ずっと謝っていたと語る、松坂桃李『空白』初日舞台挨拶
『空白』の初日舞台挨拶が行われ、古田新太、松坂桃李、田畑智子、藤原季節、伊東蒼、寺島しのぶ、吉田恵輔監督が登壇した。(2021年9月23日 新宿ピカデリー)
物語の内容は、スーパーで万引き疑いのある少女を目撃した店長の青柳(松坂桃李)は店の外まで追いかけたところ、目の前で車にひかれ亡くなってしまう事態に遭遇する。少女の父・添田(古田新太)は娘を失った怒りを容赦なく青柳に向けるのだが――。
『新聞記者』『MOTHER マザー』『ヤクザと家族』など挑戦的なテーマを生み出しているスターサンズの河村プロデューサーが企画し、『ヒメアノ〜ル』『愛しのアイリーン』などで衝撃を見せつける吉田監督とタッグを組み、被害者家族と加害者の葛藤を描いたオリジナル脚本のヒューマンサスペンス。
終始シリアスな内容となっているが、暴走する添田を演じた主演の古田は「映画を観終わったあと、我々を見てみなさんどういう気持ちでしょうか。あんまり楽しい気持ちの人はいないと思うんですけど、面白かったですか?」と客席に向かって投げかけると大きな拍手が起き「もう帰ります!」と早々に満足。
撮影現場の雰囲気について「非常にラクで楽しい現場でした。早く帰りたい人たちが多いので、なるべくNGを出さないようにしていて。刺々しいシーンばかりだったので、その反動で終わったらすぐに飲みに行こうという感じでしたね」と古田が思い返した。ところが松坂とは飲みに行けなかったことも明らかになり、「古田さんとのシーンがカロリーの消費が高いんですよね。とても飲みに行く気力がわかなく、毎回疲弊していて。なぜ監督もみなさんも飲みに行けるのかが不思議だった」と松坂は理由を説明。
添田に追い詰められる青柳を演じた松坂は、土下座や罵倒されるシーンが多いが「ずっと謝っていたという感じがして。すみませんとか、ごめんなさいとか」と話していると、横から古田が「でも一番辛かったのは(寺島)しのぶちゃんとのシーンじゃない?」と問いかけると会場からは笑いが起き、松坂は苦笑いしながら「しのぶさんとのシーンはですね、僕が学生時代にスーパーで働いていた時にいたパートさんにすごく雰囲気が似ていて。距離感や間合いの取り方がリアルで」と振り返った。
「こういうおばさんがいたら絶対嫌だよねというおばさんを集結した草加部さんをやらせていただいた。でも、スクリーンの中で生きている草加部さんはとっても必死なんです。(松坂)桃李くんを助けてあげたいために、ちょっと触ってみたりするんだよね(笑)」と寺島は役作りを説明し、お節介で正しさを押しつけがちなスーパーの店員を演じている。
劇中で添田と草加部が対峙し、そこに青柳が入ってくる緊迫した場面について古田は「めちゃくちゃ楽しかったよね。ゴジラ対コングだから。その間に人間が入ってくるからそりゃ大変だよ」と話すと、「その日は終わってすぐに帰りたかったですね。すぐに体を休めたかった」と松坂はベテラン2人の熱量に圧倒されたようす。
添田の部下・野木役の藤原は「こんなに楽しくていいんだろうかという感じで。酒を飲んだ記憶しかなくて」と古田と酒を酌み交わす機会が多かったと話し、さらには「食事のシーンで古田さんが目の前で泣いていてカットになった途端、僕が残したエビフライを食べていて。とても混乱しました」と古田の役者スイッチに驚いたエピソードを披露。
口コミ評価が多い本作だが古田は「気持ちが揺れる映画だと思う」と語り、松坂は「(キャラクターが)いるよね、こういう人。という方々ばかりだと思うんですよね。世代や性別によって共感するポイントが全く違うし、僕自身は観終わったあとにズンと重くなった。みなさんにも引っ掛かりやモヤがあったら、観た方と一緒に消化して欲しいなと思います」と呼びかけた。
取材・撮影 南野こずえ
『空白』PG12
配給 スターサンズ/KADOKAWA
(C)2021『空白』製作委員会
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