Deepで焼け付く愛が飛び出す!ギャスパー・ノエ監督『LOVE【3D】』レビュー
ある人にいわれたことがある。
愛は秘めごとで、ふたりだけの世界を築いてゆく行為。決して、人に話すものではないんだよと。
ギャスパー・ノエ監督の最新作は、彼の今までの作品の中で、1番すんなりと身体に染み込んでくる。
じんじんとした疼きを覚え、ひりひりするような渇きを終始感じて、未だに忘れることのできない、あの人の肌感を記憶の中で重ねてしまった。
閉ざされた世界にハートがシンクロして、よりぴとっとそばに寄り添ってくれる3D映画なのだ。
じわじわ沸騰するように紡がれてゆく愛と、ガラガラと日常が崩壊するほど愛に振り回される人生は、とにかく熱い。舐めてかかると間違いなく火傷する。
ちゃんと、あの人を愛することができていたのかな。
私はこの映画をみて、これまでの自分の恋愛遍歴と向き合わずにはいられませんでした。
雑誌の星占いの結果で一喜一憂しては、目に見えない運命を信じて、あの人に特攻してみたり。
だんだん空が明るくなってゆく家までの帰り道、その手を離せずに、一歩一歩もったいなく噛み締めてみたり。
ふと見上げた月がきれいだねって伝えたくて、今すぐあの人の声が聞きたくなって、携帯を持ったまま立ち尽くしてみたり。
蛇口をひねったまま、どんどん溢れ出してゆく水が元には戻せないように、一度知ってしまったあの気持ちは巻き戻すことができない。
関係が成熟し、ちょっとしたことで気持ちが離れてしまっても認めたくない。
だってあの時、何よりもココロが動いてしまったあの瞬間をもう一度と、願ってしまうからだ。
執着だけがぐるぐると自分の首に巻きついて、息ができなくなっても、しがみついてもがき続けてしまう。
急速に沸点に達した愛は、冷ますのにもそれなりの時間を要する。
好きに込めた重さ分だけ、手痛い想いをしなければ、あの幸せの記憶に勝てないのだ。
記憶からなくなってしまえと切に願い、蓋をすることでしか、歩き出すことすらできなかったあの人への想いも、
この映画が大切な人生の意味に繋がっているんだよと、教えてくれている気がした。
文:押尾キャロル
【ストーリー】
彼女は愛のすべてを僕に与え、消えない傷を残した-。
一月一日早朝、電話が鳴る。マーフィーは目覚め、傍には若い妻と二歳の子供。彼は留守番電話を聞く。エレクトラの母だ。心労で声がやつれ、娘から連絡はなかったか知りたがっている。エレクトラはずっと行方不明なのだ。母は、娘に何かあったのではないかと心配している。いつまでも雨のやまない一日、マーフィーはアパートにいて、彼の生涯最大の愛を思い返す。エレクトラとの二年間を。いつまでも続くはずだった、駆け引きに満ち、時に行き過ぎた、過ちだらけの、焼けつくような情熱の日々を…。
『LOVE【3D】』
監督・脚本・編集・製作:ギャスパー・ノエ
出演:カール・グルスマン、アオミ・ムヨック、クララ・クリスティン
© 2015 LES CINEMAS DE LA ZONE . RECTANGLE PRODUCTIONS . WILD BUNCH . RT FEATURES . SCOPE PICTURES .
4月1日(金)より、新宿バルト9、ヒューマントラストシネマ有楽町・渋谷ほか全国ロードショー!
http://love-3d-love.com/