オダギリジョー、キューバ撮影は大きな財産『第15回ラテンビート映画祭』オープニングセレモニー
『第15回ラテンビート映画祭』オープニングセレモニーが行われ、日本とキューバの合作映画『エルネスト』に主演したオダギリジョーを筆頭に、監督の阪本順治、『カルメン&ロラ』監督のアランチャ・エチェバリア、『アブラカダブラ』監督のパブロ・ベルヘル、『I Hate New York』監督のグスタボ・サンチェス、LGBT活動家の東小雪が登壇した。(2018年11月1日 新宿バルト9)
ラテンビート映画祭は「初々しく」「反抗的」で「無邪気」なキンセアニェーラの魂を持って誕生した映画祭。これまで常に女性による女性のための映画を積極的に紹介してきた。15年目を迎えるこの記念の年から、本格的にブラジル映画を紹介することが決定。『激情の時』のように洗練されたドキュメンタリー作品から、『ベンジーニョ』『夢のフロリアノポリス』のような可笑しく素敵な家族の物語、そして2018年ベルリン国際映画祭テディ賞受賞作『ハード・ペイント』や『サビ』などの若者を描いた映画まで、ブラジルという国の様々な側面が見られる作品を集めた。
さらに今年のラテンビート映画祭は15年目を祝っていつもより多彩なプログラムとなっている。バチカン市国が制作に参加し、ヴィム・ヴェンダース監督がメガフォンを取った『ローマ法王フランシスコ』、私たちをアンゴラ内戦へと誘うジャーナリズムの古典を描いたアニメ『アナザー・デイ・オブ・ライフ』と、他方、異なる国から偶然集まった、同性愛、トランスジェンダーを扱った4本の一風変わった作品など、バリエーション豊かなラインナップが勢揃いしている。
『エルネスト』
ゲバラからファーストネーム「エルネスト」を授けられ、戦士名(エルネスト・メディコ)と呼ばれ、ボリビアの山中にて25歳で散った青年、フレディ前村(オダギリジョー)短くも決然と濃厚な命を全うした彼は、1941年、鹿児島県出身の父とボリビア人の母のもと生を受けた。フレディは医師を志しキューバの国立ハバナ大学へ留学。そこでキューバ危機のさなか、自分の運命を変えるチェ・ゲバラと出会い、人間的な深い魅力に心酔した彼は、やがて軍事クーデターから祖国を解放すべくゲバラの組織する部隊に参加、社会の不平等是正と貧困の根絶を胸にボリビア軍事政権へと立ち向かっていく。
MC 阪本監督への質問ですが、ラテンアメリカで撮影をされた中で、特別に感じられたエピソードや出来事をお聞かせ願えませんか?
阪本監督 やはり中南米という国の中で、キューバは他の国とは違いますね。撮影時には軍事面の協力が必要なんですけど、その当時のトップのラウ局長の許可がおりないんですよ。僕らの撮影の準備中にオバマ大統領が来て、安倍首相が来て、それで後回しになったんでしょうけど…その国のトップの許可が無いと撮影できないというのは、今までの撮影では経験が無かったですね。
MC オダギリさんへの質問ですけど、キューバへ行かれて、日本とラテンアメリカの国の違いで一番印象に残っているものがあったら教えてください。
オダギリ 日本で生まれて育った僕は、やっぱりどこか、お金だったりとか時間だったりとかそういうものが社会をコントロールしている気がするし、どうしても損得で物事を考えるというのがよく出てきてしまうんですけど、キューバの人たちは全くそういうものさしを持っていないかのように、お金や時間に対して全然惜しみ無く使ってくれるというか。人が生きるっていうのって、何を中心に生きればいいのかなって凄く考えさせられましたね。キューバで撮影できたことは大きな財産というか、とても良い経験だし、自分の価値観や考え方も大きく影響を受けたと思っています。
MC オダギリさんはこの映画を撮影されるにあたって、スペイン語を習得されたと聞いていますが、今後コラボレーションして作品を作ってみたいと思うラテンアメリカ、スペインなどの監督や俳優さんがいたら教えてください。
オダギリ まずスペイン語を取得してないです(笑)なんかもう、おこがましいですね。また勉強をやり直さないといけないかと思うとゾッとします。
トークショーは佳境に入り、MCから『エルネスト』の見所をきかれたオダギリは、「劇場でご覧になることはすごく良いことだと思います。僕のスペイン語をどう感じるかは心配ではありますけど」と笑い、監督から「(オダギリのスペイン語は)スペインの人からは解りにくいって言われたけど、地元(ボリビア)の人からは完璧だと言われた」と補足されていた。
最後に阪本監督が、「いろいろご意見あると思いますが、これだけの熱量を使ってキューバで映画を作る監督と役者はそうはいないと思っています。」と自信を覗かせ、『第15回ラテンビート映画祭』オープニングセレモニーは幕を閉じた。
取材 福井原さとみ
『第15回ラテンビート映画祭』
新宿バルト9 11月1日~4日(日)、9日(金)~11日(日)
梅田ブルク7 11月17日(土)、18日(日)
横浜ブルク13 11月23日(金・祝)~25日(日)