『ラブストーリーズ コナーの涙|エリナーの愛情』レビュー


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「恋は一人でも出来るが、愛は二人いないと成立しない。」

誰かがそんなことを言っていたっけ。
だけど、ときどき忘れてしまう、どんなに深く愛していても、相手は自分とは違う人間なのだと。

一つの愛を男女それぞれの視点から描くという、ラブストーリーに対する意欲的な試みで、その事実を改めて痛烈に思い知らされる。

ニューヨークに暮らす一組の夫婦、コナー(ジェームズ・マカヴォイ)とエリナー(ジェシカ・チャステイン)。
深く愛し合っていた二人だが、幼い我が子を亡くしたことで気持ちがすれ違い始め、ある日突然エリナーが姿を消す。
そしてエリナーとコナー、別々の視点から物語は綴られる。

<エリナー>
あの子の死から立ち直れない悲しみをコナーは分かってくれない。
深く傷つき、家を飛び出した。
実家に戻り、大学の聴講生となった。
髪型を変え、自分を知らない人たちと過ごす毎日に心地よさを感じる。

時間が欲しいと言ったのに、コナーが突然大学に現れ、心は激しく揺れる。
あなたが恋しい、だけどもうあの頃には戻れない。強くなりたい。
前を見て、一人で歩きたい。

愛の思い出に胸を締め付けられながらも、未来を見つめる女の凛々しさが胸を打つ。
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<コナー>
悲しみを二人で乗り越えたいのに、エリナーは受け入れてくれない。
突然、彼女はいなくなった。ようやく探し当てた彼女は、まるで別人のようだった。
愛し合った日々を取り戻したいのに、どうすれば良いか分からない。

妻の決断を受け入れられない男の困惑と苛立ち。
過去に執着しているのかもしれない、相手を尊重すべきだってことは分かってる。
それでも追わずにいられない。

去る女に、追う男。
二人のどちらが正しいかなんて、言い切れない。
二人は違う人間で、作中の言葉を借りるなら、< それぞれが悩みを抱えている>のだから。

愛し合っているのはお互い分かっているのに、決して距離は縮まらない

興味深いのは、同じシーンでも二作品で二人の会話、行動が少しずつ違うのだ。同じ風景を見ても、それぞれの記憶や感じ方は違うのだ。

どんなに近くにいて、愛していても、相手の気持ちは完璧には分からないし、思い通りにできない。自分も、相手の思い通りにはならないように。

じゃあ、どうしたらいいんだろう?

途方に暮れるのだけれど、この映画が二つの物語で一つの愛を描くように、あなたにも、あなたの大切な人にも、それぞれ別の物語があるということを思い出してみる。

それが苦しみを解く鍵になるかもしれない。

普遍的な愛の痛みを、全く新しい形で描いてみせた本作、夫のコナーを「X-MEN:フューチャー&パスト」のジェームズ・マカヴォイ、妻のエリナーを「ゼロ・ダーク・サーティ」のジェシカ・チャスティンという、演技派の二人が演じる。二人を優しく見守る家族、友人たちを演じるのはイザベル・ユペール、ウィリアム・ハート、キーラン・ハインズ、ヴィオラ・ディヴィスなどの名優陣。

二作品は、男女の違い、立場の違い、どちらから観るかによっても、共感するところは異なる。

そして鑑賞後、自分自身の愛について思い起こさずにはいられないだろう。

あの時、あの人は、自分が思う以上に愛してくれていたのかもしれない。
今、隣にいるこの人に自分の愛はちゃんと伝わっているのだろうか?
愛すること、愛されることの意味を再び問い直したくなる。

ニューヨークの街は二人を優しく包み込み、悲しみの中にもそっと未来への希望をすべりこませてくれる。
前を向いて歩いていくしかないんだ。

いつか、また希望に出会う道の上まで。

文・小林麻子

『ラブストーリーズ エリナーの愛情』 監督・脚本:ネッド・ベンソン 出演:ジェシカ・チャスティン、ジェームズ・マカヴォイ、ヴィオラ・デイヴィス、イザベル・ユペール、ウィリアム・ハート (105分)
『ラブストーリーズ コナーの涙』 監督・脚本:ネッド・ベンソン 出演:ジェームズ・マカヴォイ、ジェシカ・チャステイン、キーラン・ハインズ、ビル・ヘイダー (95分)
配給:ビターズ・エンド、パルコ(c) 2013 D isappearance of Eleanor Rigby, LLC. AllRightsReserved
2015年2月14日(土)より、ヒューマントラストシネマ有楽町 新宿シネマカリテほか全国順次ロードショー!
http://bitters.co.jp/lovestories

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