映画・音楽・夏・カオス『MOOSIC LAB 2014』in 名古屋・開幕
映画・音楽・夏・カオス ――『MOOSIC LAB 2014』in 名古屋・開幕――
“映画(MOVIE)+音楽(MUSIC)のコラボレート実験室”としてSPOTTED PRODUCTIONSが世に放つ名物企画、『MOOSIC LAB(ムージック・ラボ)』も、2014年で第3回を数える。(ちなみに2011年の『MOOSIC LAB』は、第0回扱いとか)名古屋ではシネマスコーレ(名古屋市 中村区)で開催されている『MOOSIC LAB 2014』だが、上映初日8月9日15:30よりspazio rita(名古屋市 中区)でオープニングパーティが行われた。(左より、黒田将史、ケツ(ニッポンの社長)、宮本杜朗、中村祐太郎、今泉力哉、直井卓俊)
坪井篤史(司会進行:シネマスコーレ・スタッフ) 「まずは、『QOQ』と言う作品を観ていただきます」
直井卓俊(SPOTTED PRODUCTIONS代表) 「全国の準グランプリ作品で、今年グランプリは該当なしだったんですが、準グランプリ2作品のうちの1作品です」
坪井 「じゃあ実質、頂点を獲った作品と言う訳ですね」
『QOQ』は、『MOOSIC LAB 2014』に先駆けた名古屋プレミア上映である。
上映後は『QOQ』黒田将史監督、わたる役のケツ(ニッポンの社長)さんを交えてのトークショーとなった。
黒田将史(監督) 「お金がなくて録音も自分でやったんですが、凄く後悔してます。今改めて観直して、二度とこう言うことは起こさないようにしようと思いました。そう言う面ではよかったです…反面教師と言うか(場内爆笑)」
直井 「『MOOSIC LAB』って“(映画)監督×ミュージシャン”って企画なんですけど…史上初、オリジナルのユニットを…」
坪井 「あ…クレジットにある『国際連盟』って言うのは…」
黒田 「そうなんですよ。僕が多少楽器を弾ける奴を集めて作り上げたユニット名です(場内爆笑)」
直井 「ケツさんは、前作でも主役でしたよね」
ケツ(『QOQ』) 「はい。前回に引き続き、監督に使ってもらった訳ですけど………どうですかね?(場内笑)」
直井 「使用楽曲も、ケツさん作なんですよね?」
黒田 「いや…エンドロールで曲のタイトルの後に“並木優子”と入れてくれって言われて…」
ケツ 「僕の中に女性の人格“並木優子”と言うのが居まして…並木優子が曲を作って詞を書いたんです(場内爆笑)」
ケツさんは『QOQ』で最優秀男優賞を受賞しており、授賞式に出席できなかったケツさんに黒田監督から表賞状が手渡された。
『MOOSIC LAB 2014 オープニングパーティ』は、まだまだ終わらない。この後spazio ritaで上映されたのは、『MOOSIC LAB』の過去作だ。
『GREAT ROMANCE』(監督:川村清人&飯塚貴士/7分/出演:清瀬やえこ タケシ/『MOOSIC LAB 2013』特別賞)
『nico』(監督:今泉力哉/62分/出演:芹澤興人 北村早樹子/『MOOSIC LAB 2012』グランプリ)
そして、特別ゲストとして『nico』の今泉力哉監督が登壇した。
今泉力哉監督 「久しぶりに観ると…重いですね(笑)。この映画だけは、何か自分の映画の感じがしなくて。撮影3日間だったんですけど…2日撮って、1日休みがあって「あと何を撮ったら映画になるんだ?」と考えて、もう1日撮ってるんです」
そして、黒田将史監督、中村祐太郎監督も交えたトークショーが繰り広げられ、ケツさんの弾き語りライブ(本人曰く「並木優子のカバーライブ」)まで披露された。
出演者と観客は一体となり、“MOVIE×MUSICのコラボ”を楽しんだ……時間が許す限り。
そう。記者自身も忘れかけていたが、この直後に『MOOSIC LAB 2014』の初日上映が迫っているのだ。
慌ただしくシネマスコーレへ移動すると、『MOOSIC LAB 2014』名古屋開催を待ち詫びた映画ファンが入り口周辺に沢山の傘の花を咲かせていた。第3回『MOOSIC LAB』は、AからFまでの6プログラム12作品が揃う。
『MOOSIC LAB 2014』ラインナップ
【Aプロ】
『NOBIDORANDO』(監督:宮本杜朗/32分/出演:TADZIO 米本学仁)
『あんこまん』(監督:中村祐太郎/80分/出演:青山未来 和田光沙)
【Bプロ】
『イルカ少女ダ、私ハ。』(監督:タイム涼介/50分/出演:吉岡里帆 川上恵理)
『恋文X』(監督:市川悠輔/60分/出演:カネコアヤノ 岡野真也)
【Cプロ】
『おばけ』(監督:坂本悠花里/50分/出演:佐藤玲 佐藤亮)
『遊びのあと』(監督:太田達成/50分/出演:GOMESS)
【Dプロ】
『これは僕がアカシックというバンドを撮ったドキュメンタリーである。』(監督:横山真哉/50分/出演:アカシック 金谷タケオ)
『おんなのこきらい』(監督:加藤綾佳/68分/出演:森川葵 ふぇのたす)
【Eプロ】
『QOQ』(監督:黒田将史/64分/出演:ケツ(ニッポンの社長) 馬と魚)
『寝床より愛をこめて』(監督:永野宗典(ヨーロッパ企画)/48分/出演:荒谷清水 内田春菊)
【Fプロ】『ほったまる日和』(監督:吉開菜央/20分/出演:柴田聡子 織田梨沙)
『キッチンドライブ』(監督:西尾孔志&益山貴司/80分/出演:キキ花香 影山徹)
封切日のシネマスコーレではAプロの2作品が上映され、上映後『NOBIDORANDO』の宮本杜朗監督も舞台挨拶に加わった。
宮本杜朗(『NOBIDORANDO』監督) 「僕ずっと関西のミュージシャンと映画を撮ってて…“MOOSIC”と言う企画に当たって、知らん人とちょっとやってみたかったんですよね。前作の『Save The Club Noon』の試写会の時に何故か居てたTADZIOのリーダーのことを調べて、「これだ!」と思ったんです。TADZIOの二人をイメージしてシナリオを書いて持ってったら、「いや…ライブは出来るけど、(映画に)出たくない…」みたいなことになって…。でも、自分の思う通りに行かなかったけど、これが他人とやることなんやなって思ったんですよね。で、この形になったんです」
今泉 「凄くフラットで、映像はずっと緊張感があって、カッコよかったですね。こう言うのって、一歩間違えばチープになると思うんですよ。“フィリピン”がデカいと思いますね(笑)」
中村祐太郎(『あんこまん』監督・出演) 「写ってる自分を観て、面白いなと思ったんですよ。自分が自分で…役者としてってのもあるんですけど、単純に面白くて。何度も観てますけど、自分の出てるとこがやっぱり面白いなって(場内笑)」
坪井 「中村さんが出る長いシーン、あれ凄いと思いますよ」
中村 「あれ、アドリブなんですよ。本当はフルバージョンで30分あるんです。最初台詞を合わせて、相手の和田(光沙:智子役)さんが「これじゃ私は、(劇中の行動は)やらないです」って言ったんです」
宮本 「ドキュメンタリーやん!(笑)それ、和田さんの演出やな(場内笑)」
直井 「最優秀男優賞はケツさんだけど、中村さん男優賞なんですよね(笑)」
今泉 「面白かったですよ。中村監督が出てくるシーンは僕も凄い好きです…あれが無いとダメだと思いますね。ムージックなんですけど、音楽が無くても成り立っちゃう作品だと思います」
そして、MOOSIC名物……否、スコーレ名物、木全純治シネマスコーレ支配人による作品講評が行われた。
監督にとって、恐怖の一瞬である。
木全純治 (『NOBIDORANDO』について)「私のグランプリは、宮本監督の『NOBIDORANDO』です。『MOOSIC in 中川運河』制作の経緯から余り贔屓になってはいけないと言う心が最初からあったんですが、全部観て格が違う、と思いました。それだけ力量があるし、『MOOSIC LAB』のコンセプトにぴったり合った作品と言うことで…全然知らないTADZIOの音楽を聴きたいと言う思いにさせてくれたんで、グランプリに推しました」
(『QOQ』について)「映画を作る王道で押してて、話の内容が非常にしっかり伝わってくる作品になってます。出演者のケツさんと馬と魚さんが良い。ケツさんは、私も最優秀男優賞にしました。そして、坂元ゆうなさんが登場して「素晴らしく綺麗な人が出てきたな」と言うショックが素晴らしい。映画は驚きや意外性が大事です。展開も一番しっかりしたストーリーになっていると思います」
(『あんこまん』について)「中村くんですが…今回、非常に頑張ったと思います。でも、中村くんの出てるシーンは、素晴らしいけど長過ぎだなと思います。やっぱり、もうちょっとスマートに切ってほしかったなと…出過ぎだな、と言うのが、鼻に付いた(笑)。ストーリーは頑張ったんだけど、“MOOSIC”に合致してない…MOOSICの枠の中で作品を成立させていくのが必要なんで、私は審査員特別賞にしました」
MOVIE代表13人の映画監督と、MUSIC代表12組のミュージシャンによる、化学的かつ有機的なる融合と乖離。
『MOOSIC LAB 2014』――名古屋は、シネマスコーレで8月22日まで毎日1プログラムを上映。以降、全国を巡回予定。12作品と言う名の“解答例”を、ご自身の眼でお確かめあれ。
取材 高橋アツシ
『MOOSIC LAB 2014』公式:http://www.moosic-lab.com/
シネマスコーレ公式:http://www.cinemaskhole.co.jp/cinema/html/home.htm
spazio rita公式:http://spazio-rita.com/