驚きと切なさに心奪われる『名も無き世界のエンドロール』レビュー



思い出は鮮やかなまま残しておきたいと願いつつも、記憶というものはとてもやっかいなものだ。時間とともに少しずつ退色していくことにはなかなか逆らえないが、それでも強く深く根付いた思いには、人を奥底から変えてしまうチカラがあるのかもしれない。

華やかに賑わうクリスマス・イヴ。盛り上がっている若者を横目に、サンタの格好をしたキダ(岩田剛典)は急ぎ足で街を歩きながら幼馴染みのマコト(新田真剣佑)へと電話をしていた。とうとう「プロポーズ大作戦」を決行する時が訪れたのだ。

その数年前にさかのぼる。自動車の修理工場で働く2人の前に、政治家の令嬢で人気モデルのリサ(中村アン)が高級車の修理をしてほしいと現れた。いかにもお嬢様な振る舞いとともに身勝手な依頼をされるが、彼女に興味を持ったマコトは「リサと付き合いたい」とキダに話し、突然仕事を辞めて姿を消してしまう。

彼のゆくえがどうしても気になったキダは、裏社会に潜り込んでまで探し出し、なんとか再開を果たすことができた。一方、リサにふさわしい男になるために必死に金を稼ぎ続け、人が変わったように努力をしてきたマコトは「プロポーズ大作戦に協力してほしい」と頼むのだが――。

原作は行成薫の同名小説であり、10年という時間軸のなかで現在と過去の行き来が激しい構成となっている。そのため、実写映画化するにはキャストもスタッフも困難を要したことが映像からひしひしと伝わってくるが、色合いがそれぞれの時代で統一されているといったこだわりも、観ている客が混乱しない工夫と言えるだろう。

ストーリーはキダの目線で展開していくが、主演の岩田は、感情の波があまり大きくないキャラクターでどう変化をつけるかを新田と相談しながら役作りをしており、今までに演じてきた役柄とは一線を画す存在感をかもし出している。逆にマコトは感情の振り幅が広い役となっているため、新田らしい力強さや明るさに加え、冷酷さも兼ね備えて演じているので両極端な性格も注目ポイント。初共演に違和感がないタッグで奏でる本作はラブストーリーであり、サスペンスでもある。

また回想シーンでは、複雑な家庭で育った彼らと同じような境遇であり、強い絆で結ばれている転校生のヨッチ(山田杏奈)も登場する。3人で過ごす時間こそが成長と青春そのもので、心の支えにもなっている。しかし彼女はとある事情により、現在は2人とは一緒にいない。さらには修理工場の社長役に大友康平、裏社会の組織のドンには柄本明といったベテラン勢を贅沢に起用したことによって、物語に重厚さを添えてくれている。

さて、本作に興味を持っている方々は“ラスト20分の真実”とのキャッチコピーが気になって仕方ないはず。きっと様々な憶測をされているだろうが、どうしてもネタバレを語れない筆者からは予想外の伏線回収があることと、驚きと切なさに心奪われたという一言にすべてを託したい。

文 南野こずえ

『名も無き世界のエンドロール』
2021年1月29日(金)全国ロードショー
©️行成薫/集英社 ©️映画「名も無き世界のエンドロール」製作委員会
配給:エイベックス・ピクチャーズ

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