三浦貴大「新しいのに昔の日本映画を観ているよう」『四月の永い夢』初日舞台挨拶



『第39回モスクワ国際映画祭』にて「国際映画批評家連盟賞」と「ロシア映画批評家連盟特別表彰」のダブル受賞を果たした『四月の永い夢』の初日舞台挨拶が行われ、主演の朝倉あき、三浦貴大、中川龍太郎監督が登壇した。(2018年5月12日 新宿 武蔵野館)

3年前に恋人を亡くした初海(朝倉あき)は、蕎麦屋でバイトをしながら静かな日々を送っていた。彼女にとって居心地のいい場所だった蕎麦屋が閉店することになってしまい、職探しを考えるようになる。亡き恋人からの手紙をきっかけに、次々と訪れる小さな変化に戸惑いながらも、ある事を心の奥に秘めていた――。
歩いては立ち止まり、時折走り出すこともあるように、歩幅やスピードは人それぞれ。急ぐことへの焦りよりも丁寧に過ごす大切さを描いた本作。

製作経緯について中川監督は「ネパールで綺麗なライ麦畑を見て、亡くなった友人に手紙を書きたくなった。手紙を書くことで気持ちが違う段階に行く気分になった。届かないかもしれない手紙を書く映画を作りたいと思った」との構想だったこと明かし、『かぐや姫の物語』で主人公の声を担当している朝倉の声に惹かれていたため、朝倉への宛て書きとして本作が誕生したという。劇中の終盤に訪れる、朝倉が手紙を読み上げるシーンは心に染みる瞬間でもある。

恋人を亡くし、喪失感を抱えている初海を演じた朝倉は「中川監督から生み出される言葉が丁寧で優しくて。言葉以外にも優しい物が表れている脚本だったので、ぜひこの世界の中でやってみたいと思った」とオファーを快く引き受けたという。

初海に好意を持っている青年・志熊を演じた三浦だが、実は本作のロケ地である国立育ち。「自分の育った街が映画に出てくるのは嬉しい。何の役作りもすることなく自然に入っていけた。すごく絵になる街だと思った」と慣れ親しんだ場所での撮影を振り返った。初海の心境とレトロな街の雰囲気が見事に融合しており、落ち着いた空気感を全体にかもし出してくれている。

本作が2度目の共演となる2人だが「すごく自然体な方で。私がどんなヘマをしても、柔らかく受け止めてもらえる安心感が会う前からあった」と朝倉が言うと、三浦は安堵の表情をみせながら「朝倉あきを褒める会があったら5時間くらいはできる」と笑いを誘った。

作品の冒頭が“満開の桜と菜の花を背景に朝倉がたたずむ”という非常に印象的なシーンになっており、中川監督はとことんロケハンにこだわったようす。朝倉は「夢のように美しい場所でした。あのシーンが初日だったので、どういう物を中川監督が描いていきたいかが一瞬にしてわかって。この感動を忘れないで撮影期間を駆け抜けて行きたいと思った」という胸中だったことを吐露した。

オリジナルの脚本だったことが出演の決め手になった三浦は、中川監督の素晴らしさを問われ「言葉で語らない部分を丁寧に作品に載せていくのは魅力的だなと思います。新しいのに昔の日本映画を観ているような気持ちにさせてくれる」と絶賛。最後に中川監督が「ご感想などを色んなところで出していただけたら、僕はそれを見ながら一喜一憂します」とSNSでの拡散を呼びかけた。

取材・スチール撮影 南野こずえ

『四月の永い夢』
製作:WIT STUDIO 制作:Tokyo New Cinema
配給:ギャガ・プラス (c)WIT STUDIO / Tokyo New Cinema
5月12日(土)より 新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショー

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