堺雅人、福士誠治、八千草薫『日輪の遺産』会見


2011年8月27日(土)より全国公開となる映画「日輪の遺産」完成報告記者会見が行われ、堺雅人、福士誠治、八千草薫、佐々部清監督、浅田次郎(原作者)が登壇した。(4月19日FS汐留)

堺雅人(以下:堺) 原作や脚本を読んだ時はもちろん、現場でも、完成した作品を観たときも、自分では上手く理解できないくらいの壮大な作品に参加させていただいたということを改めて実感致しました。完成した今でも、戦争という事件の大きさを咀嚼しきれない自分が居るんです。観終わった後には、何かを感じることのできる作品だと思います。
福士誠治(以下:福士) 時代をテーマとした壮大な物語で、とにかく緊張しっぱなしでした。いい意味で、その緊張感がスクリーンに映し出されていればいいなと思います。
八千草薫(以下:八千草) この作品で演じた久枝と私は終戦を迎えたのが同じ年代なので、昔のことをよく思い出しました。思い入れも強く、大きなスケールの、心に残る作品になりました。

Q. 真柴役を演じてみていかがでしたか?
堺 戦争だからとか、軍人だからという決めつけで演じたくないと思っていました。資料で調べても、生活者としての姿が最も見えにくい存在、それが軍人でした。だから、きちんと自分に理解できる部分から、一つ一つ演じていこうと心掛けていましたね。現場に入ってからは、佐々部監督がお作りになった世界感の中で、撮影の雰囲気や共演者の方々に真柴という男の人柄を引き出していただきました。
福士 小泉という人物や台詞の理解度を高めるのが大変でした。ただ、現場に入ってからは、その場その場の素直な気持ちを一番に演じました。会話と心を通わせることで、小泉が出来たと思っています。

Q. 撮影時のエピソードをお聞かせ下さい。
八千草 ラストのシーンは今思い出しても涙が出ます。当時のことを思い出して、気持ちが入り込み過ぎてしまって、テストの時に気持ちを出さないでと言われたのですが、困ってしまったことを思い出します。私は、学徒動員に参加して、断熱材の機械作りや軍服のボタン付けなど、授業のない一年を過ごしていますから、当時のことが思い出されてなりませんでした。
質問とは異なりますが、この作品に出てくる財宝が本当に実在したならば、被災地の人たちにとってどれだけの助けになるかを考えると、本当に心が痛みます。現在、テレビなどで目にする光景は、戦争時の焼け野原とつながっているような気も致します。

Q.浅田先生にとって、この「日輪の遺産」はどのような作品ですか?
浅田次郎(以下:浅田) 初めて出版社から「好きに書いていい」と言われて書いた作品なので愛着が強いです。戦争経験者ではない自分が戦争の物語を書くのは僭越ですが、知らないからこそ、きちんと伝えたいという気持ちで書いています。経験したことのない戦争を描くとき、筆が止まることがあります。この場面で、こんな考え方をするのか、字句の使用はこれで良いのかと、恐くなるんです。それは、戦争を経験された方に対することではなく、戦争でお亡くなりになった方に対する畏怖と敬意を意味するのです。こんなに立派な映画にしていただいてよかったです。

Q. 八千草さんにとって特別な作品と言うことでしたが?
八千草 これまでの出演作品の中にも、思い出深い作品はあります。役として演じられる作品と、今回のように、役以外の何かがあって‥‥。もう少し離れて演じられたら良かったのかも知れません。少女時代のことが思い出され、不思議な体験をしました。

Q. 最後にメッセージをお願いします。
佐々部監督 この作品が日の目を見るまでの長い間、信じて待っていただいていた浅田先生に感謝の気持ちでいっぱいです。

 伝えたいことは沢山ありますが、上手く言葉になりません。戦争という見通しの悪い時代に、自分たちの判断で、できることをやることで、人の価値が決まるような気がします。僕にとっては、”いま”というのは、これまでにないくらい・・・少なくとも、僕が生まれてからこれほどの状況になったことがないくらい、見通しが悪いですが、その中でもやれること、決断できることというのがあるはず。当たり前のことですが、いまの状態をしっかりと受け止めて、やれることをやることが必要だと思います。この作品を観て、こんな日本人もいたんだな、という参考にしていただけたらと思います。

浅田 母や母の友人たちから、勤労少女の話を聞いたことがきっかけでこの作品を書き始めました。そういう意味では、映画の中の少女は、私の母であり、母の友人でもあると思っています。私たちは、戦後と戦前で日本が変わってしまったと思いがちですが、決してそうではないんだということを忘れないでください。日本の歴史を連続性の中で捉えることが私たちの使命であり、この作品に登場する少女たちは、私たちの母であり、お婆さんなんだということをつかみとっていただければ幸せです。

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