ーピュアな希望ー『レナードの朝』


「純真さ」とは、一体、何でしょうか?
辞書には、「心に汚れのないこと」「邪心がなく清らかなこと」と載っています。

また、類語の「純真無垢」という言葉は、「汚れや偽りがないこと」と載っています。当たり前ですが、歳を重ねるにつれて、人間は自分の心が汚れ、純真さが失われていくことを自覚していきます。社会でうまくやっていくために、嘘を積み重ねる回数が増え、自分を偽らざるをえない場面が増えていくからです。私たちは生きていく中で、自分の「純真さ」を無意識にすり減らしていきます。「純真さ」は生きていく上で、障害となってしまうからです。しかし、この「純真さ」が、時に生きていく上で、大きな希望となることがあります。その「純真さ」が希望となることを教えてくれるのが、『レナードの朝』という映画です。

人付き合いの苦手な精神病医セイヤーは、他人に対して心を開くことができません。しかし、眠り病患者レナードの意識を復活させ、交流していく中で、セイヤーは変わっていきます。自由を求め怒り狂い、恋をして喜び、自分の病気と向き合っていくレナード。そんな自分に正直なレナードの姿は、物心のついてない子供のようであり、セイヤーと私たちに、人間の本来持つ「純真さ」を思い出させてくれます。純真なレナードを演じる、ロバート・デ.ニーロの笑顔は、生きている喜びに満ちあふれ、いつまでも観た人の記憶の中に残ります。

この映画の終盤は、夢が終わってしまった後のように闇が広がっています。レナードは眠りの中に戻っていくのです。全ては終わってしまったのでしょうか?セイヤー医師は、広がる闇の中でメラメラ燃えている人間の魂を見つけ出します。そして気付きます。人間に必要なものは、自分の「純真さ」に向き合う勇気であるということを。「純真さ」に向き合う勇気があるものだけが、他人と向き合うことができるということを。

最近、あなたは、自分の「純真さ」と向き合えていますか?自分の純真な気持ちに嘘をつきすぎて、疲れていませんか?レナードは、「純真」さが持つ、生きる喜びを、きっとあなたに教えてくれることでしょう。

ライター 松尾 哲

『レナードの朝』
キャスト:ロバート・デ・ニーロ、ロビン・ウィリアムス 、 監督:ペニー・マーシャル

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