広瀬すず、松坂桃李は「すごい不思議な方」『流浪の月』完成披露試写会
広瀬すずと松坂桃李をダブル主演に迎えた『流浪の月』の完成披露試写会が行われ、広瀬すず、松坂桃李、横浜流星、多部未華子、李相日監督が舞台挨拶に登壇した。(2022年4月13日 イイノホール)
本作のストーリーは、過去に誘拐事件の“被害女児”として知られている家内更紗(広瀬すず)と“加害者”とされた佐伯文(松坂桃李)。事件から15年経った現在、更紗は恋人・亮(横浜流星)と暮らしているが、文との偶然の再会をきっかけに、傷を背負った2人は距離を縮めていくのだが――。2020年の本屋大賞を受賞した、凪良ゆうによるベストセラー小説の実写映画化であり、監督を務めるのは『フラガール』『悪人』『怒り』を手掛けてきた李相日。
『怒り』以来6年振りにメガホンを握った李監督は、原作のどこに一番ぐっときたかを聞かれると「美しい物語でした。本当にただ綺麗なだけじゃなくて、今を生きる僕達が直面している社会の状況が鋭い視線で描かれていましたし、人と人の求める力というか、魂と魂の結びつきっていうんですかね。“名前が付けられない関係”って小説には書いてありましたけど、定義を超えて純粋に繋がろうとするところがすごく美しい小説だなと。何より、広瀬すずの代表作を撮らねばと思っていました」との強い思いを述べた。
文という難しい役を演じた松坂だが、役作りについて「監督とお話をさせていただいて、シルエットや内面を掘り下げていくにあたって、監督が提案してくださったんですけど、実際に文がその当時住んでいたアパートに寝泊まりしてみたり。日記を書いてみたりコーヒーをひたすら入れ続けたりとか。考えつくことを手当たり次第やってみようと。ずっと模索している感じでしたね」と役作りを明かした。
映画化決定の前から原作を読んでいた横浜は「チャレンジしかなかったですね。作品に入るために毎回挑戦の繰り返しだと思うんですけど、今回はより自分の中に大きな壁が立ちはだかったっていう感じではありましたね。自分の中に亮の要素っていうのがその時はないと思っていたので、見つけようともがいてやって。監督とすずちゃんに引き出してもらってやり切ったことが一番でしたね」と役への思いを語った。
さらには演じた亮と自身が重ならなかったことについて「“甘えって何なんだろう?”っていうところからはじまって。リハーサルでは「まずは膝枕をしてもらえ」と言われて。膝枕してもらってみたんですけれど、重いかなあと思って体を浮かせたりして(笑)。でも二人で同じ時間を過ごせたので少しずつ距離感も近くなったし、甘えるっていうのはこういうことなのかと」と答えた。
しかし広瀬は「30分くらいリハ室で2人きりにしていただいて。まだ会って2回目か3回目で、お互い極度の人見知りで。全体重を乗せてくれるのかなと思ったら、1、2キロぐらいしか私の膝には乗っていなくて。ずっと敬語で喋ってて、なんかカオスでした(笑)」と笑顔で振り返った。
久しぶりの映画出演となる多部は「裏話とかリハーサルのお話とかを今初めて聞いて、私って本当に何もないまま撮影に参加したんだっただなと」と話し、松坂から「ここは膝枕なかったですよね」と言われると、多部は「なかったですね(笑)。現場で手をつないでいようとか、抱きついておこうとかぐらいでした。もうちょっと色々したかった……したかったって言うのは変ですけど(笑)」と意味深な回答に笑いが起こった。
映画では2作目の共演となる松坂の印象を「撮影現場で誰だろう?って思うほど、お芝居中は文そのもので。でもカメラが回ってないところでの個人的な話で距離を縮める時間の時は、桃李さんのフラットのままで。すごい不思議な方でした。やっぱり」と広瀬はコメント。
逆に松坂は広瀬の印象を「いやいや、こちらも全く印象が全然違った。「もしかしてこっちが広瀬すずか?」と思ったり。お芝居をする時も互いのはらわたを見せ合うじゃないですけど、出し合わないとできないような空気というか。お互いがそうじゃないとやれないところまで来てるような、そういう認識のもとでお互いやっているようなところもあったかなと思いますね」と関係性の難しい役であることを明かした。
また、横浜は広瀬の最初の印象を「パブリックイメージというんですかね、華やかで“陽”というか。明るい印象があったけど、実際に会ってみると“陰”の部分というか、何かを持っているというのを感じましたね」と述べた。
本作の“宿命という絆で結ばれている2人の関係”にちなんで、強い絆で結ばれている相手について発表が行われ、李監督は「映画」、横浜は「自分」、広瀬は「姉」、松坂は「樹木希林」、多部は「もうひとりの私」と書いた。
最後の挨拶では「舞台挨拶とかであまり緊張しないんですけど、今回の『流浪の月』に関してはすごく緊張していて。どう受け止められるんだろうっていう興味もあれば、恐怖心も少しありまして。それが緊張に繋がっているんだろうなと。それだけ登場人物の関係性だったり世界観が、みなさんにどう映るのかこわいです。こわいんですけどしっかりと観ていただきたいなという気持ちの方が大きいです」と松坂は不安と期待をあらわにした。
広瀬は「この映画は共感というか共有できるものがあるのかどうか……。本当にたくさんの方に観ていただいて一人一人きっと答えが違くて。でも私は撮影の中で更紗として生きた時間はすごく自由で、幸せな時間もたくさんありました。生きるのって辛いことだけじゃないなって思える、希望を感じられた作品で。もう一度李さんの作品に出させていただけたこともすごく光栄ですし、やっぱり監督の映画はすごいなと思った作品です。みんな本当にお腹の中のマグマを吐き出しながら一生懸命作った映画なので、一人でも多くの方に届いたら嬉しいなと思います」と渾身の思いを披露した。
取材・撮影 南野こずえ
『流浪の月』
配給:ギャガ
(c)2022「流浪の月」製作委員会
5月13日全国ロードショー