鈴木亮平、愛と思うかエゴと思うか。『エゴイスト』公開記念舞台挨拶



『エゴイスト』の公開記念舞台挨拶が行われ、鈴木亮平、宮沢氷魚、阿川佐和子、ドリアン・ロロブリジーダ、松永大司監督が登壇した。(2023年2月11日 テアトル新宿)

人気エッセイストである高山真の自伝的小説を映画化した本作は、14歳で母を失ったゲイの浩輔と、母を支えながら生きているパーソナルトレーナーの龍太。2人は惹かれあいながらも予想外の方向に進んでいく運命が待ち構えていた。与えることで満たされる浩輔にとってのエゴとは――。衝撃的な展開とタイトルに込められた意味に心揺さぶられるストーリーとなっている。

開始早々、鈴木は「映画はどうだったでしょうか?」と問いかけると拍手が起こり、続けて「ついにこの日を迎えたなという心境です。いろんなことがありました」との思いを語り、宮沢は「素晴らしいみなさんと一緒にこのステージに立てることを嬉しく思います」と挨拶。

初日である昨日、鈴木はこの劇場で作品を観たことを明かし、近くに座っていた方の携帯のバイブ音が気になったそうだが「今回に限ってはそれでも来てくださってありがとうございますと思いながら観た」と笑いを誘いつつも、「はじめて客観的に観られた気がする。ドキュメンタリータッチで撮っていて、自分がどういう表現をしているかを意識しないままにその人物を過ごしていた」と振り返った。

さらには客観的に観てどんな思いが伝わってきたかを尋ねられると、「本当にいろんな受け取り方ができる映画だなと。わがままって素敵だなと思いました。わがままってエゴだし愛だし。言葉に上手くできないからわがままになっているんですけど、それをストーリーで伝えられるのが映画の美しいところ」と見どころを披露。

初日の映画館の埋まり具合をチェックしていたと話す宮沢は「満席の映画館もあって。雪の中、どこも(お客さんが)たくさん入ってくださっていて。今日は僕もチケット買った」と報告。また、SNSをチェックしていた時に鈴木が昨日観に行ったことを知り「亮平さん誘って!って思った(笑)」と劇中さながらの関係性が垣間見えた。

前回の完成披露からSNSで感想をチェックしていたという鈴木は「1ツイートも逃さず読まさせていただいております。批判も称賛も含めて。嬉しいと思ったツイートがあって、SMAPさんの夜空ノムコウの歌詞がずっと頭に流れていると。“ぼくの心のやわらかい場所を今でもまだしめつける。そんな映画だ”と書いてくださっていて」と嬉しい感想を紹介。

最後の挨拶にて鈴木は「この映画は答えがないと思うんですよ。愛と思うか、エゴと思うか。依存しあっているだけのグロテスクな関係と思うのか。本当に人それぞれだと思います。いつ観るかによっても全然捉え方が違う映画なんじゃないかなと思います。分かりやすいものを提示するのではなく、いろんなものを提示する映画ってそうそうないと僕は思っていて、この作品に携われたことを誇りに思っております」と力強くコメント。

続けて「これまで何度か、この映画は作られないんじゃないかという瞬間がありました。僕も原作にすごく感動して、やらせていただくことになったのですが、届いた台本を読んで、監督に『これじゃやれない』と電話したこともありました。その時に監督が『僕を信じてくれと。僕が作る映画は、この脚本から役者が演じているのを見て、どんどん生きたものにしていくと。この台本では伝わらないんだ』と一生懸命説得してくださった」と明かし、さらには「この映画を観たみなさんの表情を見ていると、本当にあの時、監督を信じて良かったなと思います。こんな作品が出来上がるとは思いませんでした。改めてありがとうございます」と松永監督に感謝を述べ、大きな拍手に包まれた。

感極まった鈴木は目をうるませながら「高山真さんがいなかったら、この映画も、今日ここでみなさんにお会いすることもありませんでした。残念ながらこの映画の最終決定を聞くこともなくお亡くなりになったのですが、ひとりの人間が遺したものが、いかにいろんな人たちに影響を与えるのか。人生って突然終わることもあるけれども、ひとりの人間が世の中に与えられる影響ってすごいんだなと、今日あらためて思っています。高山さんは天国という言葉は信じていないとおっしゃっていましたが、今日は天国の高山さんに感謝したいと思います。ありがとうございました」と精一杯の言葉を振り絞った。

宮沢は「1年半ほど前に撮影して。僕たちのすべてを作品に注ぎこんで、いい作品を作ろうという熱い思いで挑んでいました。どの映画もそうなんですけど、公開されるまでにはたくさんの不安があって。僕たちがやったことが果たして正解なのかどうか、みなさまに届くのかという不安に時には押しつぶされそうになった瞬間もありました。こうやってこの作品の公開を記念できていることが幸せでいっぱいです」と公開の喜びを噛みしめた。
続けて「たくさんの方に届いていることも嬉しいですし、10年後、20年後、30年後も生き続けて、より多くの人に届く作品だと信じています。『エゴイスト』という作品は走りだしたばかりです。この作品を引き続き愛してくれると嬉しいです」と呼びかけた。

取材・撮影 南野こずえ

 

『エゴイスト』R15+
© 2023 高山真・小学館/「エゴイスト」製作委員会
全国公開中

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