教訓と、元気と、支援と『サンマとカタール』鑑賞記
2016年5月15日、名演小劇場(名古屋市 東区)早々に満員札止が出た3階サロン1は、文字通り観客で膨れ上がっていた。
この日は、前日より封切となった『サンマとカタール』の舞台挨拶が開催されたのだ。
益田祐美子プロデューサー 本作品は、3月7日に東京・朝日ホール(千代田区 有楽町)で完成披露試写会を行いまして、その後5月7日からヒューマントラストシネマ有楽町(千代田区 有楽町)で公開しております。公開初日には、眞子内親王殿下にも御覧いただきまして、大変関心を抱かれました。
乾弘明監督 先月も熊本で大きな地震がありました。被災された方々は非常に御苦労な生活をなさっていると思うんですが、日本に住んでいる以上、必ず誰もが被災される可能性がある訳です。それ自体を避ける事は出来ないと思います。震災が起きて被災した時、僕らはどういう行動をすれば良いのかのちょっとした指針になるような作品になったかなと思います。あれだけの被害を受けた中で立ち上がっていく女川の人たちの姿を見ていただくと、前に向かって進んでいくことの重要さ、勇気を、自分が遭った時に思い出していただける記録が出来たんじゃないかと思います。色々中身については厳しいご批判もあると思いますが、終わった後何でも受け付けますので、言っていただければと思います。
益田 三田会長、今日のネクタイはカタール(国旗)の色ですね(場内笑)。
三田敏雄 日本・カタール友好協会会長 この映画にはカタールと言う名前が付いていますが、実は5年前の震災が起きた3月11日の1週間後くらいには、カタールから1億ドルの義援金を拠出すると言う一報が入って来ました。多くの国がまだまだ行動を起こすずっと前に、カタールはいち早く大変大きな金額を寄付すると言うことを言ってくれたんです。何故カタールがそうしてくれたのかと申しますと、実はカタールと日本は40年を越える友好関係を維持しているんです。カタールは以前、石油が少し採れるだけの本当に小さな漁村があった小さな国であったのです。天然ガス、液化して運ぶとLNG(液化天然ガス)になりますが、これが大量に発見されて、何とかカタールと言う国を富ませていきたいと、政府や国の多くの方々が考えたんです。しかしながら、中々その買い手を見付けることが出来ずにいたところ、30数年前にこの日本が当時600万トンと言う沢山の量を買い取ることを決めたのです。その結果、皆さんご存知のようにカタールと言う国は、大変素晴らしい立派な国になって、今や中東の中心を占めるような国に育っております。その時のカタールの苦労に対する日本の協力に、カタールは大変感謝をしていて、その想いがずっとずっと続いております。カタールから日本へLNGが入ってもう20年経ちますが、その15年目の時に震災が起きて、彼らは日本に何とか恩を返したい気持ちが1億ドルに繋がります。その一部を使って、女川に冷凍冷蔵設備を造りました。これが切っ掛けになって、女川は復旧の一歩を踏み出しました。今日皆様方映画を御覧になると感じることがいっぱいあると思いますけれども、彼らはそれを切っ掛けに素晴らしい復興の勢いを見せ、昨年の春には女川の駅が出来ましたけれども、今や全国から人が集まる素晴らしい街づくりを進めております。まだまだ被災した方もいらっしゃいますし、お亡くなりになった方、見付からない方もいらっしゃる。そう言う悲惨な中で、彼らは悲しみを心に仕舞って、強い力で復旧を目指しています。その力強さをこの映画を観て感ずることが出来るんじゃないかと思います。日本とカタールはこれからも確りとした友好関係を育てていくと思いますけれど、是非この映画を観ながら皆さんもその想いを感じていただければ、私にとってこれ以上の幸いはございません。
益田 監督、映画の見所は?
乾監督 お話にもありましたけれど、20億円が投入され、サンマの町なので秋の収穫に間に合わせる為に6ヶ月と言う工期で、大成建設さんと町の人が作り上げた“マスカー”……瓦礫の中にポンッと1つ冷蔵庫が出来ることによって、漁業が「よし、いけるんだ」と言う切っ掛けになったのが、カタールからの支援だったんです。今まさに、駅と駅前プロムナードがまだ出来たばっかりで、復興のスタートに立ったばかりのような感じです。まだスーパーも1軒しかありませんし、飲み屋も数軒しかありません。そんな中で第一歩を踏み出しただけなので、素晴らしい若者もいっぱいいる彼らは今後も成長していくと思うんですが、是非時間があったら東北の方へ足を向けることがありましたら寄っていただきたいと思います。美味しいお魚がいっぱいありますんで、それが町づくりへの大きな支えとなります。是非近くに行ったら女川に寄っていただければと思います。
益田 先日カタールの方にこの映画を御覧いただいて、感想を頂きました。先ず1つは、カタールからの寄付によって出来た“マスカー”で女川の人たちの笑顔を見る事が出来てとても嬉しかったそうです。この笑顔が、愛に溢れているとの感想を頂きました。2つ目は、映画の中に【ももいろクローバーZ】が出てるんですが、あれは何だ(場内笑)?3つ目が、マスカーによって周りに工場が出来てるんですけど、工場で作られた“リアスの詩(うた)”をカタールの皆さんにも多くの方に食べてほしい。それが復興の支援になるのじゃないかと言うこと伝えていただきました。企画から完成まで約3年掛かりました73分、是非ゆっくり御覧いただきたいと思います。
自分が震災の当事者となる――被災者になる時に備え、教訓を得る。
教訓を得る為の作品を観て、元気になる。
復興――“復たび興ちあがる”人々の為に、元気を支援する。
映画『サンマとカタール』は、東京、名古屋を皮切りに全国順次公開となる。
教訓と、元気と、支援とを、日本に届ける為に――。
取材 高橋アツシ
©2016 Japan-Qatar Partners
『サンマとカタール』公式サイト
http://onagawamovie.com/