尾張名古屋は城ノワール 【おコメダーズの映画まつり2016 in 名古屋】潜入記


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“おコメダーズ”とは、クリエイター集団である。脚本家の小松公典(当方ボーカル)、女優の倖田李梨、俳優の津田 篤、映画監督・脚本家・俳優の中村公彦(サーモン鮭山)の4人組ユニットで、自分たちの携わった作品を多くの人々に届けるべく積極的に上映会を企画している。

「コメダ珈琲店で打ち合わせをしたから、“おコメダーズ”なんです」

“沈黙のキャプテン”小松公典(当方ボーカル)は、そう言った。2016年1月23日、おコメダーズは初めて4人揃ってコメダ珈琲店発祥の地・名古屋へ降り立った。シアターカフェ(名古屋市 中区 大須)で【おコメダーズの映画まつり2016 in 名古屋】が開催され、おコメダーズに映画監督・田代尚也を加えた5名が舞台挨拶に登壇したのだ。

【おコメダーズの映画まつり2016 in 名古屋】
◎Aプログラム
『そして鬼になる』(2013年/22分)
監督・脚本・編集:田代尚也 出演:衣緒菜、小松 響、国分 崇、倖田李梨

倖田 初めての名古屋で、この作品セレクト……どうですか?
小松 Aプログラムは、田代くんの“プチ特集”と言うことで
田代 そう簡単にはお目に掛かれない、マニアックな3本で(笑)
中村 この作品は、(小松)キャプテンのご子息の響くんが……
小松 当時、小学校に上がるか上がらないかくらいだったんですが、ちょうど性的な目覚めを迎えてたんですね。大変だったんですよ……衣緒菜ちゃんが下着姿になったら、あいつ泣き始めちゃって(場内爆笑)
倖田 これって、『そして父になる』(監督:是枝裕和/2013年)のタイトルを……
田代 撮ってた当時『そして父になる』が評判だったんです。僕も賞とか欲しいな……そうだ、『そして鬼になる』ってタイトルにしよう!ってことで、映画(『そして父になる』)も観ずに撮ったんです。完成してから『そして父になる』観に行ったら、全然違う映画で……
倖田 そりゃ、そうですよね(笑)

『勃ち上がれ!ちんこーくん!』(2014年/13分)
監督・脚本:田代尚也 出演:衣緒菜、ちんこーくん

倖田 童貞を拗らせた作品だよね
田代 “僕のSEXコンテスト”って言うイベントがあったんですけど、その時初めて25才で彼女が出来立てでSEX観なんて無かったんで……こんな感じになりました。衣緒菜さんは僕の奥さんなんですけど、下ネタが嫌いで……
倖田 よく(この作品に)出てくれたね(笑)
田代 自宅で喜んで僕一人でアフレコやってる訳ですよ、「かァ~りィ~!(※名古屋の子供たちが罵声を浴びせる時に発する“とーれー!”(トロい)のアクセントで※)」とか言って(場内爆笑)。超白い目で見られて……「近所迷惑になるからさぁ」って
倖田 造型も拘ってるよね
田代 後輩の女の子を「造型部やりたいって言ってたけど、仕事あるから手伝ってくれない?」って騙して連れてきて……これを作らせた、と言う(場内笑)
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『女子大生怪奇倶楽部 ~怪奇!ストーカー幽霊~』(2012年/12分)
監督・脚本:田代尚也 出演:村田 唯、紅井ユキヒデ、岸田恵里子、津田 篤、江沢英利

田代 久しぶりに観たんですけど、津田さん役名も普通に“津田さん”って出てましたね
津田 Twitterで出演依頼を頂いたんですよね(笑)。バイクで事故った後の復帰第1作だったんですが、撮影場所が4階だったので松葉杖突いての昇り降りが大変でした
田代 吉祥寺バウスシアター(2014年6月閉館)で上映した時、劇場で線香を焚いて香りを……
中村 4DXみたいに(笑)?
田代 そうです。生首が飾ってあったりとか
倖田 そうだ!入り口に“田代家の墓”があったり……色々凝ってたよね
田代 お化けが脅かしに来るんですよ。でも、線香の臭いが付いちゃって、支配人が椅子を蹴って激怒されたと言う(笑)

そしてAプログラムではもう1本、詳細は明らかに出来ないが“女優・倖田李梨の転機となった作品”(2011年/19分)が上映される。

中村 倖田さんはこの作品に係わったことで、何か心持ちが変わったんですよね?
倖田 そうなんです。「こう言う方たちと一緒に作品に一杯出られたらいいな」と思って、女優の活動に絞ろうと思った作品です。なので、皆さんに観て頂きたいと思ってセレクトしました

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◎Bプログラム
『RUN ゾンビ RUN』(2010年/13分)
監督:世志男 出演:飯田佑子、辻 京太、西入美咲、宝田雅資、サーモン鮭山、ほか

中村 世志男監督は、『101回目のベッド・イン』(2015年)など僕の作品でお馴染みの方なんですが……幻想ホラー映画祭(第1回短編ホラー怪奇幻想映画祭)って映画祭がありまして、それに出す用に作った作品です。でも、全然ホラーじゃないんですよね(笑)。世志男さんもちょっと古いから、ゾンビって言うと『スリラー』しか思い付かなくて(場内爆笑)
倖田 世志男さん、古いかどうか以前に、そんなにゾンビに興味がなかったんじゃないかと……
中村 そんな普段ホラーとか全然撮ってない人なんで
小松 そんな話したこともないな……で、唯一の引き出しが、マイケル・ジャクソンだったと(笑)
中村 ところが、そんな『RUN ゾンビ RUN』が、短編ホラー怪奇幻想映画祭でグランプリを獲ったんです(場内爆笑)

『ゆっくりしてけよフェアリーテール』(2010年/12分)
監督・脚本・美術・編集:中村公彦 出演:奈月かなえ(水原香菜恵)、世志男、柳 東史、しじみ、丸山裕一、志水季里子

中村 ピンク映画では共演してた世志男さんを自分の映画に出てもらうって言うのはこれが初めてだったんですけど……『フェアリーテール』は、“ホンコンノワール”役の柳(東史)さんに尽きます(笑)
倖田 あれ、最高ですよね~
中村 最初は、『ロボコップ』みたいな効果音を入れる予定だったんですよ。それを柳さんが「ピー、ガシャン!」って口で言い始めて(場内笑)。それ、全然演出の指示じゃないんですけど
倖田 柳さんって、大体そう言う感じの人なんですよね(笑)
小松 ちょっと、ココがおかしい人ですよね(場内笑)
中村 フェアリーテールの方は、本当にしじみちゃんにやってもらってます
倖田 なんて贅沢な使い方ですか……
中村 そうですね……当時ピンク映画とかでヒロインをやってましたからね。切通理作さんに作品を観てもらった時、「なんて変態なんですか、サーモンさんは。しじみさんの顔を隠して、ビンタさせるなんて!」って言われました
倖田 何ですかね、あのプレイはね(笑)
小松 無駄遣いですね
倖田 サーモンさんって結構そう言うところがあって……『101回目のベッド・イン』でも、アクションの凄い三元(雅芸:『極道大戦争』(監督:三池崇史/2015年)『虎影』(監督:西村喜廣/2015年)出演)さんにアクションやらせないとか
中村 『フェアリーテール』の後に、『リアル・スティール』(監督:ショーン・レヴィ/2011年)とか『ロボジー』(監督:矢口史靖/2012年)とか『パシフィック・リム』(監督:ギレルモ・デル・トロ/2013年)とか出来たんで……密かに「パクられたんだな」って思ってますけどね(場内爆笑)。「絶対デル・トロ観てるだろ!」って

『女子!読み切り!コミックワールド!』(2014年/8分)
監督・脚本:破れタイツ(吐山ゆん・西本マキ) 出演:破れタイツ(吐山ゆん・西本マキ)、後藤直樹、kento fukaya

『すとーかー』(2015年/18分)
監督・脚本:破れタイツ(吐山ゆん・西本マキ) 出演:サーモン鮭山、破れタイツ(吐山ゆん・西本マキ)、松倉智子、ほか

中村 『女子!読み切り!コミックワールド!』は『101回目のベッド・イン』以前の作品で、おコメダーズは係わってないんですけど……【したまちコミック映画祭】グランプリ作品なんですよね。しかも、『帰ろうYO!』(監督:松本卓也/2014年)『彼女の告白ランキング』(監督:上田慎一郎/2014年)を抑えてのグランプリなんです
倖田 『すとーかー』の時、サーモンさん焦ってたよね
中村 そう、ギリギリになるまで連絡が来なくて……大丈夫かなって
小松 撮影始まってる頃に、突然(吐山)ゆんちゃんのFacebookで「こう言う出演者を探しております」って告知をしてたり(笑)
中村 それがね……見付かったんですよ!
小松 “引き”が強いんだね
倖田 その“ゆるさ”が良いんでしょうね(笑)。『101回目のベッド・イン』で破れタイツの二人が撮影してるシーンがあるじゃないですか、あれってあながちそんなに嘘でもないのかなって
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残念ながら舞台挨拶には来られなかった破れタイツの吐山ゆん・西本マキ両監督には、自身の作品の解説を寄せていただいた。

『女子!読み切り!コミックワールド!』
等身大の女子感をご堪能あれ!男性からすると、女の子の部屋を覗き見する感覚になるかと(笑)
『すとーかー』
隅から隅まで、味わい尽くしてください。まとまりのない小ネタは、破れタイツの真骨頂!

また、“おコメダーズ”の印象を聞いてみたところ、こんな感想が返ってきた。

吐山 やさしい!あったかい!家族!ってかんじです!
西本 そうですね。家族!て感じが強いかも。あったかい家族に招かれた、近所に引っ越してきた女子二人、な感じです(笑)

【おコメダーズの映画まつり2016 in 名古屋】は、定休日の火曜日を除く1月29日(金)まで開催されている。1月25日(月)からは19:30より日替わりで各プログラムが上映されるので、大寒波の宵をシアターカフェで過ごしては如何だろう。
おコメダーズ作品で、田代尚也作品で、破れタイツ作品で、温まれること間違いなしだ。

おコメダーズは、田代尚也監督……の知り合い“TA☆白猫”監督がメガホンを握る『フールジャパン 鉄ドンへの道』の1本『Don’t Do Drugs!』で、主演:津田 篤以下4人全員が出演すると言う。ゆうばり国際ファンタスティック映画祭でプレミア上映されるそうなので、今後の情報をお見逃し無く。
そして、破れタイツは、初長編監督作品を準備中だとか。こちらも続報に期待したい。

インディーズ映画が元気なおかげで、日本の映画界は今年の冬もアツいのだ!

取材 高橋アツシ

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