松重豊が三谷幸喜に対抗心!『ヒキタさん! ご懐妊ですよ』公開記念舞台挨拶
名バイプレーヤー松重豊、映画初主演!『ヒキタさん! ご懐妊ですよ』の公開記念舞台挨拶が行われ、松重豊、北川景子、濱田岳、山中崇、伊東四朗、細川徹監督が登壇した。(2019年10月5日 新宿ピカデリー)
作家・ヒキタクニオ自身の体験を基にしたエッセイが映画化された本作の内容は、一回り以上年下の妻・サチ(北川景子)からの熱意で妊活をはじめたヒキタクニオ(松重豊)。まだまだ元気だと思っていたが、検査で老化を目の当たりにする。妊娠にまつわる数々の噂にコミカルに挑みながら、男の妊活と夫婦の絆を描いている。
妻のサチを演じた北川は「不妊治療がテーマではあるんですけど、ご結婚されていない方や不妊治療されていない方とか、色んな方に楽しんでいただける映画だから、色んな層の方に観ていただきたいなと思ったら、本当に男性も女性も、若い方もお子さんもいらっしゃって」と客席の幅広い層の支持を実感し、感無量のようす。
サチの父を演じた伊東は「みなさん、ご不満だったんじゃないですか?北川さんのお父さん役というのは。おじいちゃんじゃないの?というつぶやきが聞こえた気がします」と笑いを誘いながら挨拶。
使用済みの台本が悪用されないよう、クランクアップの日に台本は破り捨てるという松重だが、本作については思い入れが強いためまだ持っており「棺桶に入れてもらおうかな」と初主演の喜びを表現した。
また、濱田が演じたヒキタの担当編集者・杉浦は、不妊に悩むヒキタとは真逆で受精大臣と呼ばれており、「受精大臣という役名は参りましたね、品のないキャラクターというか」と複雑だった心境を吐露。しかし「この作品は悪人が出てこないので、唯一のヒールだと思って責任を持ってヒキタさんを追い込んでやろうと思いました」と開き直って演じたことを明かした。
頑固で厳しいが不器用な優しさのあるサチの父だが、演じた伊東はオファーを振り返り「すぐにOKでしたよ。実生活では娘がいませんので、とっても嬉しかった」と話し、娘を演じた北川も「普段はにこやかでずっと笑顔だった」と役とは正反対な伊東の人柄を讃えた。
何年も前から取材を重ねていた細川監督は「観ていただいたら観やすい映画だとわかってもらえるんですけど、不妊治療がテーマなので映画として成立させるのが難しく、時間がかかった」と苦労を洩らしながら「笑ったり泣いたりしてくれる作品が作れたことに感激です」と喜びを噛みしめた。
松重は本作の印象を「ヤクザものや刑事ものというジャンルで片づけられるものじゃないというのは題名からして分かるし、妊活もはじめての経験で」と戸惑いを抱えつつも「実際に産婦人科の待合室で妊婦さんと一緒に並ぶと、どんなに恥ずかしいか」とシーンを通して学ぶことが多かったようす。
オファーについて北川は「シビアで辛い物語というよりは、ハートフルで温かい絆を描いているところが面白いなと思って。不妊治療を伝えられる教材的な側面がありながらも、映画として笑えるエンタメ作品だなと思った。松重さんと夫婦って聞いたらみんな驚くだろうなと」とポジティブに引き受けたことを語った。
「ヒキタさんの子供に会いたい」という妻の一言ですべてが変わった本作だが、“忘れられない一言”についてトークが行われ、本作で年齢差を気にしていた松重は、クランクインの日に「そんなに年が離れていましたっけ?」と北川から言われたことで救われたとコメント。
19歳の時に撮影のクランクアップで森田芳光監督から「女優をやめないでくださいね」と言われた北川は「時間が経つにつれ、壁にぶつかった時に立ち返る言葉になった」と告白し、濱田は役柄のプレッシャーに悩んでいた時に西田敏行から「僕はあなたのファンなので伸び伸びしている姿を見せてください」と背中を押された感動的な言葉を打ち明けた。
学生時代に三谷幸喜と一緒に芝居をしていた松重は「今ほどあの男が、腹立たしい感じで目の上のたんこぶのように『記憶にございません!』があるんですけど、なんとか三谷幸喜をぶっ潰してやりたいなと(笑)」と対抗心を燃やし「入口はちょっと取っ付きにくいかもしれませんが、奥行きはすごくある。色んな観かたができる作品」と見どころを訴えた。
取材・撮影 南野こずえ
『ヒキタさん! ご懐妊ですよ』
配給:東急レクリエーション
©2019「ヒキタさん! ご懐妊ですよ」製作委員会
10月4日(金) 全国ロードショー