カリフォルニアロールが恵方巻になる日! 『デッド寿司』鑑賞記



カリフォルニアロールが恵方巻になる日、ヘイお待ちッ!! −−『デッド寿司』鑑賞記−−

「今日は『デッド寿司』を観るために、本当に寒い中朝早くから並んで頂き、しかも早々に完売を頂いたそうで本当に嬉しいです。ありがとうございます」1月26日は東海地区公開初日とあって、名古屋・シネマスコーレに登壇した井口昇監督の声は弾んでいた。

「この劇場に来るのは初めてなんですけど、以前から私の出演作を上映させて頂いてまして、物凄くここへ来たかったので今日は本当に嬉しいです。宜しくお願いします」主演の武田梨奈さんも、立ち見までいる寿司詰めの観客席に笑顔を見せる。

井口昇監督最新作『デッド寿司』は、アクションであり、スプラッタであり、コメディであり、動物(?)パニック物であり、青春映画であり、その上、ラブストーリーも、異種間の友情物語も詰め込んだ、ネオ・ジャポネスクごった煮ムービーだ。通が嗜む一貫の握りと言うよりも、美食家の鼻を折る海鮮巻き…いやさ、“カリフォルニアロール”である。

「まぁ井口監督のオタクぶりと言うのは凄いもんでね…とにかく普通の人の発想を超えると言うか…まさか寿司が空を飛ぶだとか人間を食うだとか、よくぞこの男は考えたと思います。最初にこの台本を見た時に、ワケわかんなくて…悪いけど、ダメだわって断ったのよ。そしたら、また来て…悪いけど、ちょっとダメだわって。次に、井口監督本人が来たのよ。監督とは前から知ってるから、『監督が来たんなら…よし、やろう!!』と(笑)」松崎しげるさんも、自慢の声を張り上げた。

松崎 最初に思い付いたのは、寿司屋にいた監督が一番好きなタコを見てた時だったんでしょ?
井口 そうなんです。武田さんが何か新鮮なモノと戦う映画を撮ってくれって言われて、悩んでて…回転寿司屋でタコを見て、コレが『イーーッッ!!』ってめくれて襲ってきたら怖いなって。一番凄いのは、企画通してくれたオフィス・ウォーカーさんだと思います(笑)

松崎さんの軽快なトークに、井口監督の舌も軽やかになる。

武田 アクションは特技としてやらせて頂いてたので、今回は監督に『コミカルなジャッキー・チェンっぽいアクションをやりたい』とお願いしまして。
井口 今までの梨奈ちゃんの作品はブルース・リー系が多かったんですけど、元々梨奈ちゃんはジャッキー・チェンが大好きだったんで、だったらジャッキーっぽいコミカルな…色々こう避けたり叩いたりって言うのも変わったモノがいいな、と。
武田 まさか、寿司と戦うとは思わなかったです(笑)

『デッド寿司』の観所の一つに、素晴らしい殺陣がある。“イグチ・カット”とでも呼びたい絶妙なカット割りと相まって、アクションシーンは舌を巻く見事さだ。

松崎 俺今まで色んな女性のアクションシーンを見てきたけど、その中で武田がいちばん上手いね!『噂の刑事トミーとマツ』で志保美悦子ちゃんと一緒だったけど、武田の方が上手い!!…そう言えば、金的蹴りが多かったよね?
井口 一応、『金的中心でもいい…?』って、武田さんに聞いたんですよ(笑)
武田 本番でも遠慮して軽くやってたんですけど、監督が『ワンシーン、カット無しで撮りたいんで、本気で当ててください』って言われて。
井口 『観てる男性が「痛てぇッ!!」って股間を押さえるようなシーンにしたいんです』って…そう言われて、どうでした?(笑)
武田 いやもう、(物語上で)寿司をバカにされたんで、やってやろう!!って気持ちで(笑)

見事なアクションを見せるのは、人間だけではない。空を飛び、火を噴き、人を狙う…凄まじい動きを見せる寿司たちは必見である。

井口 CGばっかりだと飽きてくるじゃないですか。寿司もみんな助監督さんがワイヤーで動かしてるんですよ。で、日に日に上手くなっていくんですよ!『今日はお前、エビ上手くなったな』とか競い合ってて(笑)

井口監督が描き出す“独特なニッポン”は、海外でも絶賛されている。

井口 テキサスのファンタスティック映画祭で、なんと梨奈ちゃん主演女優賞を獲ったんです!!カナダでは『特殊技術賞』を頂きました!ちなみに、亜紗美が『ベストロボット賞』と言うのを獲りました(笑)

『デッド寿司』は、国内向けでも海外向けでもない。全世界へ発信された“ノボル・イグチ作品”だ。自称食通も食わず嫌いは止めて“カリフォルニアロール”に食指を伸ばしてみるといい。そして、豪快に鼻っ柱を折られるといい。忘れがちだが、カリフォルニアロールを考案したのは日本人なのだ。

『デッド寿司』
ケイコ(武田梨奈)は、伝説の寿司職人の娘。父の後を継ぐべく、日々厳しい修行に励んでいた。しかし、その厳しさに耐えかねて、とうとう家出をしてしまう。とある田舎の温泉旅館で仲居の仕事にありつくが、仲居仲間にいじめられるは、旅館の女将・由美(亜紗美)にも叱られるはで落ち込むばかり。そんなケイコをなぐさめてくれるのは、元寿司職人の澤田(松崎しげる)、ただ一人だけだった・・・。ある日、小松製薬の社長以下社員たちが、この旅館の評判の寿司を食べにやってくる。復讐に燃えたある男の策略により、男が自ら発明した薬を注入する。
キャスト:武田梨奈  松崎しげる 監督:井口昇 音楽:福田裕彦  PG-12  ©オフィスウォーカー
http://deadsushi.com/

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