中島央監督、ターニングポイントになった『シークレット・チルドレン』


IMG_8637「この映画は僕にとって大きな意味があって、これから映画監督を続けていく上でもターニングポイントになった」

そう語るのは、待望の最新作『シークレット・チルドレン』の初日舞台挨拶に登壇した、中島央(なかじま ひろし)監督。

『シークレット・チルドレン』は日本人監督による、アメリカ人スタッフとキャストで製作された全編英語の作品であり、FOX・NTTぷらら・アイキャスト3社の「アメリカ映画共同製作プロジェクト」によって誕生した。

中島央監督は、アメリカで映画製作を学び、全編ロサンゼルスで撮影された『Lily』(2011年)が世界中の映画祭で多数の賞を受賞。また、子供たちの夢を叶えるために作られた『アンライバルド』(2012年)が調布映画祭2012にて、プレミア上映を飾るなど、世界的に注目されている俊才。

「企画から公開まで2年間かかったんですけど、自分が求めるストーリーがこのストーリーだった。この日を迎えられ非常に嬉しく思います」と、長い時間をかけて完成した本作は、近未来を舞台に、人間の手によって作り出されたクローンが絶滅の危機に追い込まれるSFヒューマンドラマ。IMG_8564

作品のテーマについて、「クローンというのは我々自身の姿だと思って描いています。厳しい時代のなかで、どうやって希望を失わずに生き残るべきかということを、この映画を通して伝えたい」と、込められた強い想いをアピール。

「撮影自体は1~2カ月ですが、ゼロから今日を迎えるまで2年かかって。長期間なんで、よっぽどこの物語に思い入れがないと、どっかで疲れちゃう時が来ると思うんです。この映画を完成させよう!みんなに観てもらいたい!って気持ちが持続できた」という胸中を明かした。

また「子役が非常にいい演技をしているんですけど、子役ってのはプロでもなかなか難しいんです。リハーサルを何度もやってますが、リハーサルでは最高だったのに、本番では上手くいかないなって時に頭抱えました。ちょっとスナック菓子でも買ってきた方がいいかな、なんて思った(笑)」とのエピソードも披露。

「僕の映画の撮り方って変わっているんですけど、1つのシーンも切って撮るのではなく、一気に撮っている」という独自の撮影方法を明かし、さらには「子供の頃から、僕が映画監督になったらいつか“人間と人間がぶつかって、熱を持って語り合う”というシーンを作りたかった。今回完成した映画を観て、自分が満足できる段階に来れたかなと思います」と、本作の仕上がりに自信をうかがわせた。

IMG_8693舞台挨拶にてMCを務めたのは、当サイトにて連載中のコラム『美に効く映画【サプリ】』で『シークレット・チルドレン』のレビューを担当した、映画コメンテーターの藤井まゆみ(オスカープロモーション所属)。
藤井の書くレビューは業界内でも注目されており、本作について「スリリングな映像美と上手い脚本の融合が、ハリウッド業界で評価を得た生粋の若い日本人の手によるものである事実がスゴイ。映画通で言わせるところの、スティーブン・ソダーバーグかポール・ハギス作品か、と錯覚してしまうほどのクオリティ。 オスカー受賞監督に肩を並べても引けをとらない」と太鼓判を押している。
(画像:中島央監督、藤井まゆみ)

 

記者が中島央監督と出逢ったのは3年前。長編デビュー作『Lily』(2011年)のインタビューからの付き合いである。
トレードマークであるサングラスをいつもかけているが、見た目とは裏腹にとても腰が低い。そして映画を語る眼差しは、まるで少年であり、情熱的で純粋な思いをぶちまけてくる。監督という立場にこだわらず自身をとことん売り込むが、アツく暴走しすぎて、その後反省するという憎めない一面もある。すべては彼自身が描く、憧れの監督像に近づくため。そんな姿に動かされ、これまで16本の記事で追ってきた。だから、本作が公開を迎えたことには感慨深さがある。

あえて言いたい。この作品は中島ワールドの序章にしか過ぎない。彼にはまだ、燻っている大きな可能性があるからだ。
しかし彼が生み出す作品の特徴である、映像の美しさはスクリーンでしか伝わらない。故に映画本来の、劇場で観る意味のある映画である。

中島 央、ただのフィルムメーカーで終わらない。

取材・スチール撮影 南野こずえ(2014年5月10日 ヒューマントラストシネマ渋谷)

 

【ストーリー】
舞台は近未来。36年前に「シークレット・チルドレン」と呼ばれる3万人のクローンが、人間の手によって作り出された。その後、この国では人間とクローンが共存していた。しかし、1年前の政権交代で大統領の座についた独裁者が「クローン廃絶運動」を政策として掲げて以来、人間たちからクローンたちへの執拗な迫害・廃絶が始まる。絶滅の危機に瀕したクローン達は、それぞれの想いを抱え、生き残りの道を模索し始める…。

『シークレット・チルドレン』 原題:THE SECRET CHILDREN
監督・脚本・プロデューサー:中島 央
キャスト:オーガスト・コリエル、ジェイミー・ベルナデッテ、アリ・デ・ソーサ
製作:FOXインターナショナルチャンネルズ(株)、(株)NTTぷらら、(株)アイキャスト
2014年5月10日より公開!
©2014 Fox International Channels Japan/Hikari TV All Rights Reserved
公式サイト:http://thesecretchildren.com/
中島 央 公式サイト:http://superfilmmaker.net/

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