スタジオリマップ×600名の中学生。特別道徳授業「環境汚染と命を考える」



足立区立伊興中学校の特別道徳授業として「環境汚染と命を考える」新しいカタチの授業が、足立区青少年委員会の企画によって行われ、スタジオリマップ作品の『嫌われ者のラス』『OROKA』の上映とともに、生徒たちとのディスカッションが設けられた。(左より、YORIYASU監督、足立区立伊興中学校・加藤明校長、イラストレーター・エイイチ、足立区青少年委員会・酒井廣)

海の環境汚染をテーマにした『嫌われ者のラス』は「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭(2013年)優秀アニメ賞」に選ばれた作品であり、上映後に600名の生徒たちと一緒にディスカッションが行われた。

Q.どのような思いを込められましたか?
YORIYASU監督 東京海洋大学の方から「海の環境を改善する研究をしているが、絵本か映画にして欲しい」という話があって、『嫌われ者のラス』が出来ました。

Q.主人公のラスにはどのような意味があるのですか?
YORIYASU監督 ラスの格好がビニール袋をかぶっていて、顔が黒くて体が洗剤の容器になっているんですけど、洗剤に入っている界面活性剤の「直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム」の略語がLAS(ラス)なんです。

Q.キャラクターを描く上で苦労した所は何ですか?
エイイチ ラスの体のビニール袋や洗剤のプラスチック容器など、浮かぶイメージの物を水中で自然に泳がせる表現が苦労しました。最後にラスの魂がなくなり、生き物からモノに変わる瞬間は特に表現にこだわりました。

Q.キャラクターたちの名前の由来は?
YORIYASU監督 そんなに考えてなくて、バクテリアのバク、真鯛のマーダとダイチなど意外と単純で。主人公だけはしっかりとコンセプトをつけて考えました。

Q.普段からみんなができる事はありますか?
YORIYASU監督 映画の中では船から油を流すという場面を作りましたが、実際は工業による汚れは4割で、家庭からの汚れは6割なんです。一人一人の行動で少しずつ変わっていきます。

Q.制作期間はどのくらいですか?
エイイチ 他の仕事もしながらなので、制作期間は2ヶ月くらいだったと思います。監督の企画からを含めると1年くらいです。

Q.どのくらいの人が関わって制作されましたか?
YORIYASU監督 主に制作したのは10名くらいですが、協力者を含めると100名くらいが関わっています。

加藤校長 私は葛西で生まれました。昭和の頃はヘドロなど汚れる物が沢山ありましたが、今は葛西臨海公園も綺麗になってアサリが取れるようになりました。一人一人が努力することで環境って良くなるんじゃないかなと思います。

酒井 昔は、川や海は汚れていたんですが、今はキレイになっています。有機物が出ないようゴミの焼却も改良されているので、みんなが分別してくれることからはじまるんです。

「山形国際ムービーフェスティバル(2011年) アニメCG部門最優秀賞」作品であり、ペット殺処分を人間に置き換えた衝撃のアニメーション『OROKA』の上映後にも、ディスカッションが行われた。

Q.命は人間だけじゃなく、他の動物も大切にしようと思いました。この作品に込めた思いは何ですか?
YORIYASU監督 みんな同じ命なんだということを一番伝えたいですね。その中で問題になっているペット殺処分を取り入れました。殺処分も劇中では仏が悪い人に見えますが、結局は母親がタカシを捨てたからこうなったことに気付いて欲しいと思っています。

Q.擬人化した意味を教えてください。
YORIYASU監督 人間とペットの映画は沢山ありますが、ペットを人間に置き換える、保健所を仏の世界に置き換えるという価値観の変換によって考え方が変わるかなと思って作りました。

Q.キャラクターを描く上で苦労した所は何ですか?
エイイチ 最後のシーンまでペットであることをバラしたくないという監督の強い意向がありました。2回目に観た時「擬人化」していることに気付いてもらって、ワンちゃんっぽい細かい動きを入れるところにこだわっています。1回観ただけではわからなくて、2回目観た時に犬を意識していることをわかってもらえるよう作りました。

Q.ペットを捨てる理由は何が多いのですか?
YORIYASU監督 色々と調べてきたのですが、旅行に行く時にペットを預ける所がないから保健所に連れて行くとか、CMで白い犬が流行った時には保健所に白い犬が増えたんです。その理由の中に「喋らないから」というのがあったんです。冗談なのか非常識なのかわかりませんが、衝撃的でした。

酒井 言葉にも命があり“言霊”と言います。いい事やいい話をすると、元気やパワーになるんです。逆に悪口を言ったり耳にすると、気持ちが落ち込みます。目の前じゃないからと思って悪口を言っても、それが必ずその相手の耳に入ります。言葉にも命があります。

加藤校長 みんなに考えて欲しいのは“命ってなんだろう”ということです。みんなも命を持って生きていますし、ペットを捨てたりする人も現実にいるということです。「自分に必要がなくなったら、本当にいらない物なのだろうか?」「命って捨てていいの?」をもう一度自分でよく考えてもらいたいです。

 

環境問題、そして殺処分。大きな問題ではあるが、手の届かない問題ではない。一人一人の意識や物事への変換、さらには伝え広げることで改善へと繋がることに気付いてもらえたはずだ。伊興中学校の画期的な試みがスタジオリマップの映画を通して、生徒たちの小さなキッカケになったことは間違いないだろう。

取材・スチール撮影 南野こずえ

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