ポン・ジュノ監督、永遠に寄生する映画になってくれたら『パラサイト 半地下の家族』記者会見
第92回アカデミー賞の最有力候補と名高い『パラサイト 半地下の家族』の記者会見が行われ、来日した主演のソン・ガンホ、ポン・ジュノ監督が登壇した。(2019年12月26日 ザ・ペニンシュラ東京)
貧乏な家庭に育った大学生が、裕福な家庭で家庭教師を任されることになる。その後、予想外の方向へとどんどん展開していくが――。ネタバレ禁止が重要となる本作は、第72回カンヌ国際映画祭にて最高賞であるパルムドールを受賞。既に多くの国で公開されているが、絶賛の声が後を絶たない。ポン監督は「ついに日本でみなさまと作品についてお話しできることになって嬉しく思います!」と公開が迫った喜びをあらわにした。
2人揃っての来日は13年振りだが「ソン・ガンホ先輩と初めて東京に来たのは2003年の東京国際映画祭での『殺人の追憶』、その次に来たのは2006年の『グエムル-漢江の怪物-』。今回13年振りにガンホ先輩と一緒に来ることができて、とても意義深い時間になったと思います」とポン監督は感想を述べた。
今回が4度目のタッグとなるが、ソンは「他の監督との作品もあるのですが、みなさんはどうもポン監督の作品がお好きなようで。ポン監督の作品でないとなかなか愛されないという現状があります。ついに来日できて、愛される準備もできました」と茶目っ気たっぷりにアピール。
ネタバレ厳禁が必須となっている本作に世界中が熱狂していることについて、ポン監督は「まったく予想していませんでしたし、私としては楽しいアクシデントとして受け止めています。日本でもそのような騒動になってくれたら嬉しいです。全キャストが見事なアンサンブルを見せていて、俳優の手柄だと思います」と語った。
しかしソンは「この物語は特定の国に限られたことではなく、私たちが生きている地球上の全てで人の物語で、それをポン監督が温かい視線で描いたので、多くの共感を得られたのではないかと思います。監督は「俳優の手柄」だと言ってくださいましたが、ポン監督の20年に渡る努力と野心が実を結んだと思います」とポン監督への敬意で返した。
大学生の息子が裕福な家に家庭教師に行くという設定から物語がはじまるが、構想についてポン監督は「僕も裕福な家の家庭教師をしたことがあり、他人の私生活を覗き見しました。そのアルバイトを紹介してくれたのは彼女で、現在の妻です。なんとなく映画と似たような設定で。1ヶ月でクビになったので、この映画の後半の展開のようには至りませんでしたが、シナリオを書いている時は当時の記憶が少しずつよみがえりました」と自身の経験がきっかけになったことを明かした。
約4年前にポン監督から構想を聞いたソンだが「貧しい家族と裕福な家族が出てくる話だと聞いたので、私は当然のことながら裕福な家族の役かなと思いました。年齢もそこそこですし、品位も高まりましたし、当然ながら社長の役だと思っていたんですが、まさか半地下に連れて行かれるとは想像していませんでした」と複雑だった心境を吐露すると、ポン監督は「ほんと、すいません」と日本語で謝罪し、笑いを誘った。
格差と貧困を描いているが、共感を呼んでいることについてソンは「貧しい人と裕福な人の葛藤を描くだけではない映画。ポン監督が語ろうとしているのは、私たちがどう生きるべきかだと思います」と作品に込められたメッセージを訴えた。
最後に映画を楽しみにしている方々へのメッセージとして「日本の観客のみなさんが、どのように感じてくださるのかドキドキしています。万感胸に迫る思いですが、深く楽しんで欲しいです。十分にそれができる作品」とソンは言い切り、ポン監督は「多くの国での公開を経て、ついに日本で公開となります。タイトルの通り、不滅の寄生虫のように、みなさまの体や頭、胸に長く留まり、永遠に寄生する映画になってくれたらいいな」と呼びかけ、締めくくった。
取材・撮影 南野こずえ
『パラサイト 半地下の家族』
2020年1月10日(金)より、全国ロードショー!
2019年12月27日(金)よりTOHOシネマズ日比谷、TOHOシネマズ梅田にて特別先行公開中!