稲垣吾郎、二階堂ふみは僕のミューズ『ばるぼら』公開記念舞台挨拶



日本を代表する漫画家・手塚治虫作品のなかでも、大人向けの過激な描写で実写化不可能と言われてきた『ばるぼら』の公開記念舞台挨拶が行われ、稲垣吾郎、二階堂ふみ、手塚眞監督が登壇した。(2020年11月21日 神楽座)

手塚治虫の息子である手塚眞監督がメガホンを握った本作は、稲垣吾郎演じる人気作家の美倉洋介が、謎の少女・ばるぼら(二階堂ふみ)に惹かれ、周囲の言葉にも耳をかたむけられないほどに溺れ落ちていく姿を描いており、独特な世界でヌードシーンも多いなか、主演のふたりは体当たりな演技で挑んでいる本作。

初共演について、二階堂のデビュー作から観てきたという稲垣は「なんだ、この女優さん。すごいなと。いつかご一緒させていただきたいなと思っていた」と念願叶っての共演だったようす。続けて「二階堂さんが本当にばるぼらとして存在していてくれたおかげで僕も演じることができた。美倉にとって才能がさらに開花したのは、ばるぼらがミューズだったから。僕が最後まで役をまっとうできたのは二階堂さんのおかげだと思うので、この作品において僕にとって二階堂さんはミューズですね。今でも」 と褒め讃えた。

二階堂も稲垣の印象を聞かれると「物心ついたときからスターで、トップで活躍されている方だった。稲垣さんの持っていらっしゃる聡明さや博学な部分が、美倉という役がとっても魅力的になるだろうなと感じていました」とコメント。さらには撮影現場でも稲垣から学ぶことが多く「貴重な経験をさせていただいて本当に感謝の気持ちでいっぱいです」と撮影当時を思い返しながら述べた。

撮影中の印象について手塚監督は「内容的に難しい場面もけっこうありますが、おふたりとも非常にプロフェッショナルで躊躇なくこなしていただいて。監督としては感謝しかありません。二階堂さんの存在自体がこの映画のミューズとして存在していた。ふたりがいなかったらこの映画はできあがっていなかったかもしれません」と稲垣と二階堂だからこそ完成に至ったと強調。

主人公の美倉と稲垣の共通点として、社会的知名度がある男性ということで「もし名前が知られていなかったらしたいこと」を問われると「これが(記事の)見出しになりそうですね」と期待を抱かせつつも、「海外で自分のことを誰も知らない街を歩くと開放的な気持ちになる」と経験を語り、「コロナの影響でマスクと帽子をしている人が多いので、そういう格好をしていても芸能人と思われず、不謹慎かもしれないけど今まで行けなかったお店に行けるようになった」と有名人ならではの気持ちを素直に吐露した。

演じた役について稲垣は「原作のイメージだとマッチョな男らしい印象が強かったけれど、今の時代にこの作品をやるのなら、男性的な強さをあまり出しすぎない方がいいと思った」と役作りを振り返り、美倉の顛末を「なんかいいですよね、愛に溺れていく感じというか。そこまで振り切ることってなかなかできないじゃないですか。周りが見えなくなって愛の逃避行をすることに少し憧れたりもする。実際の僕は冷静かもしれない。これからどうなるかわかりませんけど」と笑顔でリップサービス。

掴みどころのない不思議な少女・ばるぼらを演じるにあたって「実体のないキャラクターだと感じたので、自意識を持たず、いつも以上にあまり考えないようにした」と二階堂は話し、手塚監督は本作を手塚治虫が観たら「このふたりだったら父親も太鼓判を押す」と自信をのぞかせた。

手塚監督からサプライズでふたりをイメージした花束が贈られ、花好きの稲垣は嬉しそうに花を見つめながら「2年前に撮影して、世界は激変してしまいましたが無事に公開を迎えて嬉しく思っております。大きな答えが用意された娯楽作品ではありませんが、映画のテーマでもある愛や幻想、狂気の果てで見える景色、美しい芸術を堪能していただけると思います」と最後の挨拶で見どころを語った。

取材・撮影 南野こずえ


『ばるぼら』 R15+
(C)2019『ばるぼら』製作委員会
シネマート新宿、ユーロスペース他全国公開中

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