世間体を取っ払っても残るもの『友だちのパパが好き』レビュー
彼以外のすべてがアウトオブ眼中になるほど、ハイカロリー過ぎるこの想い。
傍からみたら、少し変態に映ってしまうのかもしれない。
今、かなり気になっているあの人。
多分ふたまわりくらい年上で、妻子のあるあの人。
香ばしい加齢臭に水虫さん、そして髪の毛を気にしているらしいあの人。
彼の家族には、疲れきった邪魔くさいおっさんにみえているかもしれないけど、
私からするとちゃんとひとりの男性で、ドキドキする胸の高鳴りが抑えられないの。
そんなマヤちゃんが恋した相手は、親友のお父さん。
未だかつてないほどのこじらせ具合は、純粋?変態?予想だにしない展開にどんどん引き込まれてゆく。
社会で大人仮面をつけて居場所を構えると、周りが勝手に「キミはこんな人」ってラベルを貼ってくれる。
そのラベルが許容される範囲内で、ルーティンに埋もれて、優等生らしく生きるのが正義なのだ。
普通に好きな人が出来て、普通に結婚して子どもを育てながら家族になって、旦那が隠れて普通に浮気して離婚するか悩んだりして。
ちゃんとこれから先の将来を見据えて、レールを踏み外してはいけないの。
もちろんその普通が、普通に出来ることではないことを、大人になってから知るのだけど。
私たちはいつからか、むきだしの心で相手と向き合うのが怖い。
傷付けられて、なかなか癒えなくて、じゅくじゅく疼き続けるあの痛みを知ってしまったからだ。
傷付く前に逃げ出す方が簡単。血が出ても、誰かに泣いてすがってなんていられないの。強がって平気なフリをしてしまうんだ。
本気になるのはかっこ悪い。周りの目が気になっちゃう。でもそれよりも自分。
「あのコちょっと変わってるね」ってそのラベル、一生に一度の人生を走る上で、君には必要ないんじゃない??
怒ったり泣いたり「あなたのせい!」ってここぞとばかりに攻めてみたり、ちゃんと「好きだよ?」「一緒にいたいよ!」「愛してるよ。」って。そういうことを、ちゃんとめいいっぱいやっておかないと、新しい傷を作りにゆける強さがいつまで経っても身に付かない。
そのコリコリに固まったむきだしのココロ、あなたは誰に伝えに行ってみるの??
文:押尾キャロル
【ストーリー】
「なにそれ、マジで言ってんの」自分の父親に思いを寄せる親友マヤの突然の告白に、あきれる妙子。笑いとばす母親ミドリ。しかしマヤはその日をきっかけに、猛然と父親へのアタックを開始する。女子大生の娘と同い年の美少女に好意を寄せられて、うれしさをかみ殺せない父親恭介。あきれるミドリ。恭介には長年の愛人ハヅキがいて、そのために夫婦は既に離婚することになっていたのだ。当たり前だと思っていた数々の関係が、マヤの純愛によって、あっという間に崩れていくのを妙子は目にすることになる。
『友だちのパパが好き』
監督・脚本:山内ケンジ
出演:吹越満、岸井ゆきの、安藤輪子、石橋けい、平岩紙
第28回東京国際映画祭 日本映画スプラッシュ部門公式出品作品
配給・宣伝:SPOTTED PRODUCTIONS
(C)2015 GEEK PICTURES
12月19日 (土)より、ユーロスペースほか全国順次公開!
http://tomodachinopapa.com/