結婚相談所で展開される恋愛コメディ『マリッジカウンセラー』レビュー
ストーリーの舞台は、時田結衣(松本若菜)が運営する結婚相談所『とわえもわ』。大手不動産会社から『とわえもわ』に出向してきた赤羽昭雄(渡辺いっけい)と時田の仲人たちの奮闘ぶり、婚活中の男女のドラマなどがコミカルに描かれている。
トップ営業マンだった過去の栄光を引きずる中年サラリーマンを演じた、渡辺いっけいの熱量が凄まじい。言動、表情、行動のすべてがパワハラ・セクハラチック。昭和男の暑苦しいまでのバイタリティーに溢れている。特に前半はパワー全開で、大きな笑いを誘う。
時田結衣役の松本若菜とのかけ合いも楽しい。出会ってからしばらくは、衝突を繰り返す不器用なふたり。不動産を売買する感覚で仲人業に取り組む渡辺を受け入れられない時田だったが、赤羽の服装や言動に変化が表れると徐々に軟化。仲人業を理解し始めた赤羽は、一歩を踏み出せずにいる男女を自分のやり方で力強く応援。少しずつ手応えを感じるようになっていった。
そんなふたりを見守り続ける、結衣の母親である時田十和子(宮崎美子)。カリスマ仲人といわれた十和子のまなざしはいつも優しく温かい。さりげない存在感が印象に強く残る。
ドラマチックな恋愛ストーリー以外にも、登場人物それぞれの過去や内面にもしっかりと触れられている。会社内で行き場を失った赤羽の描写が特に切なく、心を打つ。説明は控えめかつ、余白の多い脚本なので、想像を膨らませるとよりおもしろさが増すであろう。
文 シン上田
『マリッジカウンセラー』
配給:スタジオレヴォ
2023年1月13日(金)より池袋シネマ・ロサほか全国順次公開
©2022「マリッジカウンセラー」フィルムパートナーズ