冨家ノリマサ、涙をぬぐい「頑張って生きてるんだな」『最後の乗客』公開記念舞台挨拶



『最後の乗客』の公開記念舞台挨拶が行われ、冨家ノリマサ、谷田真吾、畠山心、堀江貴監督が登壇した。(2024年10月12日 ユーロスペース)

本作の内容は、東北の小さな街の駅のロータリーで客待ち駐車をしているタクシードライバーの遠藤(冨家ノリマサ)とたけちゃん(谷田真吾)は、ドライバーの間で噂になっている話をしていた。「夜遅く浜街道流してっと、若い大学生くらいの子がポツンと立ってるんだって‥‥‥」そんなたけちゃんの話を笑い飛ばす遠藤。ハンドルを握った遠藤は、人気のない深夜の道路でタクシーを止めようと手をあげる若い女性を照らし出すのだが――。ミステリアスな展開と衝撃的なラストが描かれた55分の中編映画となっている。

映画の制作経緯について、宮城県出身の堀江監督は「震災があった時にニューヨークにいまして。震災から5年後くらいに訪れた際、震災というものが風化しつつあったので、なにかしたいなと思いまして。映像の仕事をしていたので形に残せたらなと思ってこの映画を作りはじめました」と語った。

本作が1館からの公開で全国公開となったことについて冨家は「撮影スタッフも本当に数人で、上映できるのかも全くわからない状態で。脚本が面白かったのでとにかくいいものを作ろうと。とにかく今目の前にあるものを一個一個ちゃんと作っていいものさえ作れば、なんとかなるんじゃないのかという思いで。監督のもと一丸で作っていた映画なので、海外でも賞を取ったり、全国展開できるようになるとは想像してなかったです。だからすごく嬉しいです」と喜びをあらわにした。

さらには、「インディーズ映画で1館からの上映で広がっていくことを想像してなかったんです。逆にいうとすごくいい時代になったなと思っていて。昔だったら多分埋もれていたと思うんです。『侍タイムスリッパー』もそうですし、観てくれた方がSNSなどで「面白かったよ」って言ってくださるクチコミが世の中を変えていく。人の力ってすごいなって。僕も今本当にそう思っています」と2作品ともに出演し、異例の全国公開となったからこその実感を言葉にした。

海外の多くの映画祭で評価されている本作だが、どんな反応だったかを聞かれた堀江監督は「(観てくれた方が)感動されてわざわざ話しかけてきてくださったりとかして。親子の関係とか普遍的な部分で感じるところがあったみたいで、いろんなところで拡散してくれて。本当にすごい嬉しいです」と語った。

出演のきっかけについて、冨家はオファーを受けてすぐに快諾したそうで、キャスティングをしてくれた方が知り合いだったと話す谷田は「オーディションがあるので受けてみないかと言われて。でも遠藤役ではなかったんですよね。たけちゃんとしてだった」と笑いを誘った。

遠藤の同僚であり、ほんわかした憎めないキャラクター“たけちゃん”。冨家もリハーサルで初めて谷田を見た瞬間に「あ、たけちゃんだ!って思った」と振り返り、堀江監督も「たけちゃん像があった」ことを明かし理想どおりだったそうだが、「冨家さんはお父さん役としては格好良すぎた。それを崩すほうが難しかった」と違った意味で難題だったようす。

本作に出演するにあたり冨家は「本当の主人公はこの映画の奥にいる何千、何万という小さなろうそく。出演者の僕ら6人はそこからちょっと火をもらっていて。嘘だけはつかずに芝居ができたらいいなと思って。演技も気持ちの嘘もつかない。この役に真摯に取り組まないとダメだと思った」との思いで挑んだことを明かした。

冨家とW主演を務めた岩田華怜はビデオレターで登場。「私自身、2011年の3月11日に仙台市内の自宅で被災して、そこから13年間、いろんな思いを抱えて活動してまいりました。自分よりも辛い思いをした人たちをそばで見てて、何もできない自分に不甲斐なさを感じた日々もあったんですけども、今回この映画に出会ってふるさとの話を全世界に伝えたいと思って参加しました。震災を経験した人もそうじゃない人も生きていたら、きっと辛いこととか忘れられないあの日や許せない自分みたいなのがあると思うんですけど、この映画を見てくれたみなさんの明日が少しでも明るくなればいいなと思っています」とニューヨークで語るようすが映された。

その映像を見た冨家は涙をぬぐいながら「彼女も主役という重責を一生懸命担いながらこの撮影に臨んでいて。その覚悟が現場でもすごくありました。ニューヨークで頑張って生きてるんだなって今思っちゃって」と感極まった。

最後に監督が「クラウドファンディングで協力してくださったみなさまがいなかったらこの映画はできなかったです。さらに広がっていくためには、やはりまたご支援いただいて広がっていかないとなかなか観ていただけない地域もありますので、ご協力いただきますようよろしくお願いします」と呼びかけた。

取材・撮影 南野こずえ

『最後の乗客』
10月11日(金)ユーロスペース、池袋シネマロサ他全国順次公開
© Marmalade Pictures, Inc.

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