小学校で特別授業『嫌われ者のラス』で考える環境問題



港区立赤羽小学校の特別授業として『環境を守る私たち』が行われ、海の環境汚染をテーマにしたスタジオリマップ作品『嫌われ者のラス』が上映された。(左より、足立区青少年委員会・酒井廣、YORIYASU監督、港区立赤羽小学校・宮﨑直人校長、イラストレーター・エイイチ、声優・土屋純平)

「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭」(2013年)で優秀アニメ賞を受賞している本作の上映とともに、子供たちが環境問題について考え、学ぶための特別授業。以前に開催された、足立区立伊興中学校の特別道徳授業でのスタジオリマップ作品の上映が反響を呼び、今度は港区立赤羽小学校にて授業となった。

『嫌われ者のラス』について、「東京海洋大学の教授が海をキレイにする方法として、バクテリアが磁石の役割で汚れを分解する研究をされています。それをアニメにしたいということになり、本作ができました」とYORIYASU監督が製作の経緯を明かした。

アニメーションを担当しているエイイチは「YORIYASU監督がキャラクターのデザインをして、それを僕がアニメにするという作業をしています。ビニール袋と洗剤の容器でできているラスというキャラクターが、海の中で生き物として不自然にならないように心がけました」と自身の作業を説明。

ひらめのじいさんの声を担当した土屋は「今、僕の声ってひらめのじいさんの声に聞こえる?」と投げかけると、子供たちは首を振って「聞こえない」と不思議そうに反応。続けて「僕よりもずっと歳をとった役を演じなければならなくて、海を見守っている長老のような存在なのでどうやって表現すればいいのか苦労しました」と当時を振り返った。

子供たちからの質問タイムになると多くの手が挙がり「なんでラスという名前なんですか?」について、YORIYASU監督が「ラスのかぶっているコンビニのビニール袋って、川などに捨てると海へと流れてウミガメがクラゲと間違って食べてしまって窒息死してしまうんですね。顔はオイルボールという船などから排出される油が固まって海の汚れになって、海中へ光が入らなくなってしまいます。体は食器洗剤のボトルでできているのですが、洗剤の液体である界面活性剤は〝直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム″で、その略称がLASなのでラスにしました」と劇中での問題定義を噛みくだいて解説し、子供たちは感心したようす。

「声優の人って機械で声を変えているんですか?」という職業についての質問では、土屋が「アニメや映画の声優さんは自分で声を変えています。僕も小さい子や妖怪など色んな役の声を自分で考えて演じています」と、高い声から低い声、さらには妖怪の声など変化を実演し、子供たちは大喜びで拍手。また、「発声練習はしていますか?」と聞かれると「生麦、生米、生卵」と早口言葉を披露し、一斉に真似をして賑やかムードに。さらには土屋が「いい早口言葉があるよ!生ゴミはちゃんとゴミ箱に捨てよう」と、本作にかけてゴミ問題をさりげなく呼びかけた。

イラストレーターであるエイイチに対して「上手に絵を描くにはどうしたらいいですか?」とコツを聞かれると、「毎日、絵を描くことが大事です。1年後に見直した時、「なんでこんなに下手だったんだろう」と思えたら成長しているということになります。今はたくさん絵を描くことですね」と経験を踏まえてアドバイス。

普段はスキンヘッドだが、カツラを2パターン持参し、さりげなく取り替えては生徒たちから驚きと笑いを巻き起こしたエイイチは「みんなの記憶に残るような授業にしたいと思いました。話している時にどんどん髪型が変わったら面白いよねということになったんです。みんなの記憶に残って、ゴミは捨てちゃいけないということを思い出してもらえたらいいな」という独自の印象付けで授業の意味を伝えた。

「女神は船の残骸でできているようですが、残骸は海の中であの形になるんですか?」と聞かれ、YORIYASU監督は「船の残骸でできているのは確かなんですけど、現実的にはあの形にはならないですね。アニメとしてわかりやすくするためで、女神のような雰囲気を出すためにあの形にしています」と回答。続いて「バクテリアってあの形をしているんですか?」についても「バクテリアは目には見えないんです。でも小さくて見えないとアニメにはできないので、可愛らしい形で見えるようにしました」という鋭い質問にも嬉しそうに答えた。

上映と質問タイムを終え「本作を観て、みんなができそうなことは?」と聞かれると、子供たちからは「リサイクルする!ごみを捨てない!最後まで使う!」と元気よく声があがり、授業は終了した。

机の上に教科書を広げる授業だけではなく、アニメーションを通して社会で起きている問題を知り、話し合い、質問をする特別な時間は、忘れられない授業に変わる。ぜひ多くの学校で行われてほしい取り組みである。

取材・スチール撮影 南野こずえ

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