人生の最大公約数を探すには？『メニルモンタン 2つの秋と3つの冬』レビュー
漠然とした未来への不安を抱えて、いくつもの季節を越してきたんだ。
きっと私たちはいつも、何か起きることを期待している。
ひとりに飽き飽きした日常を、180度ひっくり返してくれるほどわくわくする何かを。
この物語の主人公は、パリはずれの下町情緒あふれる街･メニルモンタン在住のアルマン、33歳。
「～才までに何かをしなければいけない」。そんな目に見えないプレッシャーを、誰もが少なからず感じたことがあるだろう。
アルマンは33歳の誕生日に決意を固める。タバコをやめて、仕事をみつけ、近所の公園でジョギングをはじめる。
そこで偶然出会ったアメリに、一目で恋をする。
充電期間が長ければ長いほど、踏み出すことが怖くなる。
けれども人生は時に、自分の想像をはるかに超える、とっておきの出来事を用意していてくれたりもする。
異性に限らずとも、人と人のお付き合いは不測の事態で溢れている。
自分の希望に対して、相手がYesと答えるか、もしくはNoと答えるか、はたまた答え自体がすぐ得られるものとは限らない。
そしてNoだった場合、永遠の別れになるかもしれないリスクが潜んでいる。
愛情を注ぎ過ぎて枯らせしまう盆栽のように、私たちは人との距離のとり方や付き合い方を見誤ってしまう。
失いたくない大切な人ほど、想いが強すぎて、気持ちだけが空回りしてなぜか上手くいかない。
その度に相手との違いを思い知り、想いが伝わらず、裏切られたような気がしてしまう。
会えない時間すらも愛おしく思えた、あの気持ちと同じだけの重さで、相手を許せなくなってしまうこともある。
身を切り裂くような思いを繰り返して、世界で唯一無二の彼女という存在の中毒になってゆくのだ。
いくつもの期待通りには転ばない心の対話を経て、人生のかけがえないものをひとつ、またひとつと集め育ててゆく。
いざ、そのチャンスが舞い降りた時、すぐ動けるための筋トレを積み重ねてゆくべきなのだ！
まずは、明日から近くの公園を、軽くジョギングしてみよう。
きっと、最大公約数を共に面白がって探せるような、人生の共犯者をみつけることができるかもしれない。
文：押尾キャロル
【ストーリー】
パリのはずれの街、メニルモンタン。ボルドーの美大を卒業したアルマンは定職にもつけず、親友のバンジャマンと冴えない毎日を過ごしていた。33歳の誕生日にアルマンは決意する。「仕事をみつける。運動をはじめる。タバコをやめる。」そろそろ、本当に何か起きないといけない。ある日のジョギング。アルマンは偶然出会ったアメリに一目で恋をしたのだけれど・・・。ふたりは考えている。共に生きていく幸せ、出会ってからの長い道のり、いくつかの試練。たぶん未来のことも。親愛なる“ぱっとしない”大人たちの恋の季節。
『メニルモンタン 2つの秋と3つの冬』
監督･脚本：セバスチャン･ベベデール
出演：ヴァンサン･マケーニュ、モード･ウィラー、バスティアン･ブイヨン、オドレイ･バスティアン
配給・宣伝：東風+gnome
（C）ENVIE DE TEMPETE PRODUCTIONS2013
12月5日 (土) よりシアター･イメージフォーラムほか、全国順次公開！
http://menilmontant-movie.com