリマスター版』レビュー
世界中に少林寺ブームを巻き起こした中国武術アクション映画『少林寺』。1982年1月、香港を皮切りに公開されるとアジア各国で大きな話題に。日本でも同年11月3日に公開。主演のリー・リンチェイ(後のジェット・リー)が繰り出す武術アクションは、ブルース・リーやジャッキー・チェンとも違う魅力を放ち、たちまち注目の映画スターとなった。それから40年後の今年2022年4月、『少林寺』が4Kリマスターで復活する。
物語の舞台は、激しい動乱が続く中国隋朝末期。圧政を強いるワン将軍(ユイ・チェンホイ)に父を殺された青年ショウホ(リー・リンチェイ)は重傷を負い、少林寺の門前で倒れたところを助けられる。心優しいタン師父(ユエ・ハイ)や師父の娘パイ(ティン・ラン)らの介抱で元気を取り戻したショウホは、父の敵討ちを誓って少林寺に仏門入り。厳しい修行の末、立派な少林拳士に成長し、ワン将軍の軍勢に決戦を挑むことに。
本作の大きな見どころは、本作が映画デビューとなるリー・リンチェイに尽きる。撮影時はまだ10代(16~19歳)。エネルギッシュな若さに満ち溢れた演技を披露した。幼さが残る顔だちとは異なり、さまざまな武術をベースにした激しいアクションシーンは圧巻。全国武術総合大会で5回優勝した輝かしい経歴に加え、バレエダンサーのようなしなやかさと美しさも備わっている。少林寺特訓とワン将軍との格闘シーンは、呼吸を忘れるほどの凄まじさ。途切れることなく動き続ける体力と、武術を芸術にまで高めた技術力と表現力は完璧といえよう。他の出演者たちも中国武術のチャンピオンや強者ばかり。師父の娘役のティン・ランも女性ながら、キレのあるアクションを見せている。
中国河南省鄭州市の嵩山に実在している少林寺は、武術だけの修行の場ではない。インドから中国に渡来した達磨によって、禅が伝えられた地でもある。見落とされがちだが、仏教の思想も本作の隠れたテーマ。単なるアクション映画を越えた、深みある作品に仕上がっていaるのは背景に仏教が横たわっているからだ。肉体だけではなく、内なる己とも戦っていたリー・リンチェイにも注目してほしい。
文 シン上田
『少林寺4Kリマスター版』
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2022年4月15日(金)より新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国ロードショー